ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

今日は前回予告した通り、7月1日に発表された平成27年分の路線価について書いていきたいと思います。
なお、同じく7月1日から施行された国外転出時課税制度については、路線価の記事が長くなりそうなので、次回に回したいと思います。申し訳ありません。

まず最初にそもそも路線価とは何なのかについてご説明したいと思います。
路線価とは、相続税や贈与税の計算をする上で、相続財産や贈与財産である土地または土地の上に存する権利(借地権など)を評価するためのものです。

もう少し具体的に言うと、道路に路線価という価額をつけて、その道路に面している土地はその価額を基に評価するということです。
例えば、300㎡の土地(自用地)があるとして、その土地が面している道路の路線価が500千円だとすると、その土地の評価額は500千円×300㎡=150,000千円、つまり1億5千万円ということになります。

もちろん土地の評価はこんなに単純に決まるものではありません。
複数の道路に面していることもありますし、間口が狭かったり奥行きが長いものもあります。
土地の形状も整形地とは限らず不整形地であったり、あるいはそもそも道路に面していない無道路地もあります。
また、自用地ばかりではなく、その土地を人に貸していたり(貸宅地)、その土地の上にアパート等を建てて、賃貸していることもあります(貸家建付地)。

したがって、こういった様々な要素を総合勘案して最終的には土地の評価額が決まりますので、土地の評価は複雑でとても専門的なものです。
しかしどういった場合でもその土地が路線価地域に存在するものであれば、まずは路線価が基準になるということに変わりはありません。

今、路線価地域に存在するものであればと申し上げましたが、実は土地にはもう一つ倍率地域に存在するものもあります。
倍率地域においては路線価というものはありません。
倍率地域に存在する土地は基本的に固定資産税評価額に所定の倍率を乗じて評価します(もちろんこれにも様々な例外はあります)。
ものすごくざっくりした言い方になってしまいますが、都市部の商業地域や住宅地域などは路線価地域、地方や郊外の田園地域などは倍率地域になるとここではお考えください。

相続税が課税されるほどの土地であれば地価が高い路線価地域に存在するものも多いかと思います。
そして、土地が相続財産のかなりの部分を占めるという方は多いでしょう。
したがって、路線価がいくらになるかは相続税を考える上では非常に重要な要素になるのです。

そして路線価は公示価格を参考にその約8割を目安に設定されます。
これは以前もブログに書いたことがありますが、公示価格は取引価額の目安になります。
そして、取引価額の目安である公示価格が上がれば路線価も連動して上がるということになります。

路線価が上がるというのは、取引相場も上がっているということですから、もしその土地を売るのであれば、より高い金額で売れるということになりますので基本的には良いことなのですが、先祖伝来の土地なので売る気がない場合や、あるいは人に貸しているなどの事情ですぐに売れるような状況ではない場合で、将来的には相続することになるのであれば、相続税が増えるということになりますから、必ずしも喜ばしいことばかりではありません。

前置きが長くなりましたが、それでは今年の路線価はどうなったのでしょうか。
まず全国ベースで見ますと、平均で前年に比べ0.4%下がりました。
リーマンショック以降は7年連続の下落が続いていますが、下落幅は最少となり、下げ止まりの傾向が見られます。

特に大都市圏などでは大幅に上昇しているところもあり、東京(銀座中央通り)、大阪(御堂筋)、名古屋(名駅通り)、広島(相生通り)は二桁(10%以上)の上昇率となっています。
また、岡山(市役所筋)が9.6%、新幹線効果に沸く金沢(金沢駅東広場通り)も9.3%と、二桁近い上昇率となっています。
それ以外にもさいたま、横浜、京都、福岡の最高路線価が5%以上の上昇率となっていて、三大都市圏だけではなく、地方の中心都市でも路線価の大幅な上昇が見られます。

次に北海道について見ていきたいと思います。
北海道全体では1.1%の下落となり、下落幅は前年より拡大するなど、全国とはやや違う動きも見られます。

ただ、都市部、というよりも札幌と言ってしまった方が良いかと思いますが、大きく上昇しているところもあり、道内最高路線価がついている札幌駅南口ステラプレイス前(北5西3)は4.9%の上昇、札幌駅北口(北7西4)は6.8%の上昇、石山通り(南1西11)で3.5%の上昇となっています。

札幌以外では旭川の昭和通り(神楽)で2.2%上昇し、リゾートブームに沸く倶知安(ニセコ比羅夫)に至ってはなんと28.0%!の上昇率となっています。
それ以外にも旭川(平和通り)、函館、小樽、滝川、富良野、留萌、名寄、浦河、釧路、根室、網走、紋別が現状維持と、下げ止まりの傾向も見られます。
一方大幅に下落したところでは、苫小牧が駅ビル「エガオ」閉鎖の影響により7.4%も下げたのが目立ちます。それ以外は江差、八雲、余市、室蘭、岩見沢、深川、帯広、池田、北見といった所が下がっています。

相続税のことを考えると、路線価が上昇もしくは横ばいの地域に土地を所有されている方は、特に相続対策に力を入れる必要があるかと思います。
都市部と地方で二極化の傾向もありますので、都市部に土地をお持ちの方は今後の地価の動きにも十分な注意が必要です。

一方地方の路線価が下落している地域に土地を所有されている方は、相続税に関して言えば都市部ほど深刻な状況ではありませんが、もしその土地を相続前であれ相続後であれいずれは売ろうとお考えなのであれば、今の状況が続くのは必ずしも好ましいことではありません。
早めにそれなりの値段で売れる時に売却する決断が必要になるかもしれませんので、やはり地価の動向にはこれからも十分な注意を払って下さい。
9月の半ば過ぎには都道府県の地価調査の結果が発表されますので、それも参考にされると良いでしょう。

今年の路線価の傾向と相続対策等との関連については以上になります。
次回は今回書けなかった国外転出時課税制度について書きたいと思います。
今日は土地についてでしたが、株や国債・投資信託などの有価証券をお持ちの方も多いかと思います。
多額の有価証券をお持ちの方には関係する可能性がある内容ですので、ぜひ次回もご覧になってください。

今週も最後までお読みいただき本当にどうもありがとうございました。
また次回にお目にかかります。