ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

寒い日が続いていますが、皆さんお元気でお過ごしでしょうか。
インフルエンザが大流行しているようですので、どうかくれぐれもお気をつけください。

さて、前回予告したとおり、今年は相続以外にもブログテーマとして取り上げていきたいと思いますが、今回は早速「103万円の壁」について、税理士の視点から解説等してきたいと思います。
「103万円の壁」については、最近ニュースでもよく取り上げられていますので、ご存じの方も多いと思いますが、あまり報道されていないこともありますので、その辺りを掘り下げていければと考えています。

なお、話をわかりやすくするために、夫(55歳・会社員・年収850万円)、妻(50歳・パート社員)、子ども(20歳・大学生・アルバイト収入あり)の3人家族のケースで考えていきます。3人とも給与以外の副収入はないものとします。

「103万円の壁」には実は二つの意味があります。

一つ目は、「扶養の範囲で働く」という言い方がありますが、もう少し正確に言うと、夫が配偶者控除を受けるために、妻がパート収入103万円の範囲内で働かなければならないという意味ですね。
同様に、夫(親)が扶養控除を受けるために、大学生の子どもがアルバイト収入103万円の範囲内で働かなければならないというのもそうですね。

今話題となっているのは、主にこちらの意味になります。どちらも控除を受けることができれば、夫(親)の所得税を下げることができます。

二つ目としては、所得税がかからない範囲で働くという意味もあります。こちらは夫(親)ではなく、妻や子ども自身の所得税の話になります。パートやアルバイトの収入が103万円以下であれば所得税はかかりませんし、もし源泉徴収で所得税が天引きされているのであれば、確定申告(還付申告)すれば全額戻ってくることになります。

一つ目の意味と二つ目の意味は連動しているところもあるのですが、今回は一つ目の意味、つまり配偶者控除や扶養控除との兼ね合いで「103万円の壁」について見ていきたいと思います。

103万円と一口に言いますが、この数字はどこから来ているのでしょうか。

配偶者控除を受けるためには、その配偶者の所得が48万円以下でなければなりません。
扶養控除も同様に、子どもの所得が48万円以下でなければなりません。

所得は収入とは違います。給与以外の副収入がありませんので、給与収入から給与所得控除を差し引いたものが、所得となります。給与所得控除は給与収入によって金額が異なりますが、パート・アルバイト収入が約162万円以下であれば控除額は55万円になりますので、給与収入が103万円であれば、103万円ー55万円=48万円が給与所得となります。つまり、所得が48万円以下になるためには、給与収入が103万円以下にならなければならないということです。

もし妻や子どもが控除を受けられないとすると、夫(親)の所得税はどれくらい上がるのでしょうか。
年収850万円の夫の所得税率は20.42%(復興税を含む。)になります。控除額は配偶者が38万円、大学生の子どもが63万円ですので、(38万円+63万円)×20.42%=20万6242円となり、20万円強も所得税が上がることになります。住民税も入れると更に負担が増します。
そんなことになるくらいなら103万円で打ち止めにする、つまり103万円の範囲でしか働かないのも無理はないということになります。まさに「103万円の壁」が立ち塞がっているわけです。

ここで、少し詳しい方なら「おや?」と思われたかもしれません。
上の説明は、大学生の子どもについてはこれで十分ですが、妻についてはこれでは足りません。

実は妻については、配偶者特別控除というものがあります。令和2年からは、妻の所得が48万円を超えたとしても95万円以下であれば、夫は38万円の控除、つまり配偶者控除と同額の控除が受けられるのです。所得が95万円以下ということは、給与収入だと95万円+55万円=150万円までは妻は働いても大丈夫ということになります。したがって妻については既に「103万円の壁」ではなく、「150万円の壁」になっているのですが、こちらについてはまだあまり浸透していないようです。

浸透していない理由は正確にはわかりませんが、社会保険の「106万円(一部中小企業は130万円)の壁」の存在や、会社で支給される扶養手当の支給基準が配偶者控除と同一の103万円以下であるところが多いということも理由としてありそうです。

少し長くなりましたので、今回はこれまでといたします。

次回は「103万円の壁」に対して、政府はどのような対応を考えているのか、昨年末に公表された税制改正大綱の中身を見ていくとともに、それに対する世間の反応、具体的には問題提起した国民民主党の動きや世論調査の結果、そして税理士の視点からは「103万円の壁」をどのように打ち崩していくべきなのかについても、詳しく書いていきたいと思います。


近日中に更新しますので、次回もぜひご覧ください。またよろしくお願いいたします。