ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

最近は来年のリオデジャネイロ・オリンピックを控えて色々なスポーツの世界大会が行われていますね。
世界陸上、世界柔道、そしてバレーボールのワールドカップと先週はスポーツ好きの人には忙しい1週間だったと思います(笑)。

そんな中でも私はやはり2001年に生で見たことのある世界陸上に注目していましたが、ウサイン・ボルトはやっぱり凄かったですね。シーズン前は脚の故障の影響で不調が伝えられていましたが、いざ本番となると結局前回に引き続き三冠に輝きました。これで北京オリンピックからオリンピックと世界陸上では世界陸上大邱大会の100mでフライング失格になったのを除けば負けなしということになりました。来年のリオで引退すると公言していますが、不敗神話は最後まで続くんでしょうか。来年のオリンピックも楽しみです。

個人的にはジャスティン・ガトリンを今回は応援していました。ドーピングで4年間の出場停止となり普通であればそのまま引退なんだと思いますが、再びトップレベルに戻ってきたのはこれまた凄いことだと思います。ボルトには負けてしまいましたが、レース後のさわやかな笑顔がとても印象的で、走れることの喜びが伝わってきました。見ていてとても楽しい世界陸上でしたが、日本選手がもう少し活躍してくれるともっと盛り上がるんですけどね。来年のオリンピックに期待しています。

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それでは本題に入ってまいりましょう。
今日は7月1日から施行されている国外転出時課税制度の第3弾、いよいよ完結編です。今回は相続・遺贈編です。

軽くおさらいをしておきますと、①合計1億円以上の対象資産(上場株式、非上場株式、投資信託、国債、地方債、社債等)を所有している②過去10年以内において国内に5年を超えて住所又は居所を有している、という2つの要件を満たしている人がこの制度の対象者でした。そして今回はその対象者本人が死亡して、相続が発生した場合の話です。

最近は仕事や結婚などで海外に在住している相続人等も多いのですが、そうした非居住者である相続人等が対象者の対象財産の全部又は一部を相続または遺贈で取得した場合、その対象者に対してその相続対象資産の含み益に係る譲渡所得税が課せられることになります。ただ今回は対象者本人(被相続人)は亡くなっていますので、相続人等が代わりに被相続人の譲渡所得税の申告を行うことになります(準確定申告といいます。)

ここで前回同様、疑問を持たれた方もいらっしゃるかと思います。あれっ、この場合相続税はどうなるんだろう?海外に住んでいる人には日本の所得税はかからないのだから、日本の相続税もかからないのでは??

前回贈与税についてお話ししましたが、相続税も贈与税と同様、基本的には相続人等が非居住者であっても相続税はかかります。ただ、非居住者はさらに非居住無制限納税義務者と制限納税義務者の2つに分かれます。前者はすべての財産に相続税が課税されますが、制限納税義務者であれば日本国内の財産にのみ課税されます。したがって、制限納税義務者が外国株式などを相続または遺贈により取得した場合は相続税はかからないということになります。非居住無制限納税義務者とはどういった人であるのか、制限納税義務者がどういった人であるのかといった詳しいことはまた後日改めてお話ししたいと思いますが、非居住者については所得税と相続税(または贈与税)では課税上の取扱いが違うということは知っておいてください。

譲渡所得税に話を戻しますと、今回も株などを実際に売ったわけではありませんので、納税資金の問題が出てきます。

そこでこの場合も納税猶予の制度が取り入れられています。①譲渡所得税の確定申告期限(原則として相続開始の日=被相続人が亡くなった日の翌日から4か月以内)までに確定申告書を提出するとともに担保を提供していること②非居住者である相続人等は、確定申告期限までに原則として連署による一の書面で納税管理人を定めて届け出ること③それ以降は毎年原則として3月15日までに継続適用届出書(原則として連署による一の書面)を提出すること④非居住者である相続人等が株などの相続対象資産を引き続き保有していること、以上4つの要件を満たしている場合は5年間(10年間への延長も可能)納税が猶予されます(免除ではありません)。

なお、非居住者である相続人等が5年(期限延長した場合は10年)以内に全員帰国した場合は、最後の帰国者が帰国してから4か月以内に更正の請求という手続きをとることにより課税が取り消されますので、もし5年(または10年)以内に相続人等が全員帰国する予定があるのであれば、納税猶予の手続きをする価値はあるように思います。

この5年(または10年)以内の相続人等の帰国による課税の取消しは納税猶予の適用を受けていなくても可能ですが、納税猶予の適用を受けなければいったんは納税しなければなりませんので(その後相続人等の帰国時に還付されることになります。)、納税しないで済ませたいのであれば納税猶予の手続きを踏んだ方が良いでしょう。ただし、見込み違いで5年(または10年)以内に結果として相続人等が全員帰国できなかったときは納税しなければなりませんので注意してください。また、相続人等が帰国前に相続対象財産である株などを売ってしまった場合もその売った部分についてはその時点で納税猶予が終了し、被相続人の納税義務を引き継いだ相続人等が納税しなければなりませんのでご注意ください。

3回に渡ってお話ししてきた国外転出時課税制度は以上になります。理解を深めるために前回及び前々回の分もぜひ併せてお読みください。

次回からは以前4回に渡って連載した「生前贈与は相続対策の王道です」の続きを何回かに分けて書いていくつもりです。贈与税の非課税制度の活用や生前贈与を行うにあたっての注意点など盛り沢山の内容になっていますので、楽しみにしていてください。

それでは今週はこの辺で。
また来週お目にかかります。