ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

今回は前回の続きになります。前回までの記事も下記のリンクからぜひご覧ください。


【参院選直前短期集中連載①】減税と財源

【参院選直前短期集中連載②】ガソリン税の減税

【参院選直前短期集中連載③】消費税の減税

なお、これまでの繰り返しになりますが、当ブログは特定の政党や政治家を支援するものでもなければ、批判するものでもありません。また、財務省や国税庁を支持したり批判するものでもありません。あくまでも税理士の視点から減税等の問題について、客観的に解説しています。その点どうかご承知おきください。

それでは前回予告したとおり、消費税減税の方法論や実施期間等について取り上げて見たいと思います。参院選でも一律減税か、それとも軽減税率の対象となっている飲食料品に絞っての減税か、物価高が落ち着くまでの期間限定か、それとも恒久的か、色々な主張が見受けられますが、ここでは最善の方法を模索していきたいと思います。

まず一律減税か、軽減税率の対象となっている飲食料品に絞っての減税かという論点から考えてみます。

一律減税については、5%を主張する声が一番多いようです。税率をどうするかはともかく、あらゆる品目の価格が上昇していますから、一律減税には妥当性があると考えられます。

その際よく聞かれるのは、一律減税は消費額の多い高所得者ほど減税が多くなり、「金持ち優遇」ではないかという意見です。しかし、普段消費税を多く負担している人の減税が多いのは当たり前のことです。高所得者ほど減税が高いのであれば「金持ち優遇」といえるかもしれませんが、減税が多いからと言って「金持ち優遇」ということにはならないと思われます。これは消費税だけではなく、所得税の減税などにも当てはまることです。

また、1人当たりの高所得者の減税が大きくなったとしても、高所得者の人数は少ないので減税額の総額に占める割合はそれほど大きくはなりません。財源を無駄にしないために対象者を低所得者等に絞るべきだという論調も見られますが、そうした方々への施策は物価高対策などの経済政策で行うものではなく、社会保障の枠組みで行うべきものです。政策目的が全く異なるものを混同した議論だと思われます。

それに物価高の影響は所得の多寡に関わらず全ての国民が受けています。「103万円の壁」のところでも書きましたが、そこで差を付けることに合理性はありません。コロナ渦の時の給付金も、当初案では住民税非課税世帯等に対して支給されることになっていましたが、対象者はわずか15%程度であり、コロナ渦で全ての国民が苦しんでいるのにおかしいのではないかという批判が高まり、最終的には全ての国民に支給されることになりました。

そしてその後政府が掲げた「ステイホーム」「ソーシャルディスタンス」「マスクの着用」等の一連の施策に国民が一丸となって協力する機運ができあがり、コロナ渦を乗り越えることができたわけです。確かに給付金の支給がなくても支障がなかった高所得者もいたとは思いますが、だからといって対象者から外してしまえば一部の国民を疎外することになり、そのことに対する違和感が国民の間に広がって分断や対立を招き、コロナ対策にも差し障りがあったかもしれません。

最近は教育無償化や児童手当など、所得制限を外す動きが主流になっています。所得が高かろうがそうでなかろうが子育てが大変であることは皆一緒ですから、理にかなっていると言えます。所得によって対象者を絞るというのは、最近のそうしたトレンドにも反するものと思われます。

それでは軽減税率の対象となっている飲食料品に絞っての減税はどうでしょうか。最近は物価高の中でも、飲食料品の高騰が目立っていますので、飲食料品に絞って減税する方法も有力だと思われます。主食であるお米の値段がわずか1年の間に2倍以上になったことなどを踏まえると、今はむしろこちらの方が良いのかもしれません。また、この方法だと消費支出に占める食料費の支出割合(エンゲル係数)が高い中低所得者層に手厚く減税することになりますから、「金持ち優遇」ということにもなりません。

ただ、税率5%では一律減税に比べて減税額が減り物価高対策としての効果が薄れますから、税率はゼロ(免税等)にすべきだと考えます。前回見たとおり、イギリスやカナダ(連邦及び多くの州・準州)、アメリカ(多くの州・郡)のように飲食料品の税率がゼロ(免税等)のところも少なくありません。

少し長くなりましたので、一旦ここで区切って、実施期間等の問題については次回に回します。明日また更新しますので、続きもぜひご覧ください。