ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

先日将棋の王座戦で羽生善治王座が防衛に失敗し、挑戦者の中村太地七段が新王座になりました。中村王座は羽生前王座に三度目のタイトル挑戦で、悲願の初タイトルとなりました。一方、羽生前王座は昨年の名人、今年の王位に続く失冠となり、13年ぶりに棋聖のみの1冠に後退しました。佐藤天彦名人、菅井竜也王位、中村王座はいずれも二十代で、将棋界にも本格的に世代交代の波が押し寄せつつあるようです。ただ、羽生棋聖も先週末の竜王戦第1局に勝利し、永世七冠獲得に向けて幸先の良いスタートを切りました。まだまだベテランにも頑張ってもらって将棋界を盛り上げて欲しいと思います。

それでは本題に入って参りましょう。今回も前回に引き続き新しい広大地評価の評価額についてお話ししていきます。形状の良い広大地については来年から評価額が上がり、実質的に増税になるということは前回お話しいたしました。それでは不整形地など形状の良くない広大地だとどうなるでしょうか。地積の異なる具体例を4つほど見ていきたいと思います。いずれにも共通する前提条件として、路線価2万円、奥行価格補正率0.80【下限】、不整形地補正率(間口狭小補正率を乗じた後のもの)0.60【下限】とします。

(1)1,000㎡の場合
路線価20,000円×奥行価格補正率0.80【下限】×地積1,000㎡×不整形地補正率0.60【下限】×規模格差補正率0.80=7,680,000円

(2)3,000㎡の場合
路線価20,000円×奥行価格補正率0.80【下限】×地積3,000㎡×不整形地補正率0.60【下限】×規模格差補正率0.74=21,312,000円

(3)5,000㎡の場合
路線価20,000円×奥行価格補正率0.80【下限】×地積5,000㎡×不整形地補正率0.60【下限】×規模格差補正率0.72=34,560,000円

(4)10,000㎡の場合
路線価20,000円×奥行価格補正率0.80【下限】×地積10,000㎡×不整形地補正率0.60【下限】×規模格差補正率0.68=65,280,000円

これを現行の広大地評価額と比べてみましょう。

(1)1,000㎡の場合
路線価20,000円×広大地補正率0.55×地積1,000㎡=11,000,000円

(2)3,000㎡の場合
路線価20,000円×広大地補正率0.45×地積3,000㎡=27,000,000円

(3)5,000㎡の場合
路線価20,000円×広大地補正率0.35【下限】×地積5,000㎡=35,000,000円

(4)10,000㎡の場合
路線価20,000円×広大地補正率0.35【下限】×地積10,000㎡=70,000,000円

いずれも新しい広大地評価の評価額の評価額の方が低くなっていますね。つまり上記のように奥行価格補正率・不整形地補正率ともに下限に達するくらい形状が悪い広大地であれば、評価額が下がって減税になるということです。また、無道路地(道路に接していない宅地又は接道義務を満たしていない宅地)である広大地についても、減税になる可能性があります。

なお、減税幅は5,000㎡までは地積が大きくなるにしたがって段々と縮小します。これは規模格差補正率の下がり方がだんだん緩やかになっていることから、広大地補正率との差が広がっていることが原因です。そして地積が5,000㎡を超えると減税幅はまた段々と大きくなります。これは広大地補正率が下限に達するので、規模格差補正率との差が縮んでいくからです。

ただしここまで形状の悪い土地は少ないですから、実際には評価額が上がって増税になる広大地が多くなると思われます。特に5,000㎡までは地積が大きくなればなるほど増税になる可能性は高くなります。こうして見ていきますと、今回の改正は相続税・贈与税の納税者にとって厳しいものと言えます。ただ、その一方で非常に複雑でわかりにくかった適用要件が明確になって、否認リスクが大幅に下がるメリットもあります。その適用要件については長くなりますので、次回以降詳しくお話ししていきたいと思います。次回もぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また再来週お目にかかります。