ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

久しぶりのブログ更新になります。今月からまた定期的に更新していきますので、何卒よろしくお願いいたします。今回はこれまで連載してきた「税務調査と附帯税」のまとめになります。相続対策を行うにあたって附帯税のような余分な税金を払わないためには、どのようなことに気をつけなければならないのでしょうか。言い換えると、税務調査で否認されないためにはどうすれば良いのでしょうか。

実は税務調査で否認されても、国税不服審判所(審査請求)や裁判所(税務訴訟)で争う道は残されています。ただそれには多大な時間と労力、そしてお金もかかります。それに加えて納税者が勝つ確率は一部勝訴(認容)を含めても10%前後しかありません。全面的に勝つ確率に至っては数%しかないのです。したがって、そもそも税務調査で指摘を受けない、もっと言えば税務調査自体を受けなくて済むような相続対策を立てるのが賢明です。そのような相続対策のコツについてこれから書いていきたいと思います。

相続対策というのは節税だけではありません。それ以外にもやるべきことが色々あります。一番大事なのはいわゆる「争族」防止、つまり遺産分割を巡る争いを未然に防ぐことです。ここができていないと、いくら立派な節税プランを立てたとしても全てが水の泡になります。

それに納税資金の準備も重要です。いくら節税をしたとしても納税資金に窮するようでは意味がありません。具体的には現金(生命保険金等を含む。)をいかに確保するかが大事になりますし、それが難しいようであれば延納や物納も視野に入れて相続対策を実行します。ただ今日は節税が主題ですので、ここからは節税に絞ってお話ししていきたいと思います。「争族」防止や納税資金の確保についてはまた改めて当ブログで書くつもりです。

相続対策・節税と言うと、どうしても派手な手法に目が行きがちです。特に2年前の相続税増税(基礎控除の引き下げ等)で納税者の数が約2倍になってからは相続対策の本も多数出回っていますし、ネットなどでも数多くの情報にアクセスすることができます。ただ相続専門の税理士から見ると玉石混淆というのが正直なところで、著者の方は実はあまり相続実務にお詳しくないのではないかというものも散見されます。そのまま鵜呑みにして実行すると後で大変な事態を招きかねない、リスクが大きい机上の空論的な手法も目につきます。当ブログで情報発信している理由として、そういった風潮に危惧を抱いているという側面もあります。

当ブログの読者の皆さんに是非お伝えしておきたいことは、そもそも相続対策・節税は何のために行うのか、その目的を絶対に見失わないでもらいたいということです。人によって多少の違いはあるかもしれませんが、子孫に財産を確実に残したい、そして子孫が争うことなく仲良く助け合って幸せな人生を過ごしてもらいたいというのが万人に共通する目的ではないかと思います。ただ、相続対策・節税について色々調べているうちに、そうした本来の目的から外れてしまう方も時々いらっしゃいます。

相続対策・節税ってよくわからないけど面白そうだな、一生に何度も経験することじゃないしなんだかワクワクしてきたな、といった感情が芽生えてきて、どうせやるなら誰もやっていないような相続対策・節税をやって周囲の人をあっと言わせてみたい、などという欲が出てきてしまうのです。そして一点豪華主義的で派手な相続対策・節税に走ることになります。人間は生来冒険好きなところがあります。気持ちはわからなくもないのですが、そうなると相続対策・節税の原点からはズレてしまいますし、本来の目的を達成するどころか逆に子孫に大きな禍根を残すことにもなりかねません。

一点豪華主義的な相続対策・節税の問題点を具体的に考えてみます。一番目に挙げられるのが、税務調査での否認リスクが非常に高いということです。長年にわたって税務調査や税務訴訟・審査請求などの風雪に耐えてきた手法と違って実績が殆どありませんので、税務調査でどのような指摘を受けるかはそれを推奨している税理士やコンサルタントでも正直わからないと思います。それは暗闇の未知の世界に闇雲に突っ込むということです。

それでも節税(見込)額が小さければ税務調査で否認されたとしてもそれほどのダメージにはなりません。しかし、相続対策・節税で一点豪華主義的な手法を取るとなると、節税(見込)額は少なくとも数百万円、数千万円から億になることも十分あり得ます。これを否認された時のダメージはご説明するまでもないでしょう。しかもこれまでこの連載でお話ししてきましたように、多額の附帯税も併せて課せられてしまいます。

そして審査請求や税務訴訟で争っても勝つ見込みは前述のように殆どありません。実際に相続対策・節税を巡る税務訴訟でも納税者が敗訴した例は数多くありますし、なかには数億円もの損失を被ったという実例もあります。かえって相続対策・節税などしない方が良かったということも多いのです。そしてそのツケは子孫の方が払うことになります。これでは本来の目的とは真逆になってしまいます。それほど大きなリスクを冒す必要はどこにもありません。

少し長くなりましたので、続きは次回にいたします。次回は「税務調査と附帯税」の最終回になります。一点豪華主義的な相続対策・節税の問題点を引き続き解説するとともに、それではどのような相続対策・節税プランを立てたら良いのかをそのメリットと併せてご説明する予定です。書面添付制度という非常に有益な制度があるのですが、それについても詳しくご紹介したいと思っています。次回もまた是非ご覧ください。それから当ブログの更新頻度は当面隔週を予定していますので、併せてよろしくお願いいたします。

それでは今週はこの辺で。
また再来週お目にかかります。