ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

まず最初に台風19号で被害に遭われた皆様方に心より御見舞い申し上げます。北海道も以前はめったに来なかった台風が頻繁に来るようになり、大きな被害をもたらすことが増えています。昨年の北海道胆振東部地震の前日も台風21号で停電が発生するなど大きな影響が出ていましたし、2016年の8月には半月ほどの間に5つの台風が北海道に上陸・接近して甚大な被害を受けました。下の写真のように我が家では一輪だけ季節外れの紫陽花が咲きましたが(ほかは7~8月に開花)、気温が高いので台風も発達しやすいのでしょうか。これ以上被害が拡大しないことを祈ります。

【追記】
台風のため試合が中止になったラグビーカナダ代表の皆さんが試合会場の釜石市で被災地支援のボランティア活動をしてくださったそうです。そして対戦相手のナミビア代表の皆さんも宿泊地の宮古市で握手・サイン会を開いてくださったそうです。予選敗退が決まっている両代表にとって今大会最後の試合が中止になってとても残念だったと思いますが、それをおくびにも出さず被災者に寄り添っていただき、私も日本人の一人として感謝の気持ちでいっぱいです。本当にどうもありがとうございました(快進撃を続ける日本代表については次回書きたいと思います)。


それでは本題に入って参ります。前回に引き続いて今回も配偶者(長期)居住権について解説していきます。今回からは税務の話が中心です。それでは早速順番に見ていきましょう。まずは配偶者居住権の評価額の算定方法についてです。配偶者居住権は、使用借権類似の配偶者短期居住権とは違って、賃借権類似の権利として財産評価の対象になります。具体的な評価方法は下記のとおりです。

1.配偶者居住権の原則的な評価方法(相続税)
(1)建物
  イ 配偶者居住権
$$建物の時価ー建物の時価×\frac{残存耐用年数ー存続年数}{残存耐用年数}×複利現価率$$
(注1)建物の時価は原則として固定資産税評価額になります。
(注2)残存耐用年数=法定耐用年数(住宅用)×1.5-建築後経過年数
※法定耐用年数(住宅用)×1.5及び建築後経過年数はいずれも6月以上の端数は1年に切り上げ、6月未満の端数は切り捨てます。
注3)存続年数は原則として配偶者の余命年数6月以上の端数は1年に切り上げ、6月未満の端数は切り捨て。)になります。余命年数は厚生労働省が5年ごとに国勢調査に基づいて発表する「完全生命表」の相続開始時における最新のものを用いて算定します。
(注4)分数式については、分母または分子が零以下の場合は分数式全体が零になります。したがって、その場合は配偶者居住権の評価額は建物の時価と同額になります。
(注5)複利現価率は存続年数に応じた民法の法定利率によります。民法の法定利率は令和2年4月1日から3年ごとに見直される変動制となり、当初は3%からスタートします。複利現価率は国税庁が評価通達等により公表する数値を使用します。

  ロ 配偶者居住権が設定された建物(居住建物)の所有権
$$\LARGE建物の時価ー配偶者居住権の価額$$
(2)土地等
  イ 配偶者居住権に基づく敷地利用権
$$\LARGE土地等の時価ー土地等の時価×複利現価率$$
(注1)土地等の時価は原則として財産評価基本通達に基づいて算出します。
(注2)複利現価率は国税庁が評価通達等により公表する数値を使用します。
  
  ロ 居住建物の敷地の所有権等
$$\LARGE土地等の時価ー配偶者居住権に基づく敷地利用権の価額$$
けっこうややこしい算式ですね。一番難しいのは(1)イの配偶者居住権です。順を追って解説していきますので、上の算式を見ながら読み進めてください。$$建物の時価×\frac{残存耐用年数ー存続年数}{残存耐用年数}×複利現価率$$の部分は実は(1)ロの配偶者居住権が設定された建物(居住建物)の所有権の価額と一致します。建物の時価から配偶者居住権が設定された建物(居住建物)の所有権の価額を差し引けば、配偶者居住権の価額になるわけです。

配偶者居住権が設定された建物(居住建物)はその存続期間が終了するまで(原則として配偶者が亡くなるまで)所有者は使うことができませんので、その間に老朽化によりどんどん価値が下がっていきます。どれくらい下がるかというのが分数式の部分です。例えば残存耐用年数が20年で、存続年数(原則として配偶者の余命年数)が15年だとすると(20-15)÷20、つまり20分の5の価値に下落します。減価償却の定額法的な考え方です。

ただ、これだけでは不十分です。15年後の価値と現在の価値は違います。最近は金利が低いのでピンとこないかもしれませんが、民法の新しい法定利率の3%で15年間運用すれば利息が結構つくことになります。ですから15年後の100万円と今の100万円ではその利息分価値が違うわけです。ちなみに今641,862円で複利3%で運用すれば15年後に約100万円になります。したがって15年後の配偶者居住権が設定された建物(居住建物)の価値を現在の価値に直さなければなりません。これが複利現価率を乗じている部分になります。ちなみに年利率3%で15年後の複利現価率は0.642(小数点以下第4位四捨五入)になります。

(2)イの配偶者居住権に基づく敷地利用権
も考え方は同じですが、建物と違って土地は老朽化による減価はありませんので、その分算式はシンプルになっています。わかりにくいかもしれませんが、次回具体例でご説明いたしますので、それである程度ご理解頂けるのではないかと思います。長くなりましたので今回はここまでにします。次回も配偶者(長期)居住権について税務の話を中心に解説していきます。またぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また再来週お目にかかります。