ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

先週雪も一段落しましたね、と書いた途端にまたもや凄い雪になってしまいました。皆さんの地域は大丈夫でしたでしょうか。今年の冬は本当に大変ですが、なんとか乗り切っていきましょう。最近は日が長くなってきたので、少しずつ春に近づいているようにも思います。

それでは本題に入って参りましょう。今週も引き続き平成29年度税制改正大綱について取り上げます。今回は相続税・贈与税の納税義務の見直しについてです。先週の広大地同様、こちらもこれだけではピンとこないかと思いますので、まずは相続税・贈与税の納税義務が現状どのようになっているかについて詳しく見ていきたいと思います。

相続税・贈与税は原則として全世界財産課税です。つまり、被相続人等の財産が国内にあろうが海外にあろうが基本的には全ての財産について相続税・贈与税が課税されるということです。ただしこれには一定の例外があり、その例外に該当すると海外財産には課税されず、国内財産のみに相続税・贈与税が課税されることになっています。なお、海外財産は税法用語上は国外財産が正式名称になりますが、紛らわしくなるのを避けるために便宜上ここでは海外財産と呼ぶことにいたします。

そしてその例外は大きく分けて次の2パターンになります。
①被相続人等が海外に居住していて、相続人等(日本国籍なし)も海外に居住している場合
②被相続人等・相続人等(日本国籍あり)がともに海外に居住していて、かつ被相続人等・相続人等ともに海外在住が5年超である場合

※被相続人等とは被相続人及び遺贈者のことを言い、相続人等とは相続人及び受遺者のことを言います。贈与税の場合には、被相続人等を贈与者と、相続人等を受贈者と読み替えてください。

これを見て頂ければわかるように、被相続人等が国内に居住していれば必ず全世界財産課税になります。そして被相続人等については国籍は問いません。よく相続対策で海外に財産を移すという話を耳にしますが、被相続人等が国内に住み続けている限り残念ながらこれは徒労に終わることになります。

平成25年3月までは被相続人等が国内に住んでいても一定の場合は海外に財産を移すというのは相続対策として有効な手段だったのですが、武富士事件及び中央出版事件という海外財産の贈与に対する贈与税の課税を巡る2つの裁判が契機となって、納税義務が段々と厳しくなり、平成12年度改正及び平成25年度改正で被相続人等が国内に住んでいる場合には海外に財産を移すという相続対策の手法は使えなくなりました。

したがって、海外財産に課税されたくなければ被相続人等が生前に海外に移住することが必須となります。これだけでもなかなかハードルは高そうですが、まだ条件があります。まず①から見ていきましょう。①は日本国籍がない相続人等が海外に居住している場合になります。例えば被相続人等の子どもが外国人と結婚して海外に移住し、日本国籍を離脱して現地の国籍を取得したような場合です。

次に②ですが、こちらは相続人等が海外に移住したものの日本国籍は離脱していない場合などが該当します。②については①よりも更に厳しくなっていて、被相続人等・相続人等ともに相続開始時点で海外に移住してから5年超が経っているという条件が付加されています。

そして今回の改正では①については、被相続人等が相続開始時点で10年超海外に在住しているという条件が付加され、②については5年が10年に延びました。つまり海外財産に課税しない例外は次の2パターンに変わることとなりました。

①被相続人等が海外に10年超居住していて、相続人等(日本国籍なし)も海外に居住している場合
②被相続人等・相続人等(日本国籍あり)がともに海外に居住していて、かつ被相続人等・相続人等ともに海外在住が10年超である場合

現在でも十分厳しい気がしますが、何かこのような改正をしなければならない事情があったのでしょうか。いずれにしましても、当ブログの読者の方に知っておいて頂きたいのは、海外に財産を移すことによって相続税・贈与税の課税を免れるというのは至難の業だということです。相続対策は他にも色々と方法があります。当ブログでも今までいくつかご紹介してきましたが、今後も相続対策についての記事を発信していくつもりですので、これからもぜひご覧ください。

なお、今回の改正は平成29年4月1日以降の相続・遺贈・贈与から適用されます。また他にも、外国人である被相続人等や相続人等が勤務の都合等で日本に一時的に滞在している場合は、国内財産のみに課税するという改正も行われています。納税義務の見直しについては以上になります。

次回も平成29年度税制改正大綱のうち相続に関係するものについて引き続き解説する予定です。来週もぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また来週お目にかかります。