ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

先週はブログを更新できず申し訳ありませんでした。オリンピックも夏の甲子園も終わりましたね。私は全然見ることができなかったのですが、オリンピックはロンドンオリンピックのメダル数を上回り過去最高となりました。夏の甲子園は北海高校が惜しくも準優勝で駒大苫小牧以来の優勝は成りませんでしたが、大健闘だったと思います。

この間は北海道に3回も台風が上陸し、同じ年に北海道に台風が3回上陸したのは気象観測史上初のことだそうです。そもそも北海道に台風が上陸したのは9年ぶりのことで、本州などに上陸することなくいきなり北海道に上陸したのは23年ぶりということで、こちらも記録ずくめです。もう台風は勘弁して欲しいというのが正直なところです。被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。

それでは少し間が空いてしまいましたが、相続対策における生命保険の活用方法(基礎編)の第3回目に入ってまいりましょう。過去2回の記事も下記のリンクからぜひご覧ください。

<生命保険は相続対策の必須アイテムです(基礎編その1)>
http://souzoku-sapporo.jp/%E7%94%9F%E5%91%BD%E4%BF%9D%E9%99%BA/%E7%94%9F%E5%91%BD%E4%BF%9D%E9%99%BA%E3%81%AF%E7%9B%B8%E7%B6%9A%E5%AF%BE%E7%AD%96%E3%81%AE%E5%BF%85%E9%A0%88%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%86%E3%83%A0%E3%81%A7%E3%81%99%EF%BC%88%

<生命保険は相続対策の必須アイテムです(基礎編その2)>
http://souzoku-sapporo.jp/%E7%9B%B8%E7%B6%9A%E7%A8%8E/%E7%94%9F%E5%91%BD%E4%BF%9D%E9%99%BA%E3%81%AF%E7%9B%B8%E7%B6%9A%E5%AF%BE%E7%AD%96%E3%81%AE%E5%BF%85%E9%A0%88%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%86%E3%83%A0%E3%81%A7%E3%81%99%EF%BC%88%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E7%B7%A8-2/

今回は会社(法人)の経営者が相続対策に使える生命保険についてです。今回は個人ではなく会社が保険契約者(=保険料負担者)となります。被保険者は会社の経営者、受取人は会社です。したがって生命保険金そのものは会社が受け取りますから、相続とは直接関係はありません。ではなぜこれが相続対策になるかというと、その生命保険金を原資として、経営者の遺族に死亡退職金・弔慰金を支払うことにするのです。この死亡退職金・弔慰金が相続に関係してきます。

死亡退職金・弔慰金は生命保険金とは別枠で非課税枠が設けられています。死亡退職金は生命保険金と同様に、500万円×法定相続人の数までは非課税となります。それともう一つ忘れがちですが、弔慰金にも非課税枠があり、これは業務上の死亡だと死亡時の役員報酬月額の3年分(36か月分)、業務外の死亡でも死亡時の役員報酬月額の半年分(6か月分)までは非課税です。経営者の場合はこの非課税枠が使えるんですね。もちろん当連載の第1回目でご説明しましたように、これとは別に個人で掛けている生命保険金にも非課税枠が適用されますので、より手厚い相続対策が可能となるわけです。

ここで一つ注意しなければならないのは、法人税上の処理についてです。この枠組み(スキーム)では生命保険金が会社の益金となり、役員退職金が会社の損金となって、損益のバランスが取れる(つまり法人税の負担が著しく増加しない)ことが大前提となっています。しかし役員退職金は法人税の税務調査においてその金額の多寡を巡って問題となることが多く、過大部分が否認されて損金として認められないケースもあり、裁判でも時々争われています。

せっかく死亡退職金・弔慰金の非課税枠を上手に使って相続対策を行ったとしても、法人税の負担が著しく増加してしまっては意味がありません。したがって、役員退職金・弔慰金の支給規程を予め整備し、合理的な支給額を定めておくことがとても重要になります。ここで難しいのは合理的な支給額をどう定めるかということです。弔慰金については相続税の非課税枠が社会通念上合理的な支給額であると考えられますが、役員退職金の合理的な支給額をどう考えるかはかなりの難問です。

実務上は一応、功績倍率方式(最終役員報酬月額×役員在任年数×功績倍率=役員退職金、功績倍率は社長の場合3倍が目安)が長年採用されてきたところですが、近年裁判例が揺れ動いており、絶対的な方法というものは正直ないというのが現状です。実務的な対応としては当面、功績倍率方式をベースに、同業同規模他社の役員退職金支給実績を公表されているデータを可能な限り調べた上で、その結果も加味して決めざるを得ないと思われます。

役員退職金については今後の裁判において新たな判断が出る可能性も十分あり得ますので、そうした動向もにらみながらまた別途詳細について当ブログで取り上げたいと思っています。相続対策における生命保険の活用方法(基礎編)の連載は以上になります。相続対策における生命保険の活用方法については、後日また改めて応用編の連載をする予定です。そちらもぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。また来週お目にかかります。