ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

お盆も終わり、また通常の日々が戻ってきましたね。昨年の8月は54年ぶりに日本列島に台風が4つも上陸し、そのいずれも北海道に上陸・接近しました。それらの台風はじゃがいもや玉ねぎ、とうきび(とうもろこし)、豆類といった農作物にも甚大な被害をもたらし、ポテトチップスなどの原料が不足したことも記憶に新しいところですが、今年は平穏無事に収穫の秋を迎えられそうですね。我が家の家庭菜園でもなすやピーマン、ミニトマト、豆などが次々と収穫されて我が家の食卓を賑わせています。北海道の大地で育った野菜はとても美味しいので、収穫の秋が今からとても楽しみです。

それでは本題に入って参りましょう。今回からは新連載です。相続税については時系列に沿って、将来の相続に備えた相続税の節税などの相続対策、最近起こった(現在の)相続に関する相続税の申告、そして過去の相続で既に申告納付を済ませている相続税の還付という3つの場面が考えられますが、今日はそのうち過去の相続に関する相続税の還付をテーマにこれからお話ししていきたいと思います。

そもそも税金を払い過ぎているなどということがあるのでしょうか?まずはそこからお話ししていきたいと思います。税金を払い過ぎているケースは、相続税に関して言えば結構多いという印象です。なぜなら、税理士は法人を専門にしている方が圧倒的に多く、相続を専門にしている税理士は非常に少ないからです。法人税などと同様、相続税も非常に難解で専門性の高い税目です。

特に不動産の評価については独自のノウハウと経験が必要になるため、専門外の税理士が手掛けた相続税の申告書では不動産の評価額などがかなり高めになっている傾向があります。評価額が高くなっているということは、つまり相続税額も過大になっているということです。

その不動産評価の中でも広大地評価は最も難易度が高く、なおかつ評価額が最も下がるものになりますが、詳細については後ほど詳しくご説明したいと思います。なお、広大地評価については来年から大幅な改正が予定されておりますが、それについても後で併せてご説明いたします。

それでは相続税を払い過ぎていることが判明した場合は、どのような手続きをとれば良いのでしょうか。税金(国税)の還付については原則として更正の請求という手続きで行います。これは税務署長に更正の請求書というものを提出し、過大に納めた税金を返してくださいと請求するものです。そしてその内容が認められれば税務署長は減額更正という課税処分を行い、税金が還付されるというわけです。相続税についてもこの手続きをとることになります。

もちろん更正の請求については厳正な調査があり、そう簡単に認められるものではありません。更正の請求書には税額が過大になっている理由を記載するとともに、税額が過大であることを証明する膨大な書類を添付しなければなりません。また、その後も税務署側からの求めに応じたり、税務署側からの指摘に反論するために数多くの追加資料を手配して提出しなければなりません。いったん納めた税金を取り戻すというのは結構大変なことなのです。特に相続税は金額が大きいので、難易度は非常に高くなります。

なお、更正の請求には期限があり、原則として申告期限から5年以内、つまり相続開始日(被相続人がお亡くなりになった日)から5年10か月以内に手続きしなければなりません。これを過ぎるとどんなに税金を払い過ぎていたとしても、それを取り戻す術は基本的にありませんので注意が必要です。

また、上記の期限内であっても、その払い過ぎた理由(原因)によっては更正の請求自体が認められない場合があります。例えば、特例の適用漏れなどについては原則として更正の請求は受け付けてもらえず、残念ながら調査に入ることなく却下(いわゆる門前払い)されてしまいます。

これまで私が手掛けた相続税還付の案件では、最大で2,000万円を超える還付を実現したことがあります。これはやはり広大地評価が絡んでいるものでした。当初申告でされていなかった広大地評価等を行うことにより、相続財産の課税価格が5,000万円ほど下がり、適用税率が40%でしたので2,000万円余りが還付になったというわけです。凄い金額ですよね。相続税の申告の恐ろしさがお判りいただけるのではないかと思います。

それではその広大地評価とは一体どういうものなのでしょうか。長くなりましたので、続きは次回以降にいたします。今年いっぱい適用される現行の広大地評価、そして来年から大幅に見直しになる新しい広大地評価について順を追ってご説明するとともに、その影響などについても併せてお話ししたいと思っています。次回もぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また再来週お目にかかります。