ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

今週は何と言っても佐藤琢磨選手のインディアナポリス500マイルレース優勝ですね。F1モナコグランプリ、ル・マン24時間レースと並び世界三大レースの一つと称されるインディ500で日本人が優勝したのは初めての快挙です。かつてはF1で日本人では3人しか達成していない3位表彰台を獲得するなど(あとの2人は鈴木亜久里と小林可夢偉)将来を嘱望されていましたが、マシンの戦闘力の低さに泣かされてF1のシートを失い、その後はインディカー・シリーズに参戦していました。これまでの苦労が報われましたね。琢磨選手、本当におめでとうございます!

それでは今日の本題に入って参りましょう。今回からは重加算税です。その名の通りとても重い加算税になります。重加算税と一口に言いますが、実は次の2つに大きく分かれます。

1.過少申告加算税(課税割合は原則10%)に代えて課される重加算税→課税割合は原則35%
2.無申告加算税(課税割合は原則15%)に代えて課される重加算税→課税割合は原則40%

もう一つ不納付加算税に代えて徴収される重加算税(課税割合は原則35%)もあるのですが、不納付加算税は給与等から天引きされる源泉所得税に関するもので相続との直接的な関係は薄いので、ここでは割愛いたします。

このように重加算税は過少申告加算税や無申告加算税と比べて原則25%も課税割合が重くなっていますが、これは悪質な申告があった場合には通常よりも重いペナルティ(制裁)を課そうという趣旨で、悪質な申告を未然に防ぐ抑止効果も狙っているものと考えられます。「悪質」と書きましたが、正確には「隠ぺい又は仮装」があった場合になります。「隠ぺい又は仮装」があったかどうかについては税務当局と争いになることも多く、不服申立や税務訴訟に発展するケースもあります。重加算税になるか否かで原則25%も課税割合が違ってくるのですから、当然のことだと思います。

「隠ぺい又は仮装」とは具体的には何を指すのかはなかなか難しい問題です。これに関しては裁決(国税不服審判所が下す判断)や税務訴訟判決も数多く出ていて一定の定義がなされていますが、内容が非常に専門的で難解かつ膨大になりますので、また機会を改めて解説したいと思っています。今日のところは相続財産を意図的に隠したり、より少ないように装ったり(ごまかしたり)した場合は重加算税の賦課対象となり得るということだけ知っておいて頂ければ十分です。

したがって、単純ミスにより(意図せず)相続財産が申告から漏れていたり過少になっていた場合は当然重加算税の賦課対象にはなりません。意図的ではない以上、「隠ぺい又は仮装」には該当しないからです。また、金額の多寡も関係がありません。たとえ1億円の相続財産が申告から漏れていたとしてもそれが「隠ぺい又は仮装」によるものでなければ重加算税の賦課対象にはなりませんし、逆に1万円の相続財産申告漏れでもそれが「隠ぺい又は仮装」によるものでしたら重加算税の賦課対象になります。

しかし実際には単なるミスにも関わらず、申告漏れの金額が大きいというだけで重加算税が賦課される事案も散見されます。税務調査で調査官に「こんなに大きな申告漏れがあるのですから、重加算税になりますね。」などと言われると、納税者側も自責の念にかられて「そうだな、知らなかったこととはいえこんなに大きな申告漏れをしてしまったのだから、重加算税でも仕方がないな。」などと思ってしまうのです。

でもこれは大きな間違いです。「隠ぺい又は仮装」がない以上、重加算税の法的な課税要件を満たしていませんから、重加算税が賦課されるのは絶対にあってはならないことです。相続人(子)が被相続人(親)の財産を全て把握しているということはあまりないかと思います。親が亡くなった後、金庫等を調べるなどできる限りのことをして相続財産を申告するわけですが、思いもがけないところに財産があったりするわけです。そこまで子に責任を負わせるのは酷というものです。

この場合過少申告加算税は課されても仕方ありませんが、重加算税はそう易々と課されるべきものではありません。それに重加算税の課税要件である「隠ぺい又は仮装」があったかどうかの立証責任は税務当局側にあるということも覚えておいてください。ただし意図的に相続財産を隠すなどした場合は重加算税が課されても仕方がありませんから、その点も併せて頭に入れておいてください。

長くなりましたので、今日はここまでといたします。次回は具体例も使いながら重加算税について引き続き見ていきますので、またぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また来週お目にかかります。