ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

今年の夏は豪雨、猛暑、そして異例の逆コースを辿った台風12号など、異常気象が続いていますね。被災等された皆様方には心よりお見舞い申し上げます。それと健康管理にはくれぐれもお気を付けください。私も体調には十分に気を付けたいと思います。

それでは早速本題に入って参りましょう。今回は小規模宅地等の特例のうち、貸付事業用宅地等についてお話ししていきたいと思います。貸付事業用宅地等に該当すると、原則として200㎡までは課税価格が50%の減額になります。限度地積や減額幅は特定居住用宅地等に比べて小さいのですが、それでも地積200㎡で相続税評価額が3,000万円の貸付事業用宅地等であれば、1,500万円もの減額となり、課税価格は半分の1,500万円まで下がります。適用税率が最低の10%だとしても150万円の節税になり、一番多い適用税率だと思われる15~30%であれば225万円から450万円もの節税になるわけです。こちらも非常に重要な特例であることがお分かり頂けるのではないかと思います。適用要件をしっかりと確認し、適用漏れがないように十分注意しなければなりません。

もう少し詳しく見ていきましょう。

貸付事業用宅地等とは、

①被相続人等(被相続人又は当該被相続人の生計同一親族)の貸付事業(不動産貸付業・駐車場業・駐輪場業等。)の用に供されていた宅地等で、

②一定の要件を満たす当該被相続人の親族が、


③相続又は遺贈により取得したもののうち

④一定のもの

をいいます。

それでは順番に見ていきましょう。

①は被相続人等の貸付事業の敷地等であったということですが、具体的には被相続人等が経営していた賃貸アパート・マンション等の敷地等になります。貸駐車場も一般的には該当しますが、注意しなければならないことがありますので、その点については次回以降詳しく解説します。

②の「一定の要件」は、具体的には次の2つです。原則として2つとも満たさなければなりません。

イ 相続開始時から相続税の申告期限まで宅地等の保有を継続していること(保有継続要件)。
相続等により取得した宅地等を申告期限までに売却等してしまうと、小規模宅地等の特例の適用が受けられなくなってしまいますので、十分注意してください。

ロ 相続開始時等から相続税の申告期限まで貸付事業を承継・継続していること(事業継続要件)。
申告期限まで宅地等は保有していたとしても、貸付事業をそれまでにやめてしまえばやはり小規模宅地等の特例の適用が受けられなくなってしまいますので、十分注意してください

③は特定居住用宅地等と同様に「相続又は遺贈により」となっていますので、生前贈与は適用不可(相続時精算課税であっても不可)であることに注意します。ただし死因贈与は相続税法上は遺贈と同様の取り扱いになりますから、死因贈与であれば適用可能です。

④の「一定のもの」についてですが、まず特定同族会社事業用宅地等は貸付事業用宅地等から除かれます。特定同族会社事業用宅地等については後日詳しくご説明する予定ですが、被相続人等が同族会社に宅地等を貸し付けている場合で一定の要件を満たすときに特定同族会社事業用宅地等に該当します。つまり、特定同族会社事業用宅地等も同族会社に宅地等を貸し付けているという意味では貸付事業用宅地等の一種ですが、一定の要件を満たせば特定同族会社事業用宅地等として貸付事業用宅地等よりも更に優遇しようというものになります。そのようなわけで、貸付事業用宅地等からは特定同族会社事業用宅地等は除かれています。

平成30年3月31日以前の相続等であれば基本的にこれだけだったのですが、平成30年4月1日以後の相続等からは税制改正により相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は原則として貸付事業用宅地等には該当しないことになりました。これは、相続開始直前に更地等に賃貸アパート等を建築し、小規模宅地等の特例等を受けることで相続税額を減らすという相続対策を封じるものです。なお、平成30年3月31日以前に新たに貸付事業の用に供された宅地等は、上記にかかわらず貸付事業用宅地等に該当するという経過措置が設けられています。

ただし、被相続人等が相続開始前3年を超えて特定貸付事業(事業的規模の貸付事業)を行っていたときは、例外的に貸付事業用宅地等に該当します。例えば、もともと賃貸アパート(10室以上)の経営をしていた被相続人等が2棟目の賃貸アパートを建築し貸付事業の用に供した場合は、この例外により2棟目の賃貸アパートの敷地等も貸付事業用宅地等に該当し得ます。これは相続対策で2棟目のアパートを建てたというよりも貸付事業の拡大を目指したものと考えられるからです。なお、事業的規模の貸付事業とは貸家(戸建)であれば5棟以上、アパート等であれば10室以上の貸付を行う事業を指します。もともとの貸付事業が事業的規模であるか否かによって小規模宅地等の特例の適用の可否が変わってくる可能性がありますので、十分に注意してください。

それでは今回はここまでといたします。次回も貸付事業用宅地等について引き続き解説していきます。次回もぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また再来週お目にかかります