ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

昨日衆議院が解散され、来月総選挙が行われることになりましたね。政界再編などの動きも慌ただしくなっているようです。そんな中で税金の専門家であり実務家であり、そして納税者の権利を守る税務代理人でもある税理士としては、今後の税制がどのようになるかが非常に気になります。納税者である私たち一般国民は日々一生懸命働いて納税しています。まさに血税です。政治家の皆様方におかれましては、税制や税金の使い道を含む国のあり方について有意義な政策論争をして頂きたいと切に願う次第です。

それでは本題に入って参りましょう。今回は前回に引き続いて広大地の要件についてお話ししていきます。前回のおさらいをしますと、広大地の要件は大きく分けて次の4つになります。この4つの要件を全て満たすと広大地に該当し、評価額が大幅に下がることになります。

1.大規模工場用地に該当しないこと。
2.マンション適地等に該当しないこと。
3.その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であること。
4.開発行為を行うとした場合に、公共公益的施設用地の負担が必要である(=開発道路等による潰れ地が生じる)と認められること。

1番目と2番目については前回詳しくご説明しましたので、今回は3番目の要件から順番に解説していきたいと思います。

3.その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であること。
広大地と言うくらいですから、当然この要件も満たさなくてはなりません。ここで言う標準的な宅地の地積というのは地域によって異なりますが、それでは標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であるとは、具体的には一体どれくらいの地積のことを言うのでしょうか。これは一概に言うのは難しいので、一応下記の通り形式的な面積基準が設けられています。

①市街化区域(三大都市圏以外) 1,000㎡以上
②用途地域が定められている非線引き都市計画区域 1,000㎡以上

③用途地域が定められていない非線引き都市計画区域 3,000㎡以上

ただし、これはあくまでも目安であり絶対的な基準というわけではありません。例えば三大都市圏以外の市街化区域において、標準的な宅地の地積が150㎡の地域における900㎡の宅地と、標準的な宅地の地積が400㎡の地域における1,200㎡の宅地とでは、どちらの方がより著しく地積が広大でしょうか?開発道路のことを考えずに区画割りすると、前者は6区画取れるのに対して、後者は3区画しか取れません。にも関わらず、後者は広大地に該当して前者は広大地に該当しないというのは不合理な話ですので、著しく地積が広大であるか否かは最終的には標準的な宅地の地積に対して相対的に決まるものになります。

なお、標準的な宅地の地積については、評価対象地付近にある地価公示の標準地や地価調査の基準地の地積などを参考にします。また、市街化調整区域については、都市計画法に基づく条例指定区域内の宅地で戸建住宅の建築が可能であれば広大地に該当する可能性があります。この場合は上記のような形式的な面積基準はありませんので、標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であるか否かはケースバイケースで判断することになります。

4.開発行為を行うとした場合に、公共公益的施設用地の負担が必要である(=開発道路等による潰れ地が生じる)と認められること。
1から3までの要件を満たしていることが確認出来たら、いよいよ最後のハードルであるこの4番目の要件になります。この要件は2.マンション適地等に該当しないことと同様、税務署と見解が分かれることが非常に多く、判断がとても難しいものになります。北海道の場合、いわゆる旗竿状(路地状)開発の実例は殆どありませんので、旗竿状(路地状)開発以外の開発行為を行うとした場合に、開発道路が必要になるかどうかを検討します。

具体的な手順としては、建築士や不動産鑑定士の方に開発想定図を作成してもらいます。ここで重要なのは、経済的に一番効率の高い合理的な図面を書いてもらうということです。その結果、開発道路の敷設が必要ないという結論になることもあり、その場合は広大地の適用を受けることはできませんが、それは専門家である建築士や不動産鑑定士の判断ですから仕方のないことです。逆に言うと、信頼できる専門家が作成した合理的な図面により開発道路の敷設が必要であることを証明できれば、広大地の適用を受けることができる可能性は非常に高くなります。

広大地の要件については以上になります。これで現行の広大地評価についての解説は全て終わりました。次回からはいよいよ来年から大改正となる新広大地評価の内容と改正の背景、広大地評価の大改正が相続実務に与える影響などについて順を追ってお話ししていく予定です。これからも当ブログをぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また再来週お目にかかります。