ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

今年はプロ野球の話題を書くタイミングを逃してしまい、気がつくと日本シリーズの季節になっていました。判官贔屓の日本人気質を持つ私としては広島カープ34年ぶりの日本一を見たいところですが、果たしてどうなるでしょうか。我らが北海道日本ハムファイターズは3位でしたが、大谷翔平選手がメジャーに移籍し、抑えの増田浩俊投手もオリックスに移籍して前評判が低かったことを考えると上々の結果だったと思います。札幌ドームの開幕シリーズで西武ライオンズに3連敗した時は今年はどうなることかと思いましたが、栗山監督はやはり名将ですね。清宮幸太郎選手も1年目からその片鱗を見せてくれましたし、ドラフトでは金足農の吉田輝星投手の入団も決まりました。来年も若い選手が躍動するファイターズに期待したいと思います。

それでは本題に入って参りましょう。今回は小規模宅地等の特例のうち、前回の特定事業用宅地等の法人版ともいえる特定同族会社事業用宅地等についてこれから見ていきたいと思います。特定同族会社事業用宅地等に該当すると、特定事業用宅地等と同様、原則として400㎡までは課税価格が80%の減額になります。こちらも非常に重要な特例です。それでは詳しく見ていきましょう。

特定同族会社事業用宅地等とは、

①被相続人及び当該被相続人の親族その他当該被相続人と特別の関係にある者(内縁の妻・夫等)が発行済株式等の50%超を保有する法人の

②貸付事業以外の事業の用に供されていた宅地等で、

一定の要件を満たす当該被相続人の親族が、

④相続又は遺贈により取得したもの

をいいます。

それでは順番に見ていきましょう。

①は特定同族会社の要件です。要するに特定同族会社とは被相続人及びその親族等が経営を支配している会社ということになります。特定事業用宅地等と違うのは、特定事業用宅地等では被相続人又はその生計同一親族が直接その宅地等の上で個人事業を行っているのに対して、特定同族会社事業用宅地等では特定同族会社が被相続人から宅地等を有償で借り受け、事業を行っている点です。つまり、被相続人等は特定同族会社を通じて間接的に事業を行っていることになります。

また、もう一つ重要なのは特定同族会社が被相続人から宅地等を有償で借り受けているということです。被相続人から見れば宅地等を有償で貸しているわけですから、本来であれば貸付事業用宅地等に該当するはずです。ただ上記のように特定事業用宅地等とは被相続人等が事業を直接行っているか間接的に行っているかだけの違いですので、実質的には特定事業用宅地等と何ら変わりがありません。そこでこの場合は特定同族会社事業用宅地等として特定事業用宅地等と同様、400㎡まで課税価格80%の減額を認めているわけです。

②では特定同族会社が行う事業から貸付事業が除かれています。これは特定事業用宅地等で貸付事業が除かれているのと同様です。したがって、特定同族会社がアパート経営等の貸付事業を行っている場合は特定同族会社事業用宅地等には該当しません。ただし、被相続人が宅地等を有償で貸していることに変わりはありませんから、貸付事業用宅地等(200㎡まで課税価格50%の減額)には該当し得ます。つまり、特定同族会社事業用宅地等特定事業用宅地等の法人版であると同時に、貸付事業用宅地等の特例という側面もあるということになります。

なお、特定同族会社事業用宅地等に該当する場合でも、貸付事業用宅地等に該当する場合でも、相続税の申告期限まで特定同族会社が事業を継続している必要(事業継続要件)がありますので、注意してください。

また、特定同族会社が被相続人から宅地等を有償ではなく無償(固定資産税相当額等の低廉な地代も含みます。)で借り受けている場合は、そもそも貸付事業用宅地等に該当しませんから、その特例である特定同族会社事業用宅地等にも該当しないということになります。ここは注意が必要です。

③の「一定の要件」は、具体的には次の2つです。原則として両方とも満たさなければなりません。特定同族会社事業用宅地等特有の要件はロになります。

イ 相続開始時から相続税の申告期限まで宅地等の保有を継続していること(保有継続要件)。
相続等により取得した宅地等を申告期限までに売却等してしまうと、小規模宅地等の特例の適用が受けられなくなってしまいますので、注意する必要があります。

ロ 相続税の申告期限において特定同族会社の役員であること(法人役員要件)。
法人役員要件を満たさない場合は、特定同族会社事業用宅地等には該当しませんが、貸付事業用宅地等に該当する可能性はあります。ただし、貸付事業用宅地等に比べて特定同族会社事業用宅地等の方がはるかに有利ですから、その点に注意する必要があります。

④ではこれまでの特例と同様「相続又は遺贈により」となっていますので、生前贈与は適用不可(相続時精算課税であっても不可)です。ただし死因贈与は遺贈と同様の取り扱いになりますから、適用可能です。

特定同族会社事業用宅地等については以上になります。次回からは複数の特例が適用可能な場合や申告に当たって注意すべき点などについて解説します。次回もぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また再来週お目にかかります