ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

今年もいよいよ大詰めとなってきましたね。当ブログも今年は今日が最後です。先週に引き続いて平成28年度税制改正大綱の中から、相続・不動産に関連するものを中心に速報・解説していきます。番号は前回の続きです。

3.農地保有に係る課税の強化・軽減
相続等で未耕作の農地をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。農地は固定資産税が宅地の数百分の1と非常に安いのでそのままにしているケースも多いかと思いますが、平成29年度からは農業振興地域に所在する農地で耕作可能であるにもかかわらず所有者に耕作する意思がなく、農業委員会が所有者に対して農地中間管理機構(以下「農地バンク」といいます。)と貸付け等に関する協議をするよう勧告しても所有者がそれに応じなかった場合は、これまでの45%減額の軽減措置を取りやめることになりました。これにより固定資産税は約1.8倍の負担増となります。

それでもまだまだ宅地に比べると安いのですが、これをきっかけに年々増加する耕作放棄地の増大に歯止めをかけ、農地の有効利用を促すことが今回の改正の目的です。

逆に10アール以上の未耕作の農地を全て農地バンクを通じて生産者に貸し出した場合は、賃貸期間10年以上の場合で最初の3年間、15年以上の場合で最初の5年間固定資産税(都市計画税が課されている場合は都市計画税も)を半分にするという優遇措置が2年の期間限定で新設されることとなりました。こちらの方は税制改正大綱には実施時期は明記されていないのですが、早ければ来年度(平成28年度)から実施される模様です。

耕作放棄地は20年前に比べて約2倍の40万ヘクタール超(富山県に匹敵する面積)に達し、せっかくの農地が荒れ地となって元の農地として有効活用ができなくなってしまったり周囲の耕作地にも悪影響を与えるなど、先週の空き家の問題と並んで大きな社会問題となってきています。今回の税制改正はいわゆる「アメとムチ」によってこのような問題を解決しようというものです。皆さんもこれを機会に所有している農地のあり方を見直してみては如何でしょうか。

4.直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置に係る法整備
以前このブログでもご紹介しました今年(平成27年)新設の直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度について、不妊治療に要する費用もこの制度の対象となるのですが、今までは薬局に支払った不妊治療費用も含まれるかどうかが必ずしも明確ではなかったため、今回支払先が薬局であっても適用を受けられることが明文化されることになりました。制度そのものの詳細については下記のリンクで過去の当ブログを参照してください。

<続・生前贈与は相続対策の王道ですPART2(直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度) 平成27年9月14日執筆分>
http://souzoku-sapporo.jp/%E7%A8%8E%E5%88%B6%E6%94%B9%E6%AD%A3/%E7%B6%9A%E3%83%BB%E7%94%9F%E5%89%8D%E8%B4%88%E4%B8%8E%E3%81%AF%E7%9B%B8%E7%B6%9A%E5%AF%BE%E7%AD%96%E3%81%AE%E7%8E%8B%E9%81%93%E3%81%A7%E3%81%99%EF%BD%90%EF%BD%81%EF%BD%92%EF%BD%942%EF%BC%88%E7%9B%B4/

5.住宅の三世代同居改修工事等に係る特例(新設)
最近では二世帯住宅も珍しくなくなりましたが、これは更に一歩先を行って三世代が同居する場合の税の特例ということになります。まさに時代を先取りした税制といえそうですが、超高齢社会の到来で三世代が同居することもだんだん現実のものになってきましたので、それを後押しする税制改正といえそうです。

具体的には平成28年4月1日以降に「一定の三世代同居改修工事」を(1)借入金または(2)自己資金で行った場合は、一定額を所得税額から控除します。現行の(1)住宅ローン控除または(2)住宅税額控除を拡充する形となりますが、「一定の三世代同居改修工事」とは①キッチン②風呂③トイレ④玄関のいずれか1つ以上を増設し、その結果①キッチン②風呂③トイレ④玄関のうちいずれか2つ以上が複数になる改修工事で、その(1)工事費用の金額(補助金等を受ける場合はその補助金等は控除した後の金額)または(2)標準的な工事費用の金額(補助金等を受ける場合はその補助金等は控除した後の金額)が50万円を超えるものをいいます。

他にも色々と細かい要件があるのですが、書くととても長くなってしまうため今度また機会を改めて住宅税制について連載しようと考えておりますので、その際にまた詳細をご紹介したいと思います。

前回、今回と2回にわたって平成28年度税制改正大綱の中から相続・不動産に関連する主なものを速報・解説してきましたが、概要としては以上になります。来年の通常国会でこの税制改正大綱を基に税制改正法案が審議され、3月末に成立する見込みです。そしてそれを受けて政令・省令の整備や国税庁の通達改正も行われることになり、より具体的な詳細が明らかになっていくと思いますので、また目新しい情報が出てきましたらこのブログで随時お伝えする予定です。

それでは今年1年当ブログをご覧いただき誠にありがとうございました。来年も相続を中心に良質な情報を皆さんに提供していく所存です。引き続きご愛読いただきますよう何卒よろしくお願いいたします。
それではまた年明けにお目にかかります。皆さん良いお年をお迎えください。