ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

今回も前回の続きになります。前回までの記事も下記のリンクからぜひご覧ください。


【参院選直前短期集中連載①】減税と財源

【参院選直前短期集中連載②】ガソリン税の減税

【参院選直前短期集中連載③】消費税の減税

【参院選直前短期集中連載④】消費税の減税(続き)

なお、これまでの繰り返しになりますが、当ブログは特定の政党や政治家を支援するものでもなければ、批判するものでもありません。また、財務省や国税庁を支持したり批判するものでもありません。あくまでも税理士の視点から減税等の問題について、客観的に解説しています。その点どうかご承知おきください。

それでは前回の続きで、今回は消費税減税の実施期間について取り上げます。
まず、物価高が収まるまでの時限的な措置として消費税減税を行うという考え方ですが、こちらは非常にオーソドックスな方法だと言えます。

なお、時限的な措置ということは、物価高が解消すれば当然税率は元に戻るということになります。一度税率を下げると再度引き上げるのが困難になるという意見もありますが、これまでも日本国民は度重なる消費税増税や軽減税率制度・インボイス制度の実施などに全面的に協力してきましたので、物価高が落ち着くまでの時限的な措置であることをあらかじめ国民に周知すれば、そのような心配をする必要はないと考えられます。ただし、軽減税率の対象となっている飲食料品に絞っての減税を実施する場合は、前々回ご紹介したように日本の軽減税率は他国に比べて高すぎますから、元に戻すとしても5%までだと思われます。

一方、消費税減税を恒久的な措置とすべきだという意見も散見されます。GDP(国内総生産)の6割近くを占め、景気を牽引するはずの個人消費が消費税増税の度に冷え込んだこれまでの経緯を考えれば、こちらも至極もっともな考え方です。

名目GDPが500兆円を初めて超えたのが1992年、そして昨年(2024年)32年間かけてようやく600兆円に到達しました。1973年に100兆円を超えてからはほぼ5年ごとに100兆円ずつ増えていたことを考えれば、あまりにも時間がかかったと言えます。

今から30年前の1995年、当時GDP世界第2位の日本は、そのうちアメリカを抜いて世界一になるのではないかという勢いがあり、ドルベースでアメリカの73%の金額にまで迫っていました。3位のドイツには2倍以上の差をつけており、世界の18%のシェアを占めていました。バブル経済は既に崩壊していましたが、まだまだその余韻が残っていました。

その後、2010年に日本は中国に抜かれ3位に転落し、そこからは差が広がる一方で、2024年現在では中国の5分の1、アメリカの7分の1程度しかありません。世界におけるシェアはわずか3.6%となってしまいました。2023年にはドイツに抜かれて4位に転落し、今年中にはインドにも抜かれて5位に転落する見込みです。そして、30年前はGDPが日本の10分の1しかなかった韓国が半分近くにまで追い上げてきています。平均年収や最低賃金では既に韓国に抜かれてしまいました。

1人当たりGDPはもっと顕著です。2000年の時点で日本はこちらもドルベースで世界第2位でした。その後2007年に25位まで転落し、そこからしばらくは踏みとどまっていましたが、2022年に一挙に35位に下がり、2024年時点では38位となっています。G7でトップだったのが最下位となり、韓国(33位)や台湾(37位)にも上に行かれてしまいました。

これらの統計はドルベースなので円安の影響もありますが、日本通貨(円)の国際的地位が低下したということでもありますから、いずれにしてもあまり喜ばしいことではありません。

こういう記事を書いていると段々めげてきますが、これが現実です。世界でも希に見る低成長の30年、まさに失われた30年と言えます。これまでの30年間、日本は経済学者やエコノミストの主流派等に先導され経済運営を続けてきましたが、結果を見ると残念ながら失敗と言わざるを得ません。失敗したのであれば、これまでとは違った発想でやり方を変える必要があります。

当連載の第1回でお話ししたように、今はまだ国債の受け入れ余力が国内に十分残っています。今のうちに国債を原資に国民の税負担を軽くし、個人消費を活性化させ、経済成長に繋げるという好循環をつくるべきです。そうすれば税収が増え、国債発行額を減らすことができます。国債の引き受け手がいなくなってからでは手遅れです。失われた30年を終わらせることができるのか、それとも40年・50年と続いていくことになってしまうのか、今はその瀬戸際に来ているものと思われます。

私は普段は相続専門税理士として仕事をしていますが、国レベルでも子孫たちに豊かな日本を相続するのか、貧しい日本を相続するのか、いよいよその分岐点に差し掛かってきたと言えます。「子孫にツケを回すな!」ではなく、「子孫に貧しい日本を相続するな!」が正しい表現なのではないかと思います。

消費税減税については、以上となります。最後にもう1本「税と民主主義」というテーマの記事をアップして、当連載を締め括りたいと思っています。これまでとは少し趣向を変えた内容になりますが、一両日中に書き上げて更新しますので、そちらの方も是非ご覧ください。