ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。
早いもので、もう1月も終わりですね。「1月は行く、2月は逃げる、3月は去る。」などと言いますが、年々月日が経つのが早くなっていると感じます。
さて、今回も「103万円の壁」についてです。前回の続きになりますので、まだお読みになっていない方は、下記のリンクから前回の記事を読んでいただいた後に、お読みください。
「103万円の壁」について①(税理士の視点から)
なお、「103万円の壁」が税法という法律の問題である以上、政治について触れないわけにはいかないのですが、先におことわりしておくと、当ブログ記事は特定の政党や政治家を支持するものでもなければ、批判するものでもありません。あくまでも税理士の視点から「103万の壁」の問題について、各政党や政治家がどのように取り組んでいるのか、客観的に見ていくものになります。その点どうかご承知おきください。
昨年末に「令和7年度税制改正大綱」(以下、「大綱」といいます。)が公表され、閣議決定されました。これを基に新年度の税制改正法案が作成されることになります。先週の金曜日から通常国会が始まっていますが、おそらく今週か来週初めには税制改正法案が国会に提出され、審議が始まるものと思われます。なお、税収は予算の歳入の主要な部分を占めていることから、税制改正法案は予算案とリンクして動くことになります。ちなみに税制改正法案は財務省主税局、予算案は同主計局が担当しています。
「大綱」では「103万円の壁」に関する改正も盛り込まれました。
まず前回ご説明した「103万円の壁」の一つ目の意味、つまり配偶者控除や扶養控除との兼ね合いでは「103万円の壁」は「150万円の壁」まで引き上げられることになりました。
具体的には、大学生世代(19歳以上22歳以下)の子どもに関する扶養控除の特例として「特定親族特別控除(仮称)」なるものの新設が盛り込まれ、前回ご説明した配偶者特別控除と同様に、子どものアルバイト収入150万円までは控除額(63万円)を維持するというものです。
当初の与党案では130万円でしたが、最終的には国民民主党が主張する150万円を丸のみした数字になりました。
前回の例で言うと、妻や子どもの収入が103万円を超えても150万円までは、夫(親)の所得税は変わらないことになり、妻や子どもの「働き控え」がある程度解消されることになります。これは一定程度評価できるかと思います。
次に「103万円の壁」の二つ目の意味、つまり納税者(妻や子ども)自身の所得税については、どうでしょうか。
こちらの「103万円の壁」は「123万円の壁」へと引き上げられることになりました。
内訳は以下の通りです。
基礎控除 48万円→58万円
給与所得控除 55万円→65万円
現在の「103万円の壁」になったのは、平成7年(1995年)のことです。
内訳は、基礎控除38万円・給与所得控除65万円でした。
これが令和元年(2019年)まで続き、令和2年(2020年)に基礎控除が10万円アップし、給与所得控除が10万円ダウンして現在に至っています。
つまり、5年前に内訳は変わりましたが、トータル103万円というのは30年間変わらなかったわけです。それまでは数年ごとに見直しがされて徐々に上がっていました。また、諸外国と比べてもこれほど長い間変わっていないのは異例のことです。
そして123万円というのは、この30年間の物価上昇を勘案して決定したとのことです。
30年間サボっていた?是非はともかく、一応根拠のある数字ではあるということですね。
ただ、国民民主党が主張する178万円(30年間の最低賃金の上昇を根拠とする数字)とはかなりの開きがあります。
具体例で見てみましょう。例えば妻のパート収入が150万円あるとすると、(150万円ー123万円)×5.105%(復興税を含む)=13,700円(百円未満切捨)の所得税がかかります。
住民税についてはどうでしょうか。「大綱」を見る限り、住民税の基礎控除は現行の43万円のままのようですから、所得割(150万円-43万円ー65万円)×10%+均等割5,000円-調整控除2,500円=44,500円となり、所得税と併せると58,200円もの税金がかかります。子どものアルバイト収入も同様です。これでは配偶者特別控除や「特定親族特別控除(仮称)」の効果も薄れてしまいますね。こちらはあまり評価できないところです。
今後どうなるかは見通せませんが、次回は「103万円の壁」はどのくらいまで引き上げるのが妥当なのか、税理士の視点から検討するとともに、最終的にはどの辺りで落ち着くのか、政治や世論の動向も踏まえつつ展望してみたいと思います。近日中に更新しますので、また是非ご覧ください。