ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

近年は往年の名ミュージシャンの訃報が相次ぎ、時の流れをひしひしと感じますが、今年に入ってからも訃報が続いています。個人的に思い出深いのは1月11日に亡くなったドラマー・ヴォーカリストの高橋幸宏です。一番有名なのはやはりYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)のメンバーだったことですね。YMOが出てきたときの衝撃は今でも忘れられません。テクノという音楽ジャンルを日本に定着させたのは間違いなくYMOですね。また、サディスティック・ミカ・バンドも初期の頃から再結成・再々結成とほぼ全期間に渡って関わっています。YMOはどちらかというと癌で闘病生活を送っている坂本龍一の方が心配だったのですが、まさか高橋幸宏が先に亡くなるとは思いませんでした。これでもうYMOが見られなくなるかと思うと寂しい気がしますね。しかし数々の名曲・名演奏は永遠に残ります。御冥福を心からお祈りいたします。

それでは本題に入って参りましょう。今回は令和5年度税制改正大綱のうち災害税制の整備についてです。最近は災害が頻発しているため、それに対応する税制の整備が進んでいますが、今回の改正もその一環です。当連載の第2回目で相続時精算課税制度の見直しについて取り上げましたが(下記リンク先参照も併せてご覧ください。)、その中で次のように記載いたしました。

令和5年度税制改正その2(相続時精算課税制度の見直し)

相続時精算課税制度とは、一定の要件を満たす直系尊属である贈与者が一定の要件を満たす推定相続人または孫である受贈者に対して生前贈与をした場合において、当該受贈者が贈与税の期限内申告時に当該贈与者に係る相続時精算課税選択届出書を提出したときは、その提出以後は当該贈与者からの生前贈与については暦年課税に代えて生涯累計2,500万円までの特別控除が適用され、贈与者の相続時にその生前贈与を相続等によるものとみなして相続財産に加算して相続税額を計算するというものです。なお、贈与税額は相続税額から控除されます。

ここで相続財産に加算するときの価額は贈与時の価額となります。相続時の価額ではありません。つまり現状では災害で被害を受けてもそのことは考慮されません。しかしそれでは被災者の相続税の負担が過重であるということで、租税特別措置法に次のような条文が設けられることになりました。

(相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例)
第七十条の三の三
相続税法第二十一条の九第五項に規定する相続時精算課税適用者(第三項において「相続時精算課税適用者」という。)が同条第五項に規定する特定贈与者からの贈与により取得した土地又は建物が、当該贈与を受けた日から当該特定贈与者の死亡に係る同法第二十七条第一項の規定による期限内申告書の提出期限までの間に災害(震災、風水害、火災その他政令で定める災害をいう。以下この項において同じ。)によつて相当の被害として政令で定める程度の被害を受けた場合(当該相続時精算課税適用者(同法第二十一条の十七又は第二十一条の十八の規定により当該相続時精算課税適用者に係る権利又は義務を承継した当該相続時精算課税適用者の同法第二十一条の十七第一項に規定する相続人を含む。第三項において同じ。)が当該土地又は建物を当該贈与を受けた日から当該災害が発生した日まで引き続き所有していた場合に限る。)において、当該相続時精算課税適用者が、政令で定めるところにより贈与税の納税地の所轄税務署長の承認を受けたときにおける同法第二十一条の十五及び第二十一条の十六の規定の適用については、同法第二十一条の十五第一項中「価額から」とあるのは「価額(当該財産のうち租税特別措置法第七十条の三の三第一項(相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例)に規定する災害によつて被害を受けた土地又は建物にあつては、当該価額から当該被害を受けた部分に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額)から」と、同法第二十一条の十六第三項第二号中「価額」とあるのは「価額(当該財産のうち租税特別措置法第七十条の三の三第一項(相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例)に規定する災害によつて被害を受けた土地又は建物にあつては、当該価額から当該被害を受けた部分に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額)」とする。 

2 前項の規定の適用がある場合における相続税法第四十九条の規定の適用については、同条第一項第二号中「贈与税の課税価格」とあるのは、「贈与税の課税価格(租税特別措置法第七十条の三の三第一項(相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例)に規定する災害によつて被害を受けた土地又は建物にあつては、同項の規定により読み替えて適用する第二十一条の十五第一項又は第二十一条の十六第三項第二号に規定する残額)」とする。 

3 前二項の規定は、相続時精算課税適用者が第一項の土地又は建物について災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(昭和二十二年法律第百七十五号)第四条又は第六条第二項の規定の適用を受けようとする場合又は受けた場合は、適用しない。 

4 前項に定めるもののほか、第一項及び第二項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

条文も読むのはなかなか大変だと思いますが、相続時精算課税制度により土地又は建物の贈与を受けた場合において、その後相続税の申告期限までに災害により一定程度の被害を受けたときは、税務署長の承認があれば贈与時の価額から一定の被災額を控除できるようになります。ただし、贈与日から災害発生日まで当該土地又は建物を所有し続けていることが要件です。災害発生前に譲渡等で手放してしまった場合はこの規定の適用は受けられませんので、注意してください。政令に委任されている事項もありますので、詳細がわかるのは法案成立後の3月末以後になります。この改正は令和6年1月1日以後に土地又は建物が災害により被害を受ける場合について適用されます。

災害税制については以上になります。
次回も令和5年度税制改正について解説しますので、またぜひご覧ください。