ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。
確定申告業務などもあり、久しぶりの更新となります。大変ご無沙汰してしまい申し訳ありません。

さて、今回も「103万円の壁」についてです。3月31日に税制改正法案が国会で成立し、同日政省令とともに公布され、翌4月1日から施行されています。つまり、正式に決定したということになりますので、その内容について詳しく解説していきたいと思います。

これまでの続きになりますので、まだお読みになっていない方は、下記のリンクからこれまでの記事を読んでいただいた後に、お読みください。

「103万円の壁」について①(税理士の視点から)

「103万円の壁」について②(税理士の視点から)

「103万円の壁」について③(税理士の視点から)

これまでの繰り返しになりますが、当ブログ記事は特定の政党や政治家を支持するものでもなければ、批判するものでもありません。あくまでも税理士の視点から「103万の壁」の問題について、各政党や政治家がどのように取り組んでいるのか、客観的に見ていくものになります。その点どうかご承知おきください。

これまで「103万円の壁」には二つの意味があることをご説明してきました。

一つは、夫(親)が配偶者控除や扶養控除を受けて所得税を減額させるためには、妻(子)のパート(アルバイト)収入が103万円以下でなければならないというものです。
もう一つは、妻(子)自身が所得税を課税されないためには、自身のパート(アルバイト)収入が103万円以下でなければならないというものです。

まず一つ目の夫(親)が配偶者控除や扶養控除を受けて所得税を減額させるためには、妻(子)のパート(アルバイト)収入が103万円以下でなければならないという点についてです。

実は妻については、既に配偶者特別控除という制度があり、パート収入が160万円(昨年までは150万円)までであれば夫は配偶者控除と同額の控除を受けることができます。
そして今回の改正で特定親族特別控除というものが新設され、19歳以上23歳未満の子のアルバイト収入が150万円までであれば親は扶養控除と同額の控除を受けることができます。

これにより、妻(子)が働き過ぎて夫(親)が控除を受けられなくなり、所得税額が増えてしまうという問題については、一定程度解消されたことになります。これについては、評価に値する改正であったかと思います。

もう一つは、妻(子)自身が所得税を課税されないためには、自身のパート(アルバイト)収入が103万円以下でなければならないという点についてです。こちらは色々と揉めた末に、原案から修正が入りました。

まず、所得税の恒久的な措置としては以下のようになりました。

基礎控除 48万円
→給与収入200万円以下(他に所得なし)の場合 95万円 
  上記以外(給与収入200万円超など)の場合   58万円

給与所得控除 55万円→65万円

つまり、「103万円の壁」が「160万円(=95万円+65万円)の壁」になったということですね。
ただ、注意を要するのは住民税(所得割)についてです。

住民税(所得割)については、これまでは「100万円の壁」になっていました。
単純計算では基礎控除43万円(所得税より5万円少ない)+給与所得控除55万円(所得税と同じ)=98万となりますが、地方税の附則というところで所得が45万円以下であれば非課税とされていますので、45万円+給与所得控除55万円=100万円という計算になっていました。

今回住民税については財源の問題もあり、基礎控除は43万円のまま据え置きとなり、給与所得控除だけが所得税と同様10万円増額されましたので、45万円+65万円=110万円となり、「110万円の壁」ということになりました。

したがって、妻自身に所得税が課税されず、夫も配偶者特別控除が満額受けられるということで今年160万円まで働いたら、来年の住民税は所得割(160万円ー43万円ー65万円)×10%+均等割5,000円-調整控除2,500円=54,500円もかかることになります。

また、子ども自身に所得税が課税されず、親も特定親族特別控除が満額受けられるということで今年150万円まで働いたら、来年の住民税は所得割(150万円ー43万円ー65万円)×10%+均等割5,000円-調整控除2,500円=44,500円もかかることになります。

住民税は市役所等から納税通知書が送られてきて初めてわかりますから、まさに青天の霹靂ということになります。社会保険の「106万円の壁」や「130万円の壁」も温存されたままですし、これでは安心して働くことは難しいですね。こちらについてはあまり評価できないと言わざるを得ません。

少し長くなりましたので、今回はここまでといたします。
次回は今回の続きで、物価高対策として今年と来年の2年間限定で措置された改正点について解説します。またぜひご覧ください。