ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

いよいよ今年もあとわずかになってきましたね。年末の風物詩の一つである税制改正大綱もついに決定しました。当初は10日に決定の予定でしたが、消費税の軽減税率の関係で16日にずれ込みました。そのようなわけでこのブログでの速報も一週間遅れになりましたが、どうかご了承ください。今日は平成28年度税制改正大綱の中から、相続・不動産に関連するものを中心に速報・解説していきたいと思います。

1.相続した空き家に係る譲渡所得の特別控除(新設)
相続関連では今回の目玉の一つではないかと思います。最近は放置されたままで安全上問題のある空き家の増加が社会問題になっていますが、その大きな要因の一つが親などが住んでいた家屋を相続し、そのままにしているケースです。

これまでは活用のあてもなく、かといって処分しようと思っても譲渡所得税の負担が重すぎて売るに売れない状況でやむなくそのままにしているケースが多かったと思いますが、平成28年4月1日からは相続開始後3年経過の年末までに売却等した場合は譲渡益から3,000万円の特別控除を受けられるようになります。

これは現在居住用財産を譲渡した場合は3,000万円の特別控除を受けられる制度(租税特別措置法第35条)がありますが、親などが亡くなる直前まで住んでいて、その後相続で空き家になった場合でも一定期間内に売却等すれば居住用財産と同等であるものとみなすというものです。これで譲渡所得の負担はかなり軽くなり、多くのケースでは譲渡所得税を負担することなく空き家を処分できるようになるかと思います。

ただし、相続後貸付け等をして空き家でない期間があった場合は適用を受けることができませんので注意が必要です。また、家屋は耐震基準を満たしているものでなければなりません。もし耐震基準を満たしていないのであれば取り壊して敷地だけ譲渡すれば、その場合でもこの制度の適用を受けることは可能です。この場合も敷地は未利用のままであることが必要です。

なお、相続した家が豪邸で一等地にあるなどの理由で譲渡価額が1億円を超える場合は3,000万円控除を受けることはできません。さすがにそれだけ高く売れるのであれば譲渡所得税くらい払えるでしょという趣旨だと考えられます。ちなみに現行の居住用財産の3,000万円の特別控除(租税特別措置法第35条)にはこのような制約はありませんが、居住用財産の買換(交換)特例制度(租税特別措置法第36条の2、第36条の5)というものに同様の制約があり、それに倣ったものと思われます。

また、現在相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(租税特別措置法第39条)という制度により納めた相続税額に応じて譲渡所得税が軽減される制度がありますが、それとは選択適用となります。したがって両方を併用することはできませんので、計算してどちらか有利になる方を選択することになります。おそらく新しい制度を選択した方が有利になるケースが大半ではないかと思います。

2.法人税率の引き下げ(相続・贈与等に係る非上場株式等の評価に影響する可能性あり)
法人税率の引き下げと聞いて相続との関連を連想する方は少ないかと思います。これは以前のブログにも書きましたので詳細は下記のリンクを参照して頂ければと思いますが、法人税率が引き下げられるとそれに連動して非上場株式等の評価額において引くことができる法人税等に係る税率も下がる可能性があります(つまり、非上場株式等の評価額はその分高くなります)。

法人税等の実効税率は平成28年4月1日から29.97%(現行32.11%)と2%強下がりますので、非上場株式等の法人税等に係る税率も現在の38%から2%程度下がることが予想されます。4月以降に財産評価基本通達の改正という形で国税庁から改めて発表されると思いますので、その際はまたこのブログでお知らせいたします。

法人税が下がるのは企業経営的には朗報ですが、自社株の相続・生前贈与等のことを考えると手放しで喜ぶわけにもいきません。今まで以上に自社株対策をしっかり打つ必要が出てきます。

<昨日、平成27年度税制改正関連法案が成立しました(平成27年4月1日執筆分)>
http://souzoku-sapporo.jp/%E7%9B%B8%E7%B6%9A%E7%A8%8E/%E6%98%A8%E6%97%A5%E3%80%81%E5%B9%B3%E6%88%90%EF%BC%92%EF%BC%97%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%A8%8E%E5%88%B6%E6%94%B9%E6%AD%A3%E9%96%A2%E9%80%A3%E6%B3%95%E6%A1%88%E3%81%8C%E6%88%90%E7%AB%8B%E3%81%97%E3%81%BE
<4月1日付ブログの続報です(自社株の評価について 平成27年5月7日執筆分)>
/http://souzoku-sapporo.jp/%E7%9B%B8%E7%B6%9A%E7%A8%8E/4%E6%9C%88%EF%BC%91%E6%97%A5%E4%BB%98%E3%83%96%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%81%AE%E7%B6%9A%E5%A0%B1%E3%81%A7%E3%81%99%EF%BC%88%E8%87%AA%E7%A4%BE%E6%A0%AA%E3%81%AE%E8%A9%95%E4%BE%A1%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84/

長くなりましたので今週はここまでといたします。来週も引き続き来年度の税制改正大綱について速報・解説していきますのでまたぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また来週お目にかかります。