ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

将棋の藤井聡太棋士が四段から五段への昇段を決めましたね。これで史上初の中学生五段の誕生となりました。藤井五段は朝日杯でも準決勝に進出しており、ついに羽生永世七冠との公式戦初対決が今月17日に実現します。非公式戦では既に対局があり1勝1敗となっていますので、どのような結果になるかとても楽しみです。また、今期からタイトル戦に昇格した叡王戦も金井恒太六段と髙見泰地六段といういずれもタイトル戦初挑戦のフレッシュな顔合わせとなりました。将棋界では昨年から世代交代の流れが続いていますね。先日50歳になった私としてはまだまだベテランにも頑張ってもらって若手の壁になって立ちはだかってもらいたいです。今年も将棋界からは目が離せないですね。

それでは本題に入って参りましょう。去る1月16日に民法(相続関係)改正要綱案が公表されました。この要綱案を基に今国会で民法(相続関係)改正法案が提出・審議される予定です。民法(相続関係)の大きな改正は1980年以来約40年ぶりのこととなります。これは少子高齢化の進展等に伴い家族のあり方や相続を取り巻く状況が大きく変わっていることを民法(相続関係)に反映させようという趣旨です。そこで今回から新連載として、民法(相続関係)改正要綱案について詳しく解説します。相続のあり方が大きく変わる重要な改正がいくつかありますので、順番に見ていきたいと思います。今回は配偶者居住権の創設等についてです。

配偶者居住権には短期と長期の2つがあります。まず配偶者短期居住権から見ていきましょう。配偶者短期居住権とは、被相続人所有の建物に無償で居住していた被相続人の配偶者が原則として遺産分割が確定するまでの間その建物に居住し続けることができる権利のことを言います。ただし遺産分割が早々と確定した場合は、相続開始時から6か月を経過する日までは居住できます。これは配偶者以外の相続人等が当該建物を取得することになった場合に、配偶者が早期退去を迫られ路頭に迷うという事態になることを防ぐのが目的です。

次は配偶者長期居住権です。配偶者長期居住権とは、被相続人所有の建物に無償で居住していた被相続人の配偶者が遺産分割等確定後もその建物に居住し続けることができる権利のことを言います。つまり建物に対する権利を所有権と居住権に分割し、配偶者以外の相続人等が所有権を取得したとしても、配偶者は配偶者長期居住権を取得すればその建物に居住し続けることができるようになります。これはより柔軟な遺産分割等を可能にし、配偶者が遺産分割等の結果住むところを失って路頭に迷うことがないようにするのが目的です。具体例で見てみましょう。

相続財産が全部で6,000万円あり、その内訳は現預金3,000万円、自宅の所有権が2,000万円(土地所有権1,500万円・建物所有権500万円)、建物居住権が1,000万円だったとします。相続人は被相続人の配偶者と子1人の合わせて2人とし、それぞれ法定相続分2分の1(3,000万円)ずつ遺産を取得するとします。現在では配偶者が自宅の土地建物を取得すると1,500万円+(500万円+1,000万円)=3,000万円となり、現預金は一切取得できないということになります。その結果、配偶者の生活保障が不十分となり、結局自宅を売却せざるを得ないはめに陥る恐れもあります。

改正要綱案ではそういったケースを手当てし、配偶者は建物居住権(1,000万円)さえ取得すれば住み続けることができますので、現預金も2,000万円取得することが可能となり、配偶者の生活にも十分な配慮がなされることになります。なおここでは建物所有権と建物居住権をそれぞれ便宜的に500万円・1,000万円としておりますが、実際の具体的な価額算定方法については今後明らかになっていくものと思われます。その点については詳細が分かり次第、当ブログで続報する予定です。

また、上記のケースで自宅の土地建物を被相続人から配偶者に生前贈与又は遺贈していた場合、現状では原則として特別受益として相続財産に持ち戻しされますので、やはり配偶者は現預金を一切取得できないことになります。改正要綱案ではそういったケースも一定程度手当てし、贈与又は遺贈時点で婚姻期間が20年以上であれば持戻し免除することになり、相続財産に含まれない取扱いとなります。したがって配偶者は現預金3,000万円の法定相続分2分の1(1,500万円)を取得することが可能になります。

配偶者居住権の創設等については以上になります。次回も民法(相続関係)改正要綱案について詳しく見ていきますので、次回もぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また再来週お目にかかります。