ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

本題に入る前に、今日はサッカーの話題から。
なでしこジャパン、やりましたね!オランダを撃破して8強入りを果たしました。

佐々木監督は「いつもハラハラさせてすみません。」などと謝っていましたが、とんでもない!
ワールドカップの本大会でここまで全勝なんですから。
ディフェンディングチャンピオンとして各国にマークされている中で、結果を出し続けているなでしこジャパンには本当に頭が下がります。

ここからはどこが優勝してもおかしくない強豪国揃いですから、運もあるかとは思いますが、頑張ってもらいたいです。
もちろん連覇してくれるのが一番良いのですが、もし負けたとしても素晴らしいチームだと思います。

DSCF0375

それでは本題に入りましょう。今日も引き続き生前贈与の話です。
前回までは通常の暦年課税についてお話ししてきましたが、今日は相続時精算課税制度(以下「相続時精算課税」といいます。)について書いていきたいと思います。

相続時精算課税について聞いたこともある方もいらっしゃるかと思いますが、まずは制度の概要についてご説明していきます。
相続時精算課税も今年改正があったものの一つです。
簡単に言うと、まず生前贈与を行い、最終的には相続があった時にその名の通り税金(相続税・贈与税)を精算するというものです。

贈与者は60歳以上の父母・祖父母、受贈者は20歳以上の子・孫になります。
ただし、相続の廃除や欠格により相続権を失っている者は受贈者にはなれません。
また、年齢要件については贈与があった年の1月1日現在で判定することとなります。
昨年までは贈与者は65歳以上の父母、受贈者は20歳以上の推定相続人である子でしたが、今年から対象者が拡大され、一世代飛ばした贈与も可能となりました。

そしてこの相続時精算課税を選択した場合は暦年課税とは全く違う方法で贈与税を計算します。
具体的には、累計2,500万円までは特別控除となり贈与税がかかることなく生前贈与をすることができ、2,500万円を超えた部分について一律20%の税率で贈与税を納めることになります。

そして、贈与者について相続が起こった時に、相続税から既に納めた贈与税を差し引いて精算することになります。
もし相続税額よりも贈与税額の方が大きい時は還付を受けることができます。
なお、特別控除額2,500万円は単年ではなく、生涯累計になります。
暦年課税の基礎控除額が1年当たり110万円であることとは異なるので注意が必要です。

相続時精算課税は贈与者ごとに選択できますので、例えば父からの贈与は相続時精算課税を選択し、母からの贈与は暦年課税を選ぶことも可能です。
ただし、いったん相続時精算課税を選択すると暦年課税には戻れませんので、選択するに当たっては慎重に検討する必要があります。

ここまで書くと、何かとても良さそうな制度に見えますよね。
累計とはいえ2,500万までは贈与税がかかりませんし、2,500万円を超えたとしても超過累進税率である暦年課税とは違って一律20%の税率で済みますから、いっぺんに多額の生前贈与をしたい時には検討する価値があります。

ただし、選択するに当たってはいくつかの注意点があります。
まず第一に、ここまで書いてきましたように最終的には相続税で精算するということです。

暦年課税であれば贈与税を払えば基本的にはそれでおしまいです(だだし、相続開始前3年以内の生前贈与加算はあります)。
それに対して、相続時精算課税では贈与財産も相続財産に組み込まれて相続税が計算されます。
したがって、暦年贈与より贈与税が少なかったとしても、逆にそれ以上に相続税が多くなってしまい、かえって損になることもあり得ます。

また、贈与財産を相続財産に組み込む際には贈与した時の時価で計算します。
通常の相続財産であれば当然相続開始時の時価で計算しますから、現預金のように基本的に価値にあまり変動がないものは良いのですが、不動産や株など時価が変動する財産については、注意が必要です。
もし贈与時よりも相続開始時の方が時価が下落した場合は、本来よりも高い時価で相続税を計算しなければなりませんので、やはり損をすることになります。

ここまでまとめますと、①相続時精算課税はいったん選択すると暦年課税には戻れないこと、②最終的には相続税で精算することになるので相続税・贈与税トータルで試算した上で有利不利を判断する必要があること、③贈与財産の選定を慎重に行う必要があること(できれば今後時価が上昇しそうなもの、少なくとも下落するリスクが少なそうなもの)、以上3点がまずは相続時精算課税を検討する上での留意点になります。

そしてまだ続きがあるのですが、長くなるので今週はいったんここまでにしたいと思います。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。
それでは今週はこの辺で。また来週お目にかかります。