ホームページをご覧の皆さん、あけましておめでとうございます。
税理士の臼井です。
今年もよろしくお願いいたします。

新年早々残念な訃報がありました。プロ野球の星野仙一元監督がお亡くなりになりましたね。3球団で優勝監督になったのは星野監督(中日・阪神・楽天)、三原脩監督(巨人・西鉄・大洋)、西本幸雄監督(大毎・阪急・近鉄)の3人しかいませんし、セ・パ両リーグで優勝監督になったのも星野監督、三原監督、水原茂監督(巨人・東映)、野村克也監督(南海・ヤクルト)、広岡達朗監督(ヤクルト・西武)の5人しかいませんので、プロ野球の歴史に残る名監督であったと言えるかと思います。星野監督は現役時代から見ていましたので、また一つの時代が終わったようで寂しい気がします。星野監督、長い間本当にお疲れ様でした。

それでは本題に入って参りましょう。前回から平成30年度の税制改正大綱について相続関連のものをピックアップして順次解説しています。今回は一般社団法人・一般財団法人に対する相続税等の課税強化についてです。とは言ってもこれだけではピンとこない方も多いかと思いますので、まずは一般社団法人・一般財団法人とは何かについてご説明していきます。

平成20年に公益法人制度改革が行われ、それまでの社団法人・財団法人は公益社団法人・公益財団法人と一般社団法人・一般財団法人に分かれることになりました。公益社団法人・公益財団法人は公益認定を受ける必要があり、厳格な基準・審査があります。それに対して一般社団法人・一般財団法人は基本的に登記だけで簡単に設立できるようになっています。そして一般社団法人・一般財団法人はさらに非営利型と非営利型以外に分かれますが、非営利型には一定の要件があり、非営利型に該当するのはそれなりにハードルが高くなっています。

相続対策として資産管理会社を設立することがありますが、それを会社ではなく設立が簡単で特段の要件もない非営利型以外の一般社団法人・一般財団法人(以下「一般社団法人等」と言います。)で代用することが近年一部で流行っています。なぜ株式会社や合同会社ではなく一般社団法人等を設立するかというと、一般社団法人等には株式や持分がないので、その特性を利用すれば相続税の課税が回避できるとされてきたからです。

もう少し詳しくご説明いたしましょう。資産管理会社を株式会社や合同会社の形態で設立し、将来被相続人になる個人の資産をその会社に移したとします。そうすると将来の相続財産がその会社の株式(合同会社の場合は持分)に変わります。それに対して一般社団法人等には株式や持分がないので、相続税の課税対象である相続財産がなくなってしまうわけです。そして一般社団法人等の理事に推定相続人等の親族が就任すれば、その一般社団法人等を通じて実質的には資産を一族で支配し、相続税を負担することなく相続することができるわけです。

このような租税回避行為は公益法人制度改革の趣旨に反しているとしてかねてから問題視されてきました。そして今回の税制改正でこのようなケースでは一般社団法人等に相続税を課税することになったわけです。新たに相続税の課税対象となる一般社団法人等のことを特定一般社団法人等と言い、次のいずれかの要件を満たす一般社団法人等を指します。

1.相続開始の直前における同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超えること。
2.相続開始前5年以内において同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること。
※同族役員とは、一般社団法人等の理事のうち、被相続人、その配偶者又は3親等内の親族その他当該被相続人と特殊の関係がある者(被相続人が会社役員となっている会社の従業員等)をいう。

そして特定一般社団法人等の理事である者(相続開始前5年以内に理事であった者を含む。)が亡くなった場合に、その特定一般社団法人等に下記の通り相続税が課税されます。
課税対象額=特定一般社団法人等の純資産額÷相続開始時の被相続人を含む同族役員数

この改正は原則として平成30年(2018年)4月1日以後の相続に適用されますが、経過措置として平成30年(2018年)3月31日以前に設立された一般社団法人等については、2021年4月1日以後の相続に適用されます。また、上記2の要件について平成30年(2018年)3月31日以前の期間は2分の1を超える期間に含まれません。

この改正は当ブログの読者の殆どの皆さんには関係ないかと思いますが、教訓としては非常に大事な改正になります。つまりこのような冒険的な相続対策は税制改正で封じられる可能性が常にあるということです。このことはこれまでにも何度か当ブログでお話ししてきました。相続対策には長年認められてきた安全安心な手法がたくさんあります。それらを上手く組み合わせればかなりの相続税節税が見込めることも多いです。これからも折に触れてお話ししていきますが、危ない橋を渡らず子孫に確実に財産を残すことを最優先に考えて頂ければと思います。

一般社団法人等に対する相続税等の課税強化については以上になります。次回も平成30年度の税制改正大綱について相続関連のものをピックアップして解説します。次回も当ブログをぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また再来週お目にかかります。