ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

先週予告しました通り、今週からは新連載です。最近増加して社会問題にもなっている空き家・空き地の相続と税金がテーマです。空き家や空き地を相続して(あるいは相続しそうになっていて)その取扱いに頭を悩ませている方も多いかと思います。そうした皆さんにとって少しでも参考になれば幸いです。まずは空き家について今回から何回かに渡って取り上げていきたいと思います。それでは具体的に見ていきましょう。

近年は高齢化により一人暮らしのお年寄りが増えています。それに伴い、そのお年寄りがお亡くなりになったり、老人ホームに入居したりすることによる空き家の数も増加しています。空き家の数は全国で約820万戸、そのうち北海道は約39万戸になっています。そのうち賃貸や売却等が決まっていないものは全国で約318万戸、北海道は約14万戸です(いずれも平成25年のデータ)。こんなに多いんですね。そして約7戸に1戸が空き家という状況で、毎年約6万4,000戸も空き家が増加し続けています。これは25年前に比べてなんと2倍以上、5年前と比べても約1割の増加となっています。

こうした空き家を相続すると税金面はもちろん、そのほか維持管理面などの負担も非常に大きなものになります。かといって、売却したり賃貸したりしようと思っても、買い手や借り手が見つけにくいというのも現実です。また、解体するにしてもその費用が問題となりますし、固定資産税の軽減措置も空き家解体後の空き地には適用されなくなり、固定資産税の負担が数倍にもなります。

そうしたことを嫌って相続放棄をしたり、相続登記をせずに放置して所有者がいなくなったり、あいまいになるケースも多くなっています。それにより空き家を管理する人がいなくなり、老朽化により倒壊する恐れが出てきたり、廃棄物の不法投棄場所になったり、犯罪グループのアジトに利用されるなど、様々な問題が生じています。

そこで国の方も空き家対策として法整備を行いました。平成26年11月に成立し、平成27年5月から施行されている「空き家対策特別措置法」です。「空き家対策特別措置法」の具体的内容は下記の通りです。

1.各市町村は、倒壊する恐れがあるなど危険な空き家を「特定空き家」に指定し、所有者に修繕や解体等の必要な措置をとるよう助言・指導・勧告・命令等をすることができる。

2.「特定空き家」の敷地には固定資産税の軽減措置(原則として200㎡までは6分の1、それを超える部分は3分の1)は適用しない。

3.各市町村は、所有者が必要な措置を取らなかった場合には「特定空き家」を解体し、解体費用等を所有者に請求することができる。

つまり「特定空き家」に指定されてしまうと、固定資産税が何倍にもなり、かつ一定期間内に解体等を行わないと強制解体され費用も請求されるといういわば「ムチ」が用意されたというわけです。ただ「ムチ」だけでは実効性が不十分であるため、税制面で「アメ」も用意されました。それが平成28年度税制改正で新設された譲渡所得の特別控除(最大3,000万円)です。昨年末に当ブログでも速報しましたが(下記リンクも参照してください)、以下の要件を満たした空き家を売却すると譲渡益から最大3,000万円特別控除が受けられますので、譲渡所得税の負担が非常に軽くなります(譲渡所得税がゼロになるケースも多いと見込まれます)。

<平成28年度税制改正大綱、ついに決定!(相続・不動産関連速報その1)>
http://souzoku-sapporo.jp/%E7%9B%B8%E7%B6%9A%E7%A8%8E/%E5%B9%B3%E6%88%90%EF%BC%92%EF%BC%98%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%A8%8E%E5%88%B6%E6%94%B9%E6%AD%A3%E5%A4%A7%E7%B6%B1%E3%80%81%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%AB%E6%B1%BA%E5%AE%9A%EF%BC%81%EF%BC%88%E7%9B%B8%E7%B6%9A/

1.相続開始直前において、被相続人以外の者が居住していない家屋(一戸建て)であること。
つまり、お亡くなりになった方が一人暮らしであったということです。なお、老人ホームに入居するなどして生前から空き家になっていた場合は適用外になるので注意が必要です(小規模宅地等の特例とは取扱いが異なっています)。また、アパートなどの区分所有建物も適用外になります。

2.昭和56年5月31日以前に建築されたものであること。
つまり、旧耐震基準が適用されていた(現行の耐震基準を満たしていない)建物であるということです。

3.相続開始以後、空き家のままであること。
つまり、相続人等が住んだり、人に貸したりするなどして一旦利用した場合は、その後また空き家になったとしても適用が受けられませんので注意してください。

4.相続開始日から3年を経過する日の属する年の年末までに、建物を解体して更地にするか、または建物を新耐震基準に合うようリフォームしてから譲渡すること。
例えば、相続開始日(被相続人がお亡くなりになった日)が平成28年5月19日だとすれば、平成31年12月31日までに売れば良いということになります。現実的には更地にして売ることが殆どだと思われます。

5.譲渡価額が1億円以下であること。
更地にした後、分筆して切り売りした場合などは、その売却合計金額が1億円を超えてしまうと全ての譲渡について適用が受けられなくなります。また、1億円を超えないように例えば意図的に一部を低額(時価の2分の1未満)で売却した場合は、その部分については売却金額ではなく時価(通常の取引価額=相場)で合計金額が1億円を超えるかどうかを判定しますので注意が必要です。なお、同様に1億円を超えないように一部を贈与した場合も、贈与部分の時価を含めて合計金額が1億円を超えるかどうかを判定しますので注意してください。

国税庁のパンフレットにもわかりやすい図解が載っていますので、参考にしてください。
<国税庁パンフレット>
個人の方 が土地・建物等や株式等を譲渡した場合の平成28年度税制改正のあらまし

長くなりましたので今回はここまでといたします。次回は空き家の相続に当たって注意することや、対策などについてより具体的に見ていく予定です。次回もぜひご覧ください。
それでは今週はこの辺で。また来週お目にかかります。