ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

今週は先週から引き続いて相続対策における生命保険の活用方法についてです。今回は「保険料贈与プラン」というものをご紹介いたします。これも相続対策においては絶大な威力を発揮する方法です。それでは早速具体的な内容を見ていきましょう。

「保険料贈与プラン」でも被保険者は被相続人です。これは前回と一緒ですね。保険金の受取人が相続人であることも前回と違いはありません。ところが「保険料贈与プラン」では、契約者(保険料負担者)は被相続人ではなく相続人になります。ここが「保険料贈与プラン」の特徴です。それでは被保険者(被相続人)が亡くなったときに課せられる税金は何でしょうか?

被保険者が死亡して保険事故となり、それによって保険金が支払われるわけですから相続税のような感じがしますよね。しかしそうではないんです。実はここで課せられるのは所得税になります。具体的には一時所得という所得になります。でもどうしてそうなるのでしょうか?

生命保険金において課せられる税目というのは、保険料負担者と保険金受取人の関係で決まるからです。前回は保険料負担者が被相続人で保険金受取人が相続人でした。民法上は生命保険金は受取人である相続人固有の財産ですが、実質的には相続と同じ効果を持つことから相続税法上ではみなし相続財産として相続税が課せられるということは前回ご説明した通りです。

それに対して「保険料贈与プラン」では保険料負担者も保険金受取人も相続人であり、同一人物ということになります。このように自分で保険料を支払って自分で保険金を受け取っている場合は、みなし相続財産とは明らかに異なりますので相続税ではなく所得税が課せられるのです。誰が亡くなったかはここでは関係ありません。

ではなぜ「保険料贈与プラン」と言うのでしょうか。それは保険料の原資が被相続人から相続人に対して贈与された金銭になるからです。つまりこういうことです。

① 被相続人から相続人に対して金銭を贈与する(贈与税が発生する可能性あり)。
② 相続人は自分名義で被保険者が被相続人、保険金受取人が相続人(自分)である生命保険に加入し、贈与を受けた金銭で保険料を支払う。
③ 被相続人が亡くなって保険事故となった場合は、相続人に保険金が支払われ、相続人は確定申告で所得税の申告納税を行う。

「保険料贈与プラン」の枠組みについてはご理解頂けたかと思いますが、ではなぜこんな面倒なことをするのでしょうか。それは所得税(+贈与税)の方が相続税よりも少なくなり、その分節税となるからです。というよりは、そうなるようにプランを組むわけです。

所得税の一時所得の計算方法は下記のようになります。
(受取保険金-支払保険料の累計額-特別控除50万円)×1/2

例えば受取保険金が3,000万円、支払保険料の累計額が2,500万円だとすると、一時所得は(3,000万円-2,500万円-50万円)×1/2=225万円となります(他に一時所得がない場合)。これに所得税率を掛けて所得税額を出すことになりますが、仮に所得税率が20%だとすれば、225万円×20%=45万円が所得税額になりますね。

同じケースで前回のような生命保険の加入の仕方だと相続税額はどうなるでしょうか。この場合は前回お話ししたように非課税枠がありますので、仮に相続人が3人、相続税率を20%だとすると(3,000万円-500万円×3)×20%=300万円が相続税額となります。

いかがでしょうか。「保険料贈与プラン」の方が255万円もの節税になっていますよね。ただし「保険料贈与プラン」では毎年110万円(基礎控除額)を超える金銭贈与をした場合は贈与税も課せられますので、節税額はもっと少なくなります。逆に言うと、贈与税がかからないようなプランを考えば良いわけです。

ではなぜこんなに税額が違ってくるのでしょうか。その理由は一時所得の計算方法にあります。上の一時所得の式をもう一度見てください。受取保険金から支払保険料の累計額を差し引いていますね。それに対して相続税額の計算では支払保険料は一切引くことができません。さらに一時所得は最後に2分の1にします。これも大きいですよね。というわけで、「保険料贈与プラン」の方が大幅に税額が少なくなるのです。

もちろん相続人の数が多くなれば非課税枠が大きくなりますので、一般的な生命保険の加入方法の方が税額が少なくなる場合もあります。また、「保険料贈与プラン」で保険料が大きくなると贈与税額も多くなりますので、「保険料贈与プラン」が不利になることもあり得ます。したがってそれぞれのケースに応じて最適な方法を選択する必要があるわけです。

「保険料贈与プラン」についてはまだまだ書きたいことがあるのですが、かなりボリュームが多くなりますので後日応用編でもっと詳しいことを書くつもりです。応用編の方もご期待ください。次回はまた別のパターンをご紹介いたしますので、そちらもぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。また来週お目にかかります。