ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

先日将棋の竜王戦で挑戦者の羽生善治棋聖が竜王を奪取し、ついに永世七冠の偉業を成し遂げましたね。国民栄誉賞の受賞も決まりました。これでタイトル獲得は99期となり、100期の大台まであと1期となりました。大山康晴15世名人の通算最多勝利(1433勝)の更新もあと40勝余りまで迫っていますし、これからもまだまだ大記録の達成を見ることができそうです。この度は本当におめでとうございます!これからもご活躍を期待しています。

それでは本題に入って参りましょう。今回から来年度の税制改正大綱について相続関連のものをピックアップして順次解説していきます。今回は小規模宅地等の特例の見直しについてです。小規模宅地等の特例とは、居住用・事業用・貸付用などで一定の要件を満たした宅地等を相続等により取得した場合、相続税の計算上一定の面積まで5割ないし8割の課税価格の減額を受けられる制度です。今回の改正は居住用と貸付用に関する内容になります。いずれも納税者にとっては厳しくなる改正内容です。

まず居住用については、原則として配偶者や同居親族等が相続等により取得した場合に小規模宅地等の特例の適用が受けられますが、例外的に同居していない親族の場合でも、相続開始前3年以内に取得者である相続人等本人又はその配偶者の持ち家に住んでいないなど一定の要件を満たせば小規模宅地等の特例の適用が受けられます。いわゆる「家なき子」と呼ばれているものです。この「家なき子」の要件が厳しくなり、下記の者は平成30年4月1日以後の相続等については「家なき子」から除外され、小規模宅地等の特例の適用が受けられなくなります。

①相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係にある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者
②相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者

この改正の背景には、持ち家を親族や資産管理会社等に贈与・売却等により譲渡し、引き続き賃貸により居住し続けることによって小規模宅地等の特例を受ける要件を満たすといったような租税回避行為が散見されるといったことがあります。これは相続人等の生活基盤を守るという小規模宅地等の特例の趣旨に反するため、それを封じる目的でこのような改正がされることとなりました。ただ、経済的な事情でやむなく持ち家を譲渡した場合でも小規模宅地等の特例が受けられなくなる可能性があり、納税者にとって厳しい改正であることは間違いありません。

次に貸付用についてですが、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等は、平成30年4月1日以後の相続等については原則として小規模宅地等の特例が受けられなくなります。この改正は相続対策と称して相続開始直前に空地に賃貸アパートを建築する等の租税回避行為が散見されるため、それを封じるのが目的です。しかしこちらも空地を有効活用する目的で賃貸アパートを建築した後、被相続人が急死したような場合でも小規模宅地等の特例が受けられなくなりますから、納税者にとって非常に厳しい改正であると言えます。

ただし、相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている者が当該貸付事業の用に供している宅地等については、これまで通り小規模宅地等の特例が受けられます。これは相続対策で急遽賃貸アパートを建築したというわけではなく、アパート貸付などの賃貸事業で生計を立てていることが明らかであり、租税回避行為には当たらないからです。なお、事業的規模とは5棟10室基準というものがあり、一戸建ての貸家の場合は5棟以上、アパート等の集合住宅の場合は10室以上の貸付を指します。

また経過措置として、平成30年3月31日以前から貸付事業の用に供されている宅地等については、従来通り小規模宅地等の特例が受けられることとなっています。

小規模宅地等の特例の見直しについては以上になります。今年のブログ更新はこれで最後になります。今年1年ご愛読頂きまして誠にありがとうございました。来年も相続に関する有益な情報を提供して参りますので、引き続きご愛読頂きますよう何卒よろしくお願いいたします。

それでは今年はこの辺で。
また来年お目にかかります
良いお年をお迎えください。