ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

令和になってから早くも半月ほどが経過しました。10連休が終わり日常に戻った方も多いかと思いますが、こちらのブログも再開し、以前のように原則2週間に1回更新していく予定です。またよろしくお願いいたします。今日からは平成最後で令和最初となる税制改正について連載していきたいと思います。最初のテーマは贈与税の非課税制度の見直しについてです。贈与税が非課税になるケースはいくつかありますが、今年はそのうち2つの制度について見直しが行われました。早速順番に見ていきましょう。

まず直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度についてです(以下「教育資金非課税制度」と略します)教育資金非課税制度とは、親や祖父母などの直系尊属から30歳未満の子や孫などの直系卑属に対して信託銀行等に預け入れる等の形で教育資金の一括贈与が行われた場合、原則として1,500万円まで贈与税が非課税になるというものです。

教育資金非課税制度は平成25年4月1日に始まり、当時は大変な反響を呼びました。最近は落ち着きを見せているようですが、まだまだニーズがあるということで一部手直しをした上で、令和3年3月31日まで延長されることとなりました。手直しの内容としては、受贈者である子や孫等に所得制限が導入されたことと、贈与者である親や祖父母等に相続が発生した場合に相続税が課せられ得るケースが生じるようになったことなどです。

所得制限については、具体的には贈与前年の受贈者の合計所得金額が1,000万円を超える場合は非課税の適用が受けられないこととなりました。30歳未満で1,000万円を超える所得がある方がどれくらいいるかはわかりませんが、それだけの高額所得者に対してまで非課税制度で優遇する必要はないという趣旨だと考えられます。平成31年4月1日以後の贈与について所得制限が設けられます。

受贈者が30歳に達する前に贈与者が死亡して相続が開始し、受贈者に相続税が課せられ得るケースについては、具体的には相続開始前3年以内の教育資金一括贈与について教育資金非課税制度の適用を受けた場合において、相続開始日現在において残額がある場合は、その残額が相続税の課税対象(相続財産等)になるというものです。ただし、相続開始日において受贈者が①23歳未満②学校等に在学中③教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講中のいずれかに該当する場合は相続税はかかりません。

従来は上記のようなケースでも相続税はかかっていなかったのですが、租税回避に利用され教育資金非課税制度の本来の趣旨から逸脱しているという批判もあり、このような改正となりました。この改正は平成31年4月1日以後の相続から適用されます。なお、相続財産等となる教育資金の残額を含めても相続税の基礎控除額以下であれば相続税がかからないのは従来通りです。

また、受贈者が30歳に達した日現在で教育資金に残額がある場合において、贈与税の基礎控除額を超えるときは従来から受贈者に贈与税が課せられてきましたが、令和元年7月1日以後に受贈者が30歳に達した場合において、その時点で①学校等に在学中②教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講中のいずれかに該当する場合は贈与税はかからないこととなり、その後卒業や受講終了等の年の12月31日(ただしその前に40歳に達した場合はその日)現在においてなお残高がある場合のみ贈与税がかかることになりました。教育資金非課税制度の見直しについては以上です。

次に直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度についてです(以下「結婚・子育て資金非課税制度」と略します)結婚・子育て資金非課税制度とは、親や祖父母などの直系尊属から20歳以上50歳未満の子や孫などの直系卑属に対して信託銀行等に預け入れる等の形で結婚・子育て資金の一括贈与が行われた場合、原則として1,000万円(うち結婚資金は300万円)まで贈与税が非課税になるというものです。こちらは平成27年4月1日に始まり、今回受贈者の所得制限が教育資金非課税制度と同様の形で導入された上で令和3年3月31日まで延長されました。

なお改正項目ではありませんが、結婚・子育て資金非課税制度においては受贈者が50歳に達する前に贈与者が死亡して相続が開始した場合において、相続開始日現在において残額がある場合は、その残額が相続税の課税対象(相続財産等)になるのは従来通りです。教育資金非課税制度と違って相続開始前3年超の贈与であっても一緒です。また、受贈者が50歳に達した日現在で結婚・子育て資金に残額がある場合において、贈与税の基礎控除額を超えるときに受贈者に贈与税がかかるのも従来通り変わりありません。結婚・子育て資金非課税制度の見直しについては以上です。

贈与税の非課税制度の見直しについては以上になります。次回も税制改正について詳報しますのでまたぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また再来週お目にかかります。