ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

今週は第68回さっぽろ雪まつりが開催されています。私は今年も繁忙期のため行けないのですが、ピコ太郎さんの雪像が本人そっくりだと話題になっているようです。日曜日まで開催されていますので、お時間のある方はぜひ会場まで足を運んでみてください。

それでは早速本題に入って参りましょう。今週も先週に引き続いて非上場株式等の評価の見直しについてです。前回は見直しの背景と趣旨についてご説明しました。今回は改正対象である類似業種比準方式の改正前の評価方法と、今回改正になる点について詳しく見ていきたいと思います。

まず改正前の類似業種比準方式についてですが、次のような算式になっています。

類似業種の株価×{ (自社の配当÷類似業種の配当+自社の利益÷類似業種の利益×3+自社の簿価純資産÷類似業種の簿価純資産)÷5 }×斟酌率
※斟酌率は大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5

このようにとても複雑な算式になっていますが、この算式の意味合いとしてはまず類似業種(上場企業)の株価を基準として、それを自社に合わせて修正しているということになります。修正の基準としては配当・利益・簿価純資産の三要素が使われています。そして最後に上場企業と非上場企業(自社)の格差を考慮して斟酌率を掛けます。斟酌率は会社の規模によって三段階に分かれます。

この算式で目を引くのは利益の比率だけが3倍になっていることです。つまり自社株の評価額を算出するに当たっては、配当及び簿価純資産に比べて利益をより重視しています。したがって、ここ1~2年の業績が好調な企業は自社株の評価額もより高く算出されることになります。しかしこの方法では、業績が好調な企業の事業承継がより困難になるという指摘がありました。そこで次の算式に改正されることとなったわけです。

類似業種の株価×{ (自社の配当÷類似業種の配当+自社の利益÷類似業種の利益+自社の簿価純資産÷類似業種の簿価純資産)÷3 }×斟酌率
※斟酌率は大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5

このように改正後は利益の比率も配当及び簿価純資産の比率と同じになりました。改正と書きましたが実は平成11年12月31日より以前は斟酌率が0.7で一律だったことを除けば基本的にこの算式でしたので、約17年ぶりに元に戻るということになります。これにより業績好調な優良企業の株価が下がることが見込まれます。ただし含み損を抱えている不動産を売却するなどして利益を圧縮し、自社株の評価額を下げたタイミングで自社株を贈与するといった手法も改正前ほどは効果がなくなるといった副作用もあります。

算式そのものの改正は上記の通りですが、内容についてもいくつか見直しがされています。まず類似業種の株価ですが、改正前は次のうち最も金額が低いものを採用することになっていました。

・相続開始当月の株価
・相続開始前月の株価

・相続開始前々月の株価
・相続開始前年の平均株価

改正後はここに新たにもう一つ加わります。

・相続開始月以前2年間の平均株価

この改正の意味としては、近年株価が乱高下する現象がまま見られることから、実態をより正確に反映した株価として2年間という今までよりも長期間の平均を取れるようにしたということです。もちろん2年間の平均株価よりも他の4つのいずれかの株価の方が低いのであれば、今まで通りそちらを採用することができます。つまり選択肢が一つ増えたということですね。

また、類似業種の配当・利益・簿価純資産についてですが、改正前は企業単体の数値を使っていましたが、改正後は連結決算の数値を反映させることになりました。この影響はわかりにくいのですが、前回お話ししたように改正の趣旨を考えますと、自社株の評価額は基本的に下がる方向の改正になるのではないかと予想されます。

そして最後に自社の会社規模の判定にあたって、今までより大会社及び中会社を増やすこととなりました。これは斟酌率という点では不利な改正になりますが、ではなぜそのように改正するのでしょうか。これは今回取り上げている類似業種比準方式だけでなく、前回ご紹介したもう一つの評価方法である純資産価額方式も関連してきます。

詳しく書くと長くなるので簡潔にご説明しますと、一般的に類似業種比準方式よりも純資産価額方式の方が自社株の評価額は高く算出される傾向にあります。そして小会社の場合だとその高い方の評価方法である純資産価額方式が原則として適用されます。例外として類似業種比準方式も併用できますが、併用割合はそれぞれ50%ずつです。

一方で大会社に分類されると、評価方法としては原則として有利になる類似業種比準方式が適用されます。また、中会社の場合はその規模によって更に三段階に分かれますが、原則として併用方式が適用され、併用割合は類似業種比準方式が60~90%、純資産価額方式が40~10%となり、小会社よりも評価方法としては有利になります。

したがって、会社規模が今までよりも大きいものと判定されることによって、類似業種比準方式による自社株の評価額が高くなるというデメリットもありますが、それよりも純資産価額方式の併用割合が下がる(あるいはなくなる)メリットの方がより大きいと見て、このような改正になったものと思われます。

なお、今回の改正は平成29年1月1日以降の相続・遺贈・贈与から適用されますので、既に適用が始まっているということになりますね。厳密に言うとまだ国会で税制改正法案が通っていませんので、3月末に予定される税制改正法案の成立をもって今年の1月に遡って適用されるということになります。まだ細かい部分が判明していないところもありますので、また新たな情報が入ってきたら続報でお知らせしたいと思っています。非上場株式等の評価の見直しについては以上です。

次回は平成29年度税制改正大綱の最終回になります。相続に関係する部分を引き続き解説する予定です。来週もぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また来週お目にかかります。