ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。今回も更新が一週間ほど遅れてしまいました。申し訳ありません。

今回も将棋の話題からですが、今私が注目しているのは王位戦七番勝負です。豊島将之王位(名人)に木村一基九段が挑戦しています。以前ブログにも書いたように本来であれば豊島王位を応援するところですが、今回ばかりは木村九段を応援しています。というのは、木村九段は今回でタイトル戦7度目の出場になるのですが、未だタイトル獲得がない「無冠の帝王」だからです。過去6回のタイトル戦のうち3回は先に王手をかけながら、いずれも逆転でタイトル獲得を逃しています。3連勝4連敗というのもありました。順位戦A級にも所属する強豪棋士の一人ですが、タイトルにはなぜか縁がありません。46歳という年齢からもうそれほどチャンスは多くないでしょう。初戦は負けましたが次の北海道シリーズからぜひ巻き返してもらいたいと願っています。木村九段、頑張ってください。

それでは本題に入って参りましょう。今回は空き家譲渡特例の見直しについてです。空き家譲渡特例とは、相続又は遺贈により取得した空き家及びその敷地等を譲渡した場合において、一定の要件を満たすときは、最大3,000万円の特別控除が受けられるという譲渡所得の特例になります。詳しくは以前当ブログで4回に渡り連載しましたので、そちらの方もぜひご覧ください。

【確定申告特集】空き家特例その1(制度の概要と空き家の要件について)

【確定申告特集】空き家特例その2(空き家の要件[続き]及び譲渡の要件について)

【確定申告特集】空き家特例その3(譲渡の要件について[続き])

【確定申告特集】空き家特例その4(手続きについて)

そして今回の税制改正により平成31年(2019年)4月1日以後の譲渡について、要件が緩和されています。まずは上記連載記事のうち、関係する部分を抜粋します(下線部筆者追加)。
「また、相続開始直前において被相続人が老人ホーム等に入居していて、生前から既に空き家となっていた場合も「空き家特例」の適用を受けることはできません。これは相続税の小規模宅地等の特例では、平成26年から原則として老人ホーム等に入居していた場合でも適用を認めることになっているのとは対照的です。」

このように、従来は被相続人が老人ホーム等に入居していたため、相続開始直前において既に空き家になっていた場合は空き家譲渡特例の適用を受けることができませんでした。しかし、上記記事にも書いたように小規模宅地等の特例はそのような場合でも適用可能ですので、相続税と譲渡所得税の違いがあるとはいえ、バランスが取れていないのではないかという声がありました。また、老人ホーム等への入居により空き家になっているケースは多いことから、空き家の解消を目指すという立法趣旨からも要件が厳しすぎるのではないかという意見もありました。

そこで上記のケースで被相続人が老人ホーム等に入居する直前において要介護認定等を受けていた場合は、空き家譲渡特例の適用が受けられることとなりました。この特例が使えるか否かで譲渡所得税及び住民税の額は大きく違います。譲渡益が3,000万円以上の場合は、特別控除3,000万円×20.315%=6,094,500円もの節税となります。また、地価が比較的安い北海道の場合は譲渡益が3,000万円未満になることが多く、譲渡所得税及び住民税がゼロになるケースも多くなりますので、この改正は朗報と言えるかと思います。

また、前述のとおり、空き家譲渡特例は相続又は遺贈により取得した空き家及びその敷地等を譲渡した場合において、一定の要件を満たすときに適用可能となりますが、ここには相続税を申告納付しているという要件はありません。したがって、相続税の申告納付が要件の一つとなっている取得費加算の特例制度(租税特別措置法第39条)よりも対象者は広いと言えます。空き家譲渡特例は、相続税の基礎控除額以下で申告納付の必要がなかった方でも使える余地のある特例ですから、上手に活用してください。

空き家譲渡特例については以上になります。次回からは、その多くが今月から施行されている改正民法(相続法)と、それに関連する税制改正について連載していきます。相続税の申告にも大きな影響がありますので、ぜひご覧ください。更新は今のところ2週間後を予定しておりますが、都合によりまた少し遅れるかもしれません。その場合はどうかご容赦ください。

それでは今週はこの辺で。
また来月お目にかかります。