ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

先週までは3回にわたって空き家の相続と税金についてお話ししてきましたが、今週は空き地(未利用地)の相続と税金について書いていこうかと思います。空き家の敷地も広い意味では空き地とも考えられますが、ここでは未利用になっている更地、特に農地(休耕地、耕作放棄地等)について見ていきましょう。

高齢化により離農する方が増加し、後継者がいないため耕作せずそのまま放置されている農地が増えています。休耕地と耕作放棄地の定義は曖昧ですが、耕作を再開する意思があるかないかによって分けているようです。ただ、農林水産省では近年はこうした主観的な分類ではなく、客観的に荒れ果てている農地を荒廃農地と呼ぶようになっています。ここでは基本的に荒廃農地という用語を使っていきます。

それでは荒廃農地を相続しそうな場合、どのような対応が考えられるでしょうか。まず考えられるのは相続放棄ですが、この連載の空き家編でも触れたように、相続放棄は被相続人の全財産について行わなければなりませんので、荒廃農地だけ放棄することはできません。ですから、相続放棄はあまり現実的な対応策とは言えないでしょう。

それでは荒廃農地について遺産分割協議をせず、もちろん相続登記等も行わずにそのまま放置したらどうでしょうか。これも空き家編で書きましたが、その荒廃農地がいつの間にかゴミ捨て場や産業廃棄物等の不法投棄場所になってしまうなど、近隣住民等に迷惑をかけることになってしまった場合、相続人は所有者として管理責任が問われます。なぜなら、遺産未分割の場合は、その荒廃農地は相続人全員の共有財産となるからです(相続登記の有無は問いません)。場合によっては損害賠償請求等をされる恐れもあります。したがって、これもあまり良い選択肢とは言えません。

やはり相続人の誰かがきちんと相続する必要がありそうです。それでは、相続後はどのような対応が考えられるでしょうか。農地は宅地と違って固定資産税がとても安いので、そのままにしている方も多いようです。ただ、荒廃農地は時間が経てば経つほど農地として再生することは難しくなり、有効活用がままならなくなりますので、そうなると売却や賃貸も難しくなってしまいます。空き家と同様、最終的にどうするかといった出口戦略を予め描いておくことが重要になります。

ところで、今年度の税制改正では荒廃農地に係る固定資産税の課税強化が決まりました。一定の要件を備えた荒廃農地については早ければ平成29年度から約1.8倍の負担増となります。ただしいきなり負担増になるわけではなく、農業委員会から荒廃農地の所有者に対して農地バンクとの協議などの必要な措置等を講じるよう勧告等を行うことが負担増の前提になっています。所有者不明の農地も多いことから現時点ではまだあまり進んでいませんが、農林水産省では農業委員会に対して取り組みを進めるよう指導を強化しているようです。

逆に、荒廃農地を農地中間管理機構(農地バンク)を通じて一定の要件を満たして賃貸した場合は、平成29年度以降3年間または5年間固定資産税が半減になるという軽減策も同時に講じられました。また、農林水産省では農地バンクの活用度合いに応じて農業関連の補助金に差をつけていくようです。このように、荒廃農地の有効活用を後押しする動きが最近は目立っていますので、積極的に利用したいところです。なお、税制改正の詳細については当ブログの下記リンクも参照してください。

<平成28年度税制改正大綱、ついに決定!(相続・不動産関連速報その2)>
http://souzoku-sapporo.jp/%E7%9B%B8%E7%B6%9A%E7%A8%8E/%E5%B9%B3%E6%88%90%EF%BC%92%EF%BC%98%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%A8%8E%E5%88%B6%E6%94%B9%E6%AD%A3%E5%A4%A7%E7%B6%B1%E3%80%81%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%AB%E6%B1%BA%E5%AE%9A%EF%BC%81%EF%BC%88%E7%9B%B8%E7%B6%9A-2/

農地の売却や賃貸には農地法の制約があり、宅地などと違って難しい面もあるのですが、農地が所在する各市町村の農業委員会が窓口になりますので、まずは農業委員会に相談することをお勧めします。また、農林水産省の下記リンクも参照してみてください。

<荒廃農地の発生防止・解消等【農林水産省ホームページ】)>
http://www.maff.go.jp/j/nousin/tikei/houkiti/

空き地(未利用地)の相続と税金については以上です。空き家と空き地の相続は頭の痛い問題ですが、この連載が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。来週からは新連載になります。また色々と新しい企画を温めていますので、次回以降もご期待ください。

それでは今週はこの辺で。また来週お目にかかります。