ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

ラグビーワールドカップで日本代表が初の決勝トーナメント進出を成し遂げましたね。しかも4戦全勝で堂々の1位通過です。本当におめでとうございます!世界ランキング2位(対戦時点。開幕時点では1位。)のアイルランド戦は逆転勝ちでしかも後半は完封という素晴らしい試合でしたし、前回大会で10対45と大敗していたスコットランド戦も快勝でした。札幌山の手高校出身のリーチマイケル主将の活躍も道産子としては嬉しい限りです。特にアイルランド戦はリーチ選手が途中出場してから流れが変わりましたね。次は前回大会で劇的な勝利を収めた南アフリカ戦です。開幕直前の強化試合では7対41で敗れていますが、ワールドカップに入ってから絶好調のジェイミージャパンなら4年前の再現も決して夢ではありません。頑張れブレイブ・ブロッサムズ!

それでは本題に入って参りましょう。まずは前回解説した配偶者居住権等の評価方法の算式を具体例で御説明していきたいと思います。下に前回のリンクを貼っておきますので、そちらも併せてご覧ください。

平成31年度【令和元年度】税制改正について(その13 民法(相続法)改正関連⑨(配偶者(長期)居住権パート2))

相続開始時の建物(木造、築10年4か月)の相続税評価額が1,500万円、土地(350㎡)の相続税評価額が2,500万円だとします。木造住宅の法定耐用年数は22年ですから、残存耐用年数は22年×1.5-10年(四捨五入)=23年になります。相続開始時の配偶者の年齢を75歳としますと、完全生命表による余命年数は15.64年ですから、配偶者居住権の存続年数(終身の場合)は四捨五入して16年になります。年利率3%で16年の複利現価率は0.623です。これらを前回の算式に当てはめて計算してみましょう。

(1)建物
  イ 配偶者居住権
$$1,500万円ー1,500万円×\frac{23年ー16年}{23年}×0.623=12,155,870円$$
  ロ 配偶者居住権が設定された建物(居住建物)の所有権
$$1,500万円ー12,155,870円=2,844,130円$$
(2)土地等
  イ 配偶者居住権に基づく敷地利用権
$$2,500万円ー2,500万円×0.623=9,425,000円$$ 
  ロ 居住建物の敷地の所有権
$$2,500万円ー9,425,000円=15,575,000円$$
そうすると配偶者が取得するのは配偶者居住権とその敷地利用権ですから、合計で12,155,870円+9,425,000円=21,580,870円になります。

一方、建物と敷地の所有権を配偶者以外の同一の相続人(例えば長男)が取得するとすると、合計で2,844,130円+15,575,000円=18,419,130円となります。そしてこの分だけ配偶者は預貯金等の遺産を相続する余裕が生まれるわけです(ここでは便宜上、建物土地の相続税評価額と実勢価格は同じものとします)。いかがでしょうか。具体例で実際に数字を入れてみると感覚が掴めてきたのではないでしょうか。

2.小規模宅地等の特例の適用について(相続税、特定居住用宅地等)
土地等については、小規模宅地等の特例の適用も考えられます。特定居住用宅地等の場合、適用限度面積330㎡まで課税価格が8割減となりますので、適用できると大きな節税になりますね。まず配偶者居住権に基づく敷地利用権については、配偶者の場合はほぼ無条件で小規模宅地等の特例の適用が受けられます。次に居住建物の敷地の所有権については、相続人(上の例だと長男)が被相続人と同居または同一生計であるなど一定の要件を満たせば適用が受けられます。

上記の例で配偶者・長男ともに小規模宅地等の特例の適用を受けられるとします。まず適用面積の計算からですが、土地等の面積は相続税評価額で按分しますので、具体的には下記のとおりとなります。

  イ 配偶者居住権に基づく敷地利用権(配偶者)
$$\LARGE350㎡×\frac{9,425,000円}{2,500万円}=131.95㎡$$ 
  ロ 居住建物の敷地の所有権(長男)
$$\LARGE350㎡×\frac{15,575,000円}{2,500万円}=218.05㎡$$
合計で330㎡まで適用できますが、この例では全部で350㎡と330㎡を超えてしまっているので、どのように適用面積を配分するかが問題となります。
配偶者については配偶者の税額軽減の適用により最終的に申告納税額が非常に少なくなります(零になることも珍しくありません)から、一般的には配偶者以外の相続人(上記の例だと長男)に優先適用した方が有利となります。そうすると、配偶者111.95㎡+長男218.05㎡=330㎡という形で適用することになりますから、課税価格は下記のとおりとなります。

  イ 配偶者居住権に基づく敷地利用権(配偶者)
$$9,425,000円ー9,425,000円×\frac{111.95㎡}{131.95㎡}×0.8=3,027,858円$$ 
  ロ 居住建物の敷地の所有権(長男)
$$15,575,000円ー15,575,000円×\frac{218.05㎡}{218.05㎡}×0.8=3,115,000円$$
長くなりましたので今回はここまでにいたします。まだまだ配偶者(長期)居住権の税務の話が続きます。次回もぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また再来週お目にかかります。