ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

最近は大雪は一段落しましたが、凄く寒いですよね。路面がツルツルなので足元には十分注意してください。見通しが悪いので車の運転も要注意ですね。この頃はインフルエンザやノロウイルスなども流行っていますし、いつも以上にうがい手洗いを励行しています。部屋が暖房で乾燥していますので、時々換気することも必要ですね。北海道の冬は何かと大変ですが、これからがいよいよ本番です。生活の知恵を駆使して乗り切っていきましょう。

それでは本題に入って参りましょう。今週も先週に引き続いて平成29年度税制改正大綱について取り上げます。前回はタワーマンションを取り上げましたが、今回も不動産に関するもので広大地評価の見直しについて見ていきたいと思います。広大地と言ってもピンとこない方も多いかと思いますので、まずは広大地についてご説明いたします。とはいっても、広大地は相続税等の土地評価の中でも最難関の部類に入りますので、詳しく書くと膨大な量になってしまいます。ここでは概略だけ簡単にご説明したいと思います。

広大地というのはその名の通り広くて大きい土地のことですが、具体的には概ね1,000㎡(三大都市圏は500㎡)以上の宅地で、一定の要件を満たすものをいいます。宅地ですから、建物が建てられる土地であるというのが大前提です。そしてこの一定の要件を満たすと、評価額が最大で65%も減額になります。非常に大きいですよね。ただ減額幅が大きいので、広大地に該当するか否かで税務署と争いになることも多いです。

ではなぜこれほど大きな減額幅になるのでしょうか。それは広大地という土地が持つ性質が大きな鍵を握っています。広大地というのは、簡単に言うと戸建住宅の開発に一番向いている土地で、開発道路を入れる必要があるものを言います。この広さの土地になると、道路に面していない奥まった土地に住宅が建つこともあり、そうなるとこのままでは出入りすることができません。そこで一番近い道路に出るための道路が必要になります。これが開発道路です。

そして開発道路の部分には当然建物は建てられませんから、土地の価値としては著しく下がります。これを潰れ地と言うのですが、開発業者にこのような土地を売るときは原則として潰れ地の部分は除外した地積で売却価額が決まることになります。つまり広大地になると土地の単価が大きく下がるんですね。そこでそれを広大地の評価額にも反映させているということになります。

広大地というのはこのような特徴がある土地になります。広大地は要件の判定が非常に難しく、税務署とも広大地の要件を満たしているか否かで見解の相違が生じることが多いのですが、ひとたび広大地に該当するということになれば評価額の算出自体はとてもシンプルです。具体的には下記の算式に当てはめて計算します。

広大地の評価額=路線価×地積×広大地補正率(0.6-0.05×地積/1,000㎡) 
※ただし、広大地補正率は最低0.35となる。

もし、地積1,000㎡の広大地だとすれば、広大地補正率は0.6-0.05×1,000/1,000=0.6-0.05=0.55となり、通常の土地に比べて45%の減額になります。これが地積5,000㎡以上の広大地になると、広大地補正率は0.6-0.05×5,000/1,000=0.6-0.25=0.35となり、通常の土地に比べて65%もの減額になるというわけです。

このように広大地評価額は地積の大きさだけで決まります。この方式だと土地の形状は一切考慮されません。というよりも、広大地補正率にほとんど全ての要素をコミコミにしているのです。これは広大地評価の変遷の歴史とも深い関わりがあるのですが、これも書き始めると長くなりますので今日のところは割愛いたします。ただ、紆余曲折を経て平成16年改正で今のようなシンプルな算式になったというわけです。

しかし、実際の土地の取引価額(時価)は地積の大きさだけでなく、形状の良し悪し等によっても大きく左右されます。土地の形状によっては時価と広大地評価額との間に大きな乖離が生じることもあり、課税の公平上問題があると指摘されてきました。そこで今回の改正では、土地の形状も考慮に入れた形で広大地の評価を見直すこととなったわけです。具体的には以下の算式になります。

広大地の評価額=路線価×地積×形状(不整形・奥行)を考慮した補正率×規模格差(地積)を考慮した補正率

このように補正率が形状を考慮したものと、地積を考慮したものと2つになるわけです。なお、現時点では補正率の具体的な算出方法等はまだ公表されていません。今回はあくまでも考え方が示されたということです。この改正は平成30年1月1日以降の相続(遺贈)・贈与から適用されますので、それに合わせた形で今後具体的な情報が出てくるものと思われます。また目新しい情報が出てきたら、当ブログでお知らせする予定です。

この改正による影響はもう少し情報が出てこないと何とも言えないのですが、広大地評価の適正化という今回の改正の趣旨から考えて、今よりも評価額が高くなる広大地が多くなる可能性があります。一昨年の基礎控除の引き下げに比べると地味な改正ですが、相続財産に少し広めの土地がある場合は非常に大きな影響が出ると思われますので、とても大きな改正だと言えます。これからの動きを注視する必要がありますが、今後は不動産鑑定による評価も視野に入れるべきケースが増えそうです。

広大地評価の見直しについては以上になります。次回も平成29年度税制改正大綱のうち相続に関係するものについて引き続き解説する予定です。来週もぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また来週お目にかかります。