ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

今週も先週から引き続き、空き家の相続と税金についてです。空き家を相続することになった場合、皆さんならどうされますか?どのような対応が考えられるでしょうか。

真っ先に思い浮かぶのが相続放棄ですね。ただ相続放棄の場合は、空き家だけではなく被相続人(お亡くなりになった方)の全財産を相続放棄しなければなりません。ですから空き家以外にめぼしい財産がなければ良いのですが、そうでなければ現実的な選択肢とは言えません。

では、相続放棄の手続はとらずに事実上放棄するというのはどうでしょうか。つまり遺産分割も相続登記による名義変更もせず、被相続人の名義のまま空き家を放置する方法です。しかしこれにも大きな問題が起こり得ます。

相続財産を遺産分割しない場合、つまり未分割の場合はその空き家は相続人の共有財産ということになります。そしてもしその空き家が老朽化して倒壊し、誰かに怪我をさせたり、最悪お亡くなりになるなど被害を及ぼしてしまった時は所有者、つまり相続人全員に損害賠償などの責任が及びます。放置しても管理責任までは免れることはできませんので、このような見えない大きなリスクを背負うことになってしまいます。

加えて、その空き家を処分する、つまり売買や建て替え等を行う場合でも共有者全員の同意が必要になりますし、そもそも被相続人の名義のままでは売買による移転登記も融資を受けるための抵当権設定登記もできません。

さらに、年月が経って相続人が亡くなるとその相続人の妻子等が新たに相続人になり、相続人の数が増える上に相続人間の人間関係が希薄になってきますから、事態はますます複雑になります。やはり被相続人がお亡くなりになった直後に速やかに遺産分割協議をして空き家の相続人を決めることをお勧めします。もちろん、相続登記もお忘れなく。

そうは言っても空き家を相続した人はその後が大変ですよね。空き家を相続した後、どのような対策が考えられるでしょうか。

まず第一に、家をリフォームして売るという選択肢が考えられます。条件が揃えば前回ご説明した最大3,000万円の特別控除が受けられ、譲渡所得に係る税金面ではかなり優遇されます。ただし、相続開始前から老人ホームへの入居などで空き家になっていた場合はこの特別控除は使えませんので注意が必要です。

デメリットとしては、日本は中古住宅市場があまり充実しておらず、買い手を探すのが難しいということと、リフォームしてもその分高く売れるとは限らないということが挙げられます。

第二に、空き家を壊して更地にして売るという方法が考えられます。この方が買い手は付きやすいでしょうし、条件が合えば同様に最大3,000万円の特別控除も受けられます。

この場合注意したいのが、取壊し時期です。あまり早くから取り壊してしまうと、固定資産税の住宅用地に係る優遇措置が受けられなくなり、固定資産税が数倍にも膨れ上がります。固定資産税は1月1日時点の現況で課税されますから、壊すならそれ以後にすべきです。北海道の場合は雪が溶けた春以降が良いでしょう。売買契約が決まってから取壊しに着手し、速やかに(遅くとも年内に)引き渡すのが一番お勧めするやり方です。

第三に家をリフォームして貸すという方法が考えられます。先祖伝来の家や土地を売るのは忍びないという方も多いので、貸すというのも有力な選択肢となります。デメリットとしては売却の場合と同様、借り手をどのように探すのかということとリフォーム費用の経済的負担です。

最近はこうした問題の解決策として「借主負担DIY型賃貸」という方法が注目されています。DIYとはDo It Yourself、つまり直訳すると「自分自身でやる」となりますが、ここでは借り手自身がリフォームをするという意味になります。本来貸し手が行うリフォームを借り手が行い、その代わり家賃を安くするというやり方です。

貸し手にとってはリフォーム費用の負担をしなくてすむというメリットがあり、借り手にとっては自分好みにリフォームでき、月々の家賃負担も軽くなるというメリットがあります。借り手がリフォーム費用を負担するので長期契約になることが多く、貸し手と借り手の関係も安定的になります。詳細は下記の国土交通省のガイドブックも参照してください。

<個人住宅の賃貸活用ガイドブック(「空き家」を活用するための知恵袋)【国土交通省】>
http://www.mlit.go.jp/common/001039342.pdf

今回はここまでになります。最近は空き家対策について行政などの公的機関や金融機関等が様々な施策・支援を行っていますので、次回はその具体的な内容について見ていきたいと思います。次回もぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。また来週お目にかかります。