ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

今週は季節外れの台風が来ましたが、皆さん大丈夫でしたか?
札幌は若干風雨が強かったくらいで、大過なく終わりました。
沖縄ではサトウキビなどの農作物に大きな被害が出ているようで、心配です。

今年は開花も早いようで、今年で57回目を迎えるさっぽろライラックまつり(5月20日から5月31日まで)が始まる前からライラックは既に満開になっているものもあります。
家庭菜園では早くも野菜がどんどんと採れているようで、先日もご近所の方からほうれん草やニラなどの新鮮な野菜をもらって美味しくいただきました。
全国的には天候不順で野菜の値段も高くなっているようですが、今年の札幌はとても暖かい春で、季節の進み方がとても早いです。
今年は冬も比較的温暖で雪も少なめでしたが、それでも長い冬が終わってこうして春の息吹をあちこちで感じることができるのはとても嬉しいです。

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さて前置きが長くなりましたが、本題に入って参りましょう。
引き続き税制改正についてお話ししていきますが、今日からは何回かに分けて今年度決まったものではなく、過年度に既に決まっていて、今年から施行されたものについてご紹介していきます。

今年最大の税制改正はなんといっても相続税の増税です。
既にご存知の方も多いかと思いますが、今年(平成27年)の1月1日以降に開始した相続に関しては相続税が増税となっています。
あちこちで取り上げられている内容ではありますが、今後このブログでお話ししていく内容にも深い関連がありますので、今日からは確認の意味合いで相続税の増税についてその内容をおさらいしていきたいと思います。

今日取り上げるのは基礎控除額の引き下げについてです。
何と言っても、これが一番の大改正(改悪?)で、その影響は計り知れないものがあります。具体的には下記の表のように引き下げになりました。

改正前

5,000万円+1,000万円×法定相続人の数

改正後

3,000万円+600万円×法定相続人の数

例えば、法定相続人が奥さんとお子さん2人の計3人であれば、昨年までは5,000万円+1,000万円×3=8,000万円が基礎控除額でしたが、今年からは3,000万円+600万円×3=4,800万円が基礎控除額になります。
昨年までに比べて4割減、6掛けという大幅な引き下げです。

相続税の歴史は古く、日露戦争の戦費調達という目的で創設されましたので、かれこれ100年を超える歴史があるのですが、現行の課税方式になったのは昭和33年(1958年)のことです。
そしてそれ以来基礎控除額は上がり続けてきたのですが、今回ついにこの50年余りで初めて基礎控除額が引き下げられることになりました。

基礎控除額は、昭和50年(1975年)から昭和62年(1987年)までは2,000万円+400万円×法定相続人の数、昭和63年(1988年)から平成3年(1991年)までは4,000万円+800万円×法定相続人の数でしたから、今回の引き下げによりちょうどこれらの間の金額となりました。
したがって、ほぼ30年前から40年前の水準に戻ったということになります。
地価が高騰していた当時と違って現在は地価は安定していますが、それにしてもそんなに前に「先祖返り」する税制改正は異例のことと言って良いかと思います。

基礎控除額は免税点と言い換えることもできますが、遺産総額がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。
そして、遺産総額が基礎控除額を超えている場合は、遺産総額からこの基礎控除額を差し引いた残りの部分を基にして相続税の計算をすることになります。
したがって、基礎控除額の引き下げには2つの大きな意味があります。

まずひとつめは、今まで遺産総額が基礎控除額以下に収まっていて相続税を納める必要がなかった方が基礎控除額が下がったことで新たに相続税を納めなければならなくなるかもしれないということです。
相続税の申告実績については現在国税庁から平成25年分までが発表されていますが、平成25年の課税割合は4.3%でした。
つまり100人お亡くなりになった方(被相続人)がいたとすれば、そのうち相続税を納めなければならないほどの遺産を残した被相続人は4人強だったということです。

もちろん、相続人は被相続人1人に対して複数いることが普通ですから(平成25年は全国・北海道ともに平均約2.4人)、実際に相続税を納めなければならない人はもっと多いことになります。なお、課税割合はこの10年余りほとんど変わっていません。
ちなみに北海道(札幌国税局管内)では平成25年の課税割合は1.8%となっていて、この数字もこの十数年ほとんど変わっていません。

この課税割合が今回の基礎控除額の引き下げによって大きく上がることが予想されます。
色々な数字が飛びかっているようですが、おおむね5割増から2倍近くになるのではないかと言われていますので、全国では7~8%、北海道では3~4%程度になるものと思われます。

「な~んだ、そんなもんか。」という感想をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
確かに大多数の方にとっては相変わらず相続税は無縁なものかと思われます。
ただし、相続税の申告割合自体は課税割合よりも多いことに注意が必要です。
相続税には配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など様々な特例措置が設けられており、これらの特例を使った結果、最終的に相続税額がゼロになるケースもあるからです。

特例措置を受けるためには相続税の申告をする必要があります。
逆に言うと申告をしなければ特例がないものとして相続税が課せられる恐れがあります。
したがって、見かけの数字より相続税の申告に関係がある方は多くなりますから、その点はくれぐれもご注意願います。

また、先ほどの基礎控除額の例を見て頂ければわかるように、法定相続人が3人の場合だと基礎控除額は8,000万円から4,800万円に下がりました。
ちょっとした不動産(マイホームやアパートなど)と預貯金があれば8,000万円には届かなくても4,800万円だともしかすると危ないかもという方も案外多いのではないでしょうか。

また、生命保険などに加入していればその保険金も基本的に相続税の課税対象になります(みなし相続財産といいます)。保険金は金額が大きいですから、決して忘れてはなりません。
経営している(あるいはお勤めになっている)会社からご遺族の方に支給される死亡退職金や弔慰金などもみなし相続財産として相続税の課税対象ですから、会社の規程なども一度確認してみてください。

先祖伝来の骨董品や昔の貴重な古銭や切手といったコレクションなど思わぬ価値がある財産が隠れている可能性もありますし、タンス預金やへそくり(相続税の評価上は現金扱いとなります。)も立派な相続財産です。
親御さんやおじいちゃんおばあちゃんが可愛いお子さんやお孫さんのためにお子さんやお孫さん名義の通帳を作って、せっせと預金したものも場合によっては相続財産になります(名義預金と言いますが、詳しいことはまたこのブログに書こうと思います。)
今回の基礎控除額の引き下げを機会に、一度財産の棚卸しをしてみることをぜひおすすめします。

次に基礎控除額の引き下げのふたつめの意味ですが・・・と書きたいところですが、かなり長くなりましたので続きはまた来週にしたいと思います。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。
それでは今週はこの辺で。また来週お目にかかります。