ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

最近はインフルエンザだけでなく、ノロウイルスも流行っているようです。ウイルスという目に見えないものを防ぐのは難しいものですね。札幌市保健所では、1月28日から2月10日までノロウイルス食中毒警報を発令しましたが、コロナと同様に、手洗いや消毒など衛生管理をこまめに行うことが基本になるようです。皆さんも
どうかくれぐれもお気をつけください。

さて、今回も「103万円の壁」についてです。これまでの続きになりますので、まだお読みになっていない方は、下記のリンクからこれまでの記事を読んでいただいた後に、お読みください。

「103万円の壁」について①(税理士の視点から)

「103万円の壁」について②(税理士の視点から)

なお、前回も書きましたが、当ブログ記事は特定の政党や政治家を支持するものでもなければ、批判するものでもありません。あくまでも税理士の視点から「103万の壁」の問題について、各政党や政治家がどのように取り組んでいるのか、客観的に見ていくものになります。その点どうかご承知おきください。

今回はまず「103万円の壁」の二つ目の意味、つまり納税者(前回の例では妻や子ども)自身の所得税についてです。前回ご紹介した「大綱」をおさらいすると、「103万円の壁」を「123万円の壁」に引き上げるという内容でした。これは前回の改正(1995年)から30年間の物価上昇を根拠としています。

一見理にかなっているように見えますが、実は問題があります。
123万円の内訳をもう一度見てみましょう。

基礎控除 48万円→58万円
給与所得控除 55万円→65万円

しかし物価上昇というのは、給与所得者だけではなく、全ての人に関係のあることです。

「大綱」によると物価上昇に見合う控除を受けられるようになるのは給与所得者だけで、それ以外の自営業者や年金生活者などは物価上昇の半分しか控除額が増えないことになります。

したがって、物価上昇を根拠とするのであれば、ほとんど全ての人が控除を受けられる基礎控除だけで20万円アップしなければ理屈に合わないことになります。

そして給与所得控除については、国民民主党が主張するように、この30年間の最低賃金の上昇を根拠にするのが合理的だと考えられます。そうすると、「178万円の壁」の内訳は以下のようになります。

基礎控除 48万円→68万円
給与所得控除 55万円→110万円

これで、給与所得者は30年間の最低賃金の上昇に見合った控除を受けられるようになり、給与所得者以外の人は30年間の物価上昇に見合った控除を受けられるようになります。

本来であれば数年ごとに改正すべきところを30年分まとめての改正であることから、引き上げ額はこのように大きくなってしまいますし、必要な財源も増えることになります。地方(住民税分)だけで4兆円、国・地方合わせると7~8兆円必要になるということです。30年分ですから、どうしてもそうなりますね。

私は財政については専門外ですので深くは立ち入りませんが、財源の確保が難しいようであれば、次善の策を考えなければなりません。

それは、とりあえず今回はトータル150万円まで引き上げるというものです。
内訳は以下の通りです。

基礎控除 48万円→68万円
給与所得控除 55万円→82万円

「103万円の壁」の一つ目の意味、つまり夫の所得税における配偶者控除や扶養控除との兼ね合いでは、配偶者特別控除に合わせて「特定親族特別控除(仮称)」の創設により、「150万円の壁」まで引き上げることになりましたが、二つ目の意味である納税者(妻や子ども)自身の所得税もそれに合わせるということです。

前回は、妻や子ども自身の所得税や住民税の負担が重いことから、夫が配偶者特別控除や「特定親族特別控除(仮称)」を受けたとしてもその効果が薄れてしまい、結局妻や子どもの「働き控え」の解消には繋がらないのではないかと、具体例で示しました。

こちらも「150万円の壁」まで引き上げれば、妻や子ども自身に所得税や住民税がかからないことから、「働き控え」の解消に繋がるものと思われます。ただし、社会保険の壁がまだ残っているため、そちらの見直しも行うことが前提となります。

また、政府は数年後に最低賃金時給1,500円という目標を掲げています。
現状では社会保険加入義務のない週19時間働くとすると、年収は1,500円×19時間×52週間=1,482,000円となり、150万円に近い金額になります。

これでもそれなりに財源は必要になりますが、「物価高対策」「実質賃金がプラスとなるような賃上げの後押し」「個人消費の回復」ひいては「日本経済の復活・成長」という政策目標を実現するためには最低限「150万円の壁」までは引き上げるべきではないでしょうか。

安全保障環境の緊迫化に伴い、財源の確保に先立って防衛費の増額を行っていますが、「日本経済の復活・成長」もそれに匹敵する喫緊の課題であると思われます。

長くなりましたので、今回はこれくらいにいたします。
次回は政治や世論の動向について見ていきたいと思っています。
いくら理論的な話をしても、最後は政治や世論で決まることですから、そちらの動きを抑えておくことも大事だと考えています。また是非ご覧ください。