ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

確定申告もいよいよ大詰めですね。今週は【確定申告特集】「空き家特例」の最終回です。今回は「空き家特例」を受けるための手続きについて、必要な添付書類を順番にご説明していきます。

1.譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】
不動産の譲渡所得を申告したことのある方にはお馴染みの書式ですが、青い用紙で昨年までは1面から4面までありました。今年から「空き家特例」について記載するための5面が新たに追加されています。「空き家特例」の場合は、1~3面及び5面を記載します。国税庁から発表されている書式及び記載例をPDF形式で載せておきますので参考にしてください。

譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】(1面から4面)
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】(5面)

被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を相続により取得し、被相続人居住用家屋の敷地等を譲渡した場合(用途上不可分の関係にある2以上の建築物がない場合)

被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を相続により取得し、被相続人居住用家屋の敷地等を譲渡した場合(用途上不可分の関係にある2以上の建築物がある場合)

2.被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等に係る登記事項証明書
これは以下の3つの事項を明らかにするために添付する必要がありますが、家屋が未登記等の場合など登記事項証明書を添付できないときは、それぞれの事項の後に掲記した書類で代用できます。

(1)譲渡者(相続人・受遺者)が被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の両方を被相続人から相続又は遺贈により取得したこと・・・遺産分割協議書

(2)被相続人居住用家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたこと・・・昭和56年5月31日以前に交付された確認済証若しくは確認済証交付年月日が昭和56年5月31日以前と記載されている検査済証又は建築時期が昭和56年5月31日以前だとわかる建築請負契約書

(3)被相続人居住用家屋が区分所有建物ではないこと・・・固定資産課税台帳の写し

3.被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等に係る売買契約書の写し
譲渡収入等が1億円以下であることを証明するために添付します。前回の記事にも書きましたがこの1億円要件はとても複雑ですので、該当しそうな場合は税理士もしくは税務署にご相談ください。

4.耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写し
空き家を譲渡した場合は、耐震基準を満たすようにリフォーム等されていることを証明するために、この書類を添付します。したがって、空き家を取り壊して敷地等のみを譲渡した場合は必要ありません。

5.被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等が所在する市区町村の長から交付を受けた被相続人居住用家屋等確認書
この書類が添付書類の中で一番手間がかかるものだと思います。この確認書を添付することにより、相続開始直前において被相続人が当該家屋に独りで住んでいたことや相続開始時から譲渡等の時まで事業の用・貸付けの用又は居住の用に供されたことがないこと、空き家を取り壊して敷地等のみを譲渡する場合はその取り壊し後は譲渡時までずっと更地であった(建物や構築物がなかった)ことを証明できます。

そしてこの確認書の交付を受けるために、被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等が所在する市区町村に被相続人居住用家屋等確認申請書を各種書類とともに提出する必要があります。譲渡者(相続人・受遺者)の住所地とは異なることもあるかと思いますので、提出先にご注意ください。申請書と確認書は同一の書式になっています。国土交通省から発表されている書式をPDF形式で載せておきますので、参考にしてください。

被相続人居住用家屋等確認申請書兼確認書

申請から確認書の交付まではだいたい1週間から10日程度かかるとのことですが、申請書と一緒に各種書類も併せて提出しなければなりませんので、その書類を揃えるのに多少の時間がかかるものと思います。当該市区町村に提出する書類は以下の通りです。なお、市区町村によって微妙にニュアンスが異なる場合もありますので、事前に問い合わせた方が良いでしょう。

1.被相続人の除票住民票の写し

2.譲渡者(相続人・受遺者)の住民票の写し
空き家を譲渡する場合は譲渡時、空き家を取り壊して敷地等のみ譲渡する場合はその取り壊し時の住民票になります。また、相続開始後2回以上転居している場合は、戸籍の附票の写しも必要です。戸籍の附票には住所の履歴が書いてあるからです。なお、戸籍の附票は本籍地の市区町村に請求することになります。住所地の市区町村とは異なる場合もありますので、ご注意ください。遠隔地であれば郵送で対応してくれます。

3.被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等に係る売買契約書の写し

4. 空き家を取り壊した場合は、その除却工事に係る請負契約書の写し・取り壊し後の更地の状態がわかる写真・取り壊し後の固定資産課税台帳または固定資産税課税明細書の写し
空き家を取り壊す場合は、譲渡前に写真を撮ることを忘れないようにしてください。

5. 以下の書類のいずれか

(1)電気若しくはガスの閉栓証明書又は水道の使用廃止届出書

(2)宅地建物取引業者(不動産仲介業者)による売り出し広告(空き家またはその敷地等であることが明示されているもの)のチラシやホームページ等の写し

(3)相続開始時から譲渡等の時まで事業の用・貸付けの用又は居住の用に供されたことがないことを容易に証明できる書類
例:所在市区町村が認める者(当該空き家の管理委託事業者、シルバー人材センター、地縁団体、一定のNPO法人など)が空き家を管理していることの証明書等

市区町村に提出する書類と税務署に提出する書類の両方が必要ですので、手続きはちょっと大変ですね。ただ、限度額である3,000万円の控除だと所得税(15%)・復興特別所得税(0.315%)・住民税(5%)併せて約610万円もの節税になります(長期譲渡所得の場合)。譲渡益(特別控除額)が500万円でも減税額は100万円を超すわけですから、要件を満たしているのであればぜひこの特例は受けるようにしてください。

なお、通常の居住用財産の軽減税率(課税長期譲渡所得6,000万円まで所得税10%、復興特別所得税0.21%、住民税4%、租税特別措置法第31条の3)は、「空き家特例」には適用されませんので注意してください。

【確定申告特集】「空き家特例」についての解説は以上になります。これから相続した空き家等を売却し、来年以降確定申告を予定されている方は、適用を受けるための要件が複雑ですからよく確認してください。また、手続きも煩雑ですので確定申告間際で慌てることのないよう忘れずに早めの準備をお願いします。国税庁発表のチェックリストをPDF形式で載せておきますので、こちらも参考にしてください

被相続人の居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例チェックシート・措法35条3項

次回からはまた通常通り相続に関する情報発信をしていきます。これからも有益な情報を提供して参りますので、来週以降もぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また来週お目にかかります。