ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。
今日は関東地方などで大雪のようですね。このニュースで思い出したのが、1994年(平成6年)2月の大雪です。当時私は北海道から上京してサラリーマンをしており、冬でも全く雪が降らないことに驚いていたのですが、上京3年目にしてついに雪に見舞われました。とはいっても道産子の私は雪には慣れている・・・はずだったのですが、まず靴が全然違うんですね。ツルツルの靴底ではさすがに歩くこともままなりませんでした。雪が降ると転んで骨折する人が多いのにも納得しました。車もあちこちで立ち往生していましたし、電車は地下鉄以外全面ストップです。北海道などの雪国と違って雪に対する備えがなされていないので、ひとたび降ると大変なことがよくわかりました。今回も大きな事故などがないことを祈ります。
それでは本題に入って参りましょう。前々回から平成30年度の税制改正大綱について相続関連のものをピックアップして順次解説しています。今回は事業承継税制の特例創設についてです。事業承継税制とは非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度の通称です。これは現行の事業承継税制(以下「現行制度」と言います。)よりも優遇する制度(以下「新制度」と言います。)を10年間という期間限定で新たに創設するというものです。
まず初めに新制度創設の背景からご説明いたします。近年経営者の高齢化が著しくなっており、事業承継は待ったなしの状況です。ただ事業承継にはいくつかの高いハードルがあります。その一つが会社の株式(以下「非上場株式等」と言います。)の承継です。非上場株式等を承継する際には贈与税または相続税が発生し、その負担が大きいことがネックになります。
その負担を軽減する手当てとして平成21年に現行制度が創設され、平成27年の大改正などを経て現在に至っているのですが、事業承継の進展はまだまだ不十分です。そこで原則として2018年1月1日から2027年12月31日までの贈与・相続・遺贈について、新制度の適用を受けられるようにして現行制度よりも優遇し、それによって事業承継をより一層加速させようというのが今回の税制改正の狙いです。
次に現行制度と新制度を対比させながら主な違いを見ていきましょう。まず納税猶予・免除割合について、現行制度では贈与税が100%・相続税が80%であるのに対して、新制度では贈与税・相続税ともに100%に拡充されます。さらに現行制度では総株式の3分の2(議決権ベース)までが納税猶予・免除の対象ですが、新制度では全ての株式について納税猶予・免除の対象になります。
つまり現行制度では総株式の3分の2までの承継でも相続税については20%の負担がある上に、3分の2を超えて承継した場合は贈与税・相続税が全額課税されるわけです。これがネックとなって事業承継がなかなか進まないケースもありましたので、新制度ではそこを手当てして今から10年間は贈与税・相続税を全株式かつ全額猶予・免除することになりました。
ここで一つ注意すべきことは、新制度の適用を受けるためには2023年3月31日までに都道府県に特例承継計画を提出し、認定を受ける必要があるということです。計画提出の締め切りは10年後ではなく5年後です。10年間もあると思ってゆったり構えていると新制度の適用を受けられないという事態になりかねませんので、お間違えのないように十分注意してください。
また、非上場株式等の承継について現行制度では一人の先代経営者から一人の後継者へというパターンしか納税猶予・免除の対象になっていませんでしたが、新制度では先代経営者以外からの承継も納税猶予・免除の対象になり、また後継者も一定の要件を満たせば3人まで納税猶予・免除の対象になるなど、承継パターンが拡大されることになりました。ただし先代経営者以外からの承継については一定の期限が設けられていますので、注意が必要です。
事業承継税制の特例創設及び3回に渡って連載してきた平成30年度の税制改正大綱については以上になります。平成30年度の税制改正については3月末に税制改正法案の成立・公布が見込まれ、その後関連通達等が発遣されることになりますので、そこでより詳細が明らかになるものと考えられます。また目新しい情報が入って来ましたら当ブログでお知らせしたいと思います。次回からは新連載も予定しておりますので、これからも当ブログをぜひご覧ください。
それでは今週はこの辺で。
また再来週お目にかかります。