ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

今週は前回の確定申告特集の続きを予定していましたが、今週初めの報道でいわゆる「タワーマンション節税」に対する課税強化策が現在与党税制調査会・総務省(固定資産税担当)・国税庁(相続税・贈与税担当)で検討されており、早ければ2018年(平成30年)から実施される方向であることが判明いたしましたので、当初の予定を変更して今回と次回の2回にわたって緊急速報としてその内容について詳しく書いていきたいと思います。

最近相続対策として「タワーマンション節税」がにわかに注目を集めており、耳にしたことがある方もいらっしゃるかと思います。今回は「タワーマンション節税」の仕組みについて詳細を確認していきましょう。

タワーマンションとは最近建設ラッシュが進んでいる超高層マンションのことを指します。厳密な定義はありませんが、だいたい20階建て以上のマンションであればタワーマンションと言えるかと思います。
国税庁もタワーマンションの課税強化策を検討するにあたって市場調査を行っていますが、20階建て以上のマンションを調査対象にしていますので、国の方でもタワーマンションをそのように考えていると見て良いでしょう。

「タワーマンション節税」とは、相続対策の一環として手元の金融資産等を元手に(場合によっては借金をして)超高層マンションの高層階を購入することで資産の組み替えを行い、相続税や贈与税の節税を行う手法のことを言います。ではなぜタワーマンションを買うと節税になるのでしょうか。具体例で見ていきましょう。

例えば1億円でタワーマンションを買ったとしましょう。マンションなので部屋(正式には区分所有建物といいます。)がまずは自分の財産になりますね。あと忘れがちですが所有している部屋の広さに見合う土地(正式には敷地権といいます。)も自分の財産となります。つまりお金が区分所有建物と敷地権に変わるわけです。では1億円の現金は相続税評価額(相続税と贈与税の計算に使います。)としてはいくらの区分所有建物と敷地権に変わるのでしょうか。

まずは区分所有建物から見ていきましょう。一戸建ての建物の場合、新築だとだいたい建設費の60%程度の固定資産税評価額となります。建物の場合、原則として固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になりますので、新築の一戸建てであれば建築費に5,000万円かかったとすれば、相続税評価額はだいたい3,000万円程度になると見込まれます。マンションの低層階も似たようなものと考えて良いかと思います。

このように建築費と相続税評価額にはかい離がありますので、この差を利用して資産を圧縮することができ、その分だけ相続税や贈与税の節税効果が見込まれるわけです。
ただし節税効果が一番大きいのは新築の時で、その後、建物の価額と固定資産税評価額(相続税評価額)との価額差は段々小さくなり、ある時点からは固定資産税評価額(相続税評価額)の方が高くなる逆転現象が起こり得ますので、その点には注意しなければなりません。

ところでマンションの場合は高層階になればなるほど取引価格は上昇します。タワーマンションの場合だと同じ面積であるにも関わらず、高層階と低層階で数倍の価格差があることも珍しいことではありません。
しかし固定資産税評価額(相続税評価額)の計算では、1棟のマンション全体の固定資産税評価額(相続税評価額)をそれぞれの所有者の専有面積で按分します。階層による価格差はここでは考慮されません。

したがって、同じマンションで同じ面積であればどの階層であろうと固定資産税評価額(相続税評価額)は同じ金額です。つまり高層階になればなるほど建物の価額と固定資産税評価額(相続税評価額)とのかい離が大きくなるわけです。新築の場合だと固定資産税評価額(相続税評価額)は建物の価額の10~20%程度にまで圧縮されます。

次に敷地権について見ていきましょう。土地の相続税評価額は建物とは違って固定資産税評価額と直接連動するわけではなく、基本的には財産評価基本通達の定めに従います。

敷地権の相続税評価額は、そのマンションが建っている敷地全体の相続税評価額に対して、自分が所有している区分所有建物に係る共有持分(敷地権割合)を乗じて計算します。つまりここでも階層の差は一切考慮されません。しかもタワーマンションの場合は戸数が多くなりますから、その分一部屋あたりの共有持分が小さくなり、結果として敷地権の相続税評価額も小さくなる効果があります。

そのマンションが建っている敷地全体の相続税評価額がいくらになるかにもよるので、建物のように一概には圧縮効果は算定できませんが、通常のマンションに比べると敷地権の相続税評価額もかなり小さくなることは間違いないでしょう。

国税庁の調査ではタワーマンションの市場価格と相続税評価額(区分所有建物と敷地権を合わせたもの)とのかい離は、平均で約3倍あるそうです。したがって1億円で新築のタワーマンションを購入すると相続税評価額は区分所有建物と敷地権を合わせて3,000~3,500万円程度になると想定されます。

つまり6,500万円から7,000万円もの資産圧縮となり、相続税(あるいは贈与税)の実効税率が40%だとすれば、2,600万円から2,800万円もの節税になるのです。ただしこれも新築(購入)時点での節税効果であって、時の経過とともに段々節税効果が小さくなっていくのは一戸建てや通常のマンションと同様です。

このように「タワーマンション節税」は大きな節税効果が見込まれることから最近脚光を浴びており、「タワーマンション節税」を勧める不動産業者やコンサルタントなども増えています。しかし一方では「タワーマンション節税」の横行による税の歪みも政府税制調査会などで指摘されており、それを受けて国の方も昨年辺りから課税強化策の検討を始めていたところです。

長くなりましたので続きは次回といたします。次回は課税強化策の具体的な中身について詳しくお伝えします。そして「タワーマンション節税」を含む相続対策のあり方について相続専門の税理士として私なりの考え方も書きたいと思います。次回もぜひご覧になってください。

それでは今週はこの辺で。
また来週お目にかかります。