ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

2月も終わりに差し掛かり、確定申告もたけなわになってきました。今週は先週に引き続いて「空き家特例」について解説していきます。前回は対象財産である被相続人居住用家屋は、被相続人が相続開始直前において独りで住んでいた家屋である必要があることをご説明しました。そして残りの2つの要件を今回ご説明していきます。

一つ目は昭和56年5月31日以前に建築されたものであることです。この意味合いですが、昭和56年6月1日に新しい耐震基準に改正されており、それ以前の旧耐震基準で建てられた家屋であるということです。つまり今よりかなり緩い耐震基準で建てられているので地震の時など倒壊の危険性が非常に大きく、何らかの手立てを取る必要がある緊急性の高いものになります。

このような建物のことを既存不適格と言いますが、これは最初から違法建築物だったものとは異なり、建築時は合法だったがその後の法改正により建築基準を満たさなくなったものを指します。既存不適格の場合は建て替えや増改築等の際に改正後の基準を満たす必要があり、後述するようにこれを現行の基準を満たすようにリフォームして売るか、あるいは取り壊して敷地等だけ売るかすれば「空き家特例」の適用が受けられますが、それにより旧耐震基準で建てられた危ない空き家を減らすことができます。つまり、3,000万円控除を認めるほど優先順位が高い空き家であると言うことができるわけです。

この昭和56年5月31日以前に建築されたかどうかの判断は、原則として登記上で行います。つまり登記事項証明書(登記簿謄本)の表題部に表示されている新築日がいつになっているかで判断するわけです。ただ、新築日が昭和56年6月1日以降になっていても旧耐震基準で建築されている場合もあります。それは建築確認→確認済証の交付→建築工事の実施→完了検査→検査済証の交付→登記という時系列になるため、建築確認時に旧耐震基準を満たしていれば良いケースもあり得るからです。

したがって、登記日付が昭和56年6月1日以降の場合でも、確認済証の交付年月日が昭和56年5月31日以前であれば「空き家特例」の適用を受けることができます。また、確認済証が見当たらない時は、検査済証にも確認日付が記載されているので、その日付が昭和56年5月31日以前であればOKです。両方ともない場合は・・・建築確認を実施した自治体に問い合わせて見ましょう。空き家が所在する市町村に建築主事がいる場合はその市町村、いない場合は都道府県(北海道の場合は[総合]振興局)になります。ただ、自治体によっては保存年限経過により関係書類がもはや存在しない可能性もあります。

あとはご自身で新築した場合は建築業者と交わした請負契約書が残っていないかどうか探してみてください。その請負契約書で建築時期が判明することもあり得ます。また、その建築業者に問い合わせてみるのも一つの方法です。ただしこの場合も、あまりにも古いデータは残っていない可能性が高いと思われます。家屋が未登記の場合なども上記の手順で建築時期が分かるものを探してみてください。

もう一つの要件は区分所有建物として登記されていないということです。基本的に「空き家特例」が適用されるのは被相続人が戸建住宅に住んでいた場合であり、マンションなどに住んでいた場合は原則として適用対象外になります。ただし、戸建住宅でも二世帯住宅で登記上も区分所有建物になっている場合は「空き家特例」の適用を受けることはできませんので、ご注意ください。

もっとも、二世帯住宅に被相続人が独りで住んでいて、亡くなった後に空き家となるケースは稀であろうと思われます。いずれにしても、この要件は原則として登記上で判断されるということを押さえておいてください。なお家屋そのものが未登記の場合などは、市町村から固定資産課税台帳の写しの交付を受けて、区分所有建物でないことを確認してください。

次に譲渡に関する要件について順番にご説明していきます。まず最初に「空き家特例」が適用される譲渡期間についてですが、適用譲渡期間は相続開始日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までです。わかりづらいので具体例でいくつか考えてみましょう。

相続開始日が平成25年1月2日だったとすると、3年経過日は平成28年1月1日になります(1月2日ではありません)ので、3年経過日の年末である平成28年12月31日までに譲渡すれば「空き家特例」の適用を受けることができます。ただし、「空き家特例」の適用開始は平成28年4月1日ですから、平成28年3月31日以前の譲渡は対象外になります。ご注意ください(相続開始日は平成28年3月31日以前でも可)。

もう一つ具体例を見てみましょう。今度は相続開始日が平成28年1月1日だったとします。3年経過日は平成30年12月31日になります(平成31年1月1日ではありません)ので、3年経過日の年末である平成30年12月31日までに譲渡すれば適用可能です。ただし、平成28年3月31日以前の譲渡が対象外になるのは最初の具体例と同じです。同様に相続開始日が平成29年1月1日の場合は、3年経過日の年末である平成31年12月31日までの譲渡が適用可能となります。

これに対して相続開始日が平成29年1月2日の場合は、3年経過日の年末は平成32年12月31日になりますが、今のところ「空き家特例」の適用期間は平成31年12月31日までですので、この場合も平成31年12月31日までの譲渡が適用可能となります。ただし、租税特別措置法は随時延長される可能性がありますので、将来的には平成32年1月1日以後の譲渡でも適用されることもあり得ますが、現時点では平成31年12月31日までとお考え下さい。

なお、上記の適用期限内であっても「空き家特例」の適用を受けることができるのは1回だけです。都合により複数回に分けて譲渡する場合もあるかと思いますが、「空き家特例」の適用は1回限りになりますので、どの譲渡で特例を適用するかは慎重に判断してください。後から変更はできませんので、ご注意ください。

少し長くなりましたので、譲渡に関する要件の続きは次回にいたします。来週もぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また来週お目にかかります。