ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

早いもので今日で8月も終わりですね。先週台風はもう勘弁して欲しいと書いたのですが、今週もまた台風が来てしまいました。気象庁の発表によるとこれで8月に日本列島に上陸した台風は4つ目、接近した台風も含めると6つ目ということです。昨夜未明まで猛威を振るった台風10号も異例ずくめの記録的な台風となりました。まず台風が発生したのが8月19日の午後9時で、温帯低気圧に変わったのが8月31日の午前0時でしたから、約11日間余りの長寿台風となり、これは日本列島に接近・上陸した台風としては観測史上最長記録だそうです。

そして台風は昨日岩手県大船渡市に上陸しましたが、東北地方太平洋側に台風が上陸したのも観測史上初ということです。岩手県では浸水した高齢者施設(グループホーム)で入所者9人の方がお亡くなりになるなど、今回の台風も大きな爪痕を残しました。お亡くなりになった皆様方のご冥福を心よりお祈りいたします。ご遺族や関係者の皆様方には心よりお悔やみ申し上げます。

それでは本題に入って参ります。最近は相続関連で色々と大きな動きがありますので、今週から随時ご紹介していきたいと思います。今回は来年の5月頃に開始される予定の「法定相続情報証明制度」についてです。少し長い名称ですが、この新制度について具体的な内容を見ていきましょう。

この制度は相続に伴う不動産(土地建物)や金融商品(預貯金等)の名義変更等の手続きに関するものです。不動産の場合は相続登記ということになりますね。現状では相続登記等を行うためには、被相続人の戸籍謄本等を揃えて提出する必要があります。その際、原則として被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本等を取得しなければなりませんが、これがなかなか大変です。戸籍は養子縁組や結婚、本籍地の変更など異動があれば変わるからです。

具体的には死亡時の戸籍謄本等から遡って取得していくことになるのですが、市町村が異なればそれぞれの市町村に請求しなければなりません。遠方だと郵送の手間と時間もかかります。市町村合併で戸籍謄本等に記載されている市町村名が変わっている場合もありますし、昔の手書きの戸籍謄本等だと達筆すぎて読むのに一苦労ということも珍しくありません。戦前と戦後では戸籍制度が変わっていることも戸籍謄本等の取得の難易度を上げている要因の一つです。

このように苦労して戸籍謄本等を揃えていくわけですが、不動産や預金口座等が多数ある場合は原則として管轄法務局や金融機関等ごとに戸籍謄本等が必要になりますので、何セットも取得しなければならず費用もバカになりません。最初から必要部数がわかっていれば良いのですが、足りなくなったりすると追加で請求しなければならず、二度手間三度手間ということにもなってしまいます。希望すれば法務局や金融機関等での確認後原本は返してくれますが、内容の確認には時間がかかることもあるため、不動産や預金口座等が多数ある場合は原本の使い回しをしようと思うと手続完了までにそれなりの時間を費やす覚悟が必要です。

ここまで見てきましたように、現状では相続関連の手続きは非常に大変で、相続人の負担がとても重くなっています。不動産に関しては相続登記がなされていないケースも多く、いつの間にか真の所有者が不明になってしまう空き地や空き家も増加しているのですが、これはこうした手続きの煩雑さも原因になっていると考えられます。そこで相続人の手続きの負担を軽減することを狙いとして、「法定相続情報証明制度」が新設されることとなったわけです。

この制度では、戸籍謄本等の原本を1セット揃えて相続関係説明図等と一緒に法務局に提出すると、「法定相続情報」の証明書を発行してくれます。その証明書が戸籍謄本等の代わりになるわけです。したがって、戸籍謄本等を何セットも取得する必要がなくなります。ただし、現時点では証明書を戸籍謄本等の代わりとして認めるかどうかは各金融機関等の裁量に委ねられるようですので、引き続き戸籍謄本等が必要になるケースもあり得ます。

また、相続税の申告にも被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本等が必要ですが、この証明書で代用できるかどうかは現時点では不明です。制度の詳細については現在詰めているところだと思われますので、また新たな情報が出てきましたら、当ブログでお伝えしたいと思っています。「法定相続情報証明制度」については以上です。今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは今週はこの辺で。また来週お目にかかります。