ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

暑い日が続いていますが皆さん如何お過ごしでしょうか。7月はブログをお休みさせていただきましたので、久しぶりの記事になります。今週も時間的にややタイトですので、相続対策における生命保険の活用方法の連載は次回掲載します。そちらの方もぜひご覧ください。今回は少し前になりますが、7月1日に国税庁から発表された平成28年分路線価等について書きたいと思います。

ご存知の方も多いかと思いますが、路線価というのは相続税や贈与税を算出する場合において土地等の財産評価をする際に使うものです。具体的には、財産評価の対象となる土地等に面している道路に価額が付けられていて、その道路の価額が高ければ高いほどその道路に面している土地等の評価額も高くなるという仕組みになっています。

なお、路線価は毎年3月に国土交通省から公表される公示価格(≒取引相場)の8割を目安に設定されています。なぜ8割を目安にしているかというと、もし地価が下落して土地等の評価額が取引相場を上回るとその分過大な相続税・贈与税が課せられることになってしまいますから、財産評価の安全性という観点からそのようなことが起こらないように一定の余裕を持たせているからです。

それでは今年の路線価はどうなっているのでしょうか。全国レベルでみると、今年は8年ぶりにプラスに転じ0.2%の上昇となりました。北海道も同様に8年ぶりにプラスとなり、0.8%の上昇と全国平均を上回りました。これは外国人観光客の増加に伴うホテル等の建設ラッシュや金利低下に伴う不動産投資の活性化などが地価を押し上げたものと考えられます。

北海道の各地域別にみますと、北海道を管轄する札幌国税局管内の税務署は全部で30ありますが、そのうち最高路線価が上昇したのは8つあります。内訳は札幌の5税務署(札幌中、札幌北、札幌西、札幌東、札幌南)と旭川中、富良野、倶知安になります。外国人観光客に人気のあるところが多いですね。また、札幌に関してはオフィスやマンションの需要が好調であることも反映されているものと考えられます。

札幌は3つの税務署で最高路線価が10%超の伸び率、倶知安の最高路線価に至ってはなんと50%の伸び率で、これは全国一になります。凄いですね。私が現在手掛けている相続案件も札幌については路線価が上昇し、相続税額も増加しそうです。土地を売るという観点では地価の上昇は歓迎すべき現象ですが、相続税を支払うという観点では頭の痛い問題で、痛しかゆしといったところです。今年の路線価については以上になります。

ところで、土地等の評価において路線価を使わない場合もあります。路線価を使って評価するのは路線価地域に所在する土地等だけです。路線価は主に都市部や住宅街等に設定されていて、地方や農村地帯等は路線価がないところも多いです。路線価がないところは原則として固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価額を算出します。したがってこうした地域のことを倍率地域といいます。そして倍率表も7月1日に路線価と同時に発表されています。したがって倍率地域に所在する土地等の評価については、倍率表に記載されている倍率がどうなっているのかが非常に大事になります。

倍率表については路線価と違ってあまり詳しい資料はないのですが、私が見る限りでは倍率は横ばいもしくは下がっているところが多いように感じます。私が現在手掛けている相続案件もそのような傾向になっていて、地方の土地等については評価額は概ね横ばいか下がりそうです。これは路線価とは逆に相続税を支払うといった観点では嬉しいのですが、その後の土地等の活用を考えると手放しで喜んでばかりもいられずなかなか悩ましいところです。上がったら上がったで下がったら下がったで色々な問題があり、何かと難しいですね。

蛇足になりますが、固定資産税でも路線価というものが設定されています。相続税等の財産評価上で倍率地域になっている土地等でも、固定資産税上は路線価が付されています。相続税等の路線価と固定資産税の路線価は似て非なるものですので注意してください。相続税等の路線価はあくまでも相続税等の算出に使うもの、固定資産税の路線価は固定資産税の算出に使うものと目的が違っているからです。

ちなみに宅地の場合固定資産税評価額は公示価格の7割が一つの目安となっており、8割を目安にする相続税等評価額に比べると一般的に低くなっています。したがって倍率地域に所在する宅地については倍率表における倍率が1.1倍になっているものが目立ちますが、これは固定資産税評価額を1.1倍すると概ね相続税等評価額になるからだと考えられます。

路線価や倍率表については当ホームページのトップページの右下にリンクを貼ってありますので、詳細はそちらをぜひご覧ください。平成28年分だけでなく、過年度分(現時点では平成22年分以降)も見ることができます。また、路線価や倍率表以外にも財産評価に必要な指標が掲載されています。これらを総称して財産評価基準書といいますが、そのうち主だったものをいくつかご紹介しておきましょう。

まず市街地農地等や農業用施設用地等の評価に使う宅地造成費ですが、北海道の宅地造成費は今年も上がりました。ここ数年は人件費や原材料費等の値上げを反映して毎年上がっているという状況ですね。市街地農地等の評価においては原則として宅地造成費は控除することができるので宅地造成費が上がった方が土地等の評価額は下がるのですが、農業用施設用地等の評価においては宅地造成費は原則として加算することになるので宅地造成費が上がると土地等の評価額も上がってしまいます。相続財産を構成する土地等の内容によって明暗が分かれますね。

貸家や貸家建付地(貸家が建っている土地)等の評価に使う借家権割合は今年も30%です。また、家屋の評価で固定資産税評価額に乗ずる倍率も変わらず1.0倍のままです。つまり家屋については、自分で使っている場合や親族などに無償で貸している場合(「使用貸借」といいます。)は原則として固定資産税評価額がそのまま相続税等評価額になります。借家権割合や家屋の倍率は全国一律です(かつては大阪国税局管内の借家権割合が40%の時代がありました)。

電話加入権は今年も1,500円です。全部の都道府県を確認したわけではありませんが、おそらく今年は全国一律だと思います(以前は都道府県によって多少違いました)。それでは少し長くなりましたが今回は以上になります。最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは今週はこの辺で。また来週お目にかかります。