ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。
ゴールデンウィークも終わり、また慌ただしい日常が戻ってきましたね。フランスや韓国では新しい大統領が決まるなど、海外では大きな動きがありました。昨年のイギリスEU離脱やトランプ大統領誕生に比べると順当な結果に終わり、株価も大きく上昇したようです。これから日本にどう影響するかはわかりませんが、世界平和と景気回復に繋がれば良いなと思います。
それでは今日の本題に入って参りましょう。今回は過少申告加算税です。過少申告加算税は期限内申告における申告納税金額が過少であった場合などに課せられます。過少申告加算税は原則として過少税額の10%ですが、ケースによって5%や15%、また過少申告加算税が課せられない(0%)こともあります。今年から税制改正も入っていますので、それも併せて詳しく見ていきましょう。
まず前々回の例をもう一度取り上げます。相続税の期限内申告をした後税務調査が入り、財産の申告漏れ等が見つかって修正申告をしたケースです。当初申告税額が3,000万円、修正申告税額が4,000万円だとしますと、本税は差額の1,000万円を追加納付することになります。その後税務署から過少申告加算税と延滞税の賦課決定通知書が送られてきますので、それにしたがって過少申告加算税と延滞税を納付するという手順になります。
この場合の延滞税については前々回書きましたが、過少申告加算税は1、000万円×10%=100万円となります。これだけだと延滞税よりはシンプルで分かりやすいのですが、ケースによって課税割合である10%が変動します。上記の例で当初申告税額1,000万円で修正申告税額が2,500万円だったとします。そうすると本税は差額の1,500万円を追加納付することになりますが、過少申告加算税はどうなるでしょうか?1,500万円×10%=150万円でしょうか?
この場合は課税割合が15%になる部分が出てきます。具体的には、当初申告税額(当初申告税額が50万円より少ない場合は、50万円)を超える税額を追加納付する場合、その超える部分については15%になるのです。したがって上記の場合は1,000万円×10%+(1,500万円-1,000万円)×15%=175万円となります。25万円も多くなっていますね。これは追加納付税額が非常に多い、裏を返せば当初申告税額があまりにも少ない場合は更なるペナルティを課そうということで通常の10%を5%加重して15%にしているのです。なかなか厳しいですよね。
ここまでは税務調査で追徴されたケースを見てきました。それでは税務調査が入る前に自分で気づいて修正申告をした場合はどうでしょうか。これは二つのパターンに分かれます。一つ目は税務調査の通知がある前に修正申告をした場合です。この場合は原則として過少申告加算税は課さないことになっています。したがって、過少申告に気づいた場合は自主的に修正申告をした方が得策だということになります。税務調査が入らないように念じるという方法もなくはありませんが、あまりお勧めはできないですね(笑)。
二つ目は税務調査の通知があった後で、調査が実施される前に修正申告をしたケースです。昨年(平成28年)まではこの場合も原則として過少申告加算税は課さないことになっていました。しかし、税制改正により今年(平成29年)からは原則として5%(上記の加重部分は10%)の過少申告加算税が課せられるようになりました。上記の例だと1,000万円×5%+(1,500万円-1,000万円)×10%=100万円となりますね。
これは税務調査の通知の後に慌てて修正申告書が提出されるケースが非常に多く、必ずしも自主的に修正申告したとは言い難い面もあることから、過少申告加算税を新たに課すこととしたものです。ただし、税務調査で具体的に非違事項を指摘されているわけではないので、通常の過少申告加算税よりは軽くしているわけです。
ただし、修正申告をしなければ税務署長による増額更正等が行われるであろうことを予知して修正申告をした場合は、通常通りの過少申告加算税が課せられます(これは税務調査の通知前であっても同様です)。この更正等の予知があったかどうかについては税務訴訟や国税不服審査で争いになることも多く、なかなか難しい問題です。詳しく書くと非常に長くなりますので、また機会を改めて書きたいと思っています。
なお、上記の税制改正は法定申告期限等が平成29年1月1日以後に到来するものに適用されることになっています。今年(平成29年)に入ってから税務調査の通知が行われたものであっても、法定申告期限等が平成28年以前であれば従来通りですので、税務調査の通知後であっても更正等予知前であれば過少申告加算税は課せられません。
過少申告加算税については以上になります。次回は無申告加算税について詳しく解説します。次回もぜひご覧ください。
それでは今週はこの辺で。
また来週お目にかかります。