ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。
現在将棋の竜王戦7番勝負が行われていて、羽生善治竜王が札幌出身の広瀬章人八段の挑戦を受けています。いきなり羽生竜王が連勝しましたが、その後広瀬八段も連勝と巻き返して2勝2敗のタイに持ち込み、非常に白熱した戦いになっています。羽生竜王が防衛すればタイトル通算100期獲得という偉業達成となり、逆に失冠すると27年ぶりの無冠となります。いずれにしても歴史に残る戦いですが、どのような結果になるかとても楽しみです。
それ以外では28歳の豊島将之八段が王位と棋聖の二冠を獲得し、25歳の斎藤慎太郎七段が王座を獲得、同じく25歳の高見泰地七段が叡王を獲得と、若手棋士が次々と初タイトルを獲得し、8つのタイトルのうち4つを20代の棋士が占めることとなりました。羽生竜王などベテランもまだまだ頑張っていますが、将棋界も世代交代の波が押し寄せた1年だったと言えそうです。
それでは本題に入ってまいりましょう。今回は小規模宅地等の特例(以下「本特例」といいます。)の適用を受けるにあたって、相続税の申告上注意すべき点について解説していきます。申告をミスすると本特例の適用を受けられなくなる恐れがあり、多額の余分な相続税を納める羽目になってしまいます。それでは詳しく見ていきましょう。
まず最初に、本特例の適用を受けるためには原則として申告期限(通常相続開始日から10か月後)までに本特例の対象となる宅地等(以下「特例対象宅地等」といいます。)の遺産分割が終わっている必要があります。つまり遺産分割協議が長引いてしまうと、本特例の適用が受けられなくなるリスクが生じます。揉めても誰も得しないわけですね。ただ現実問題としては、他の遺産との調整等で遺産分割協議に時間がかかることもあり得ます。
そこで相続税の期限内申告書と一緒に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出すれば、3年間の猶予期間が与えられます。この場合期限内申告書では本特例の適用は受けられませんが、申告期限から3年以内に遺産分割協議が成立すれば、その成立した日から4か月以内に更正の請求(税金還付の手続き)をすることによって本特例の適用が受けられます。
なお、3年経っても遺産分割協議がまとまらない場合については、裁判で係争中など一定の場合に所轄税務署長の承認を得て更に期限を延長できる制度もありますが、やや特殊なケースになりますのでここでは割愛します。余分な税金を払わないためにも、とにかくあまり揉めないことが一番ですね。
次に、遺産分割協議自体はまとまっても、特例対象宅地等が複数あって相続人・受遺者(以下まとめて「取得者」といいます。)が複数人いる場合に、どの取得者がどの特例対象宅地等について本特例の適用を受けるかについて、取得者の間で意見が分かれて折り合いがつかないこともあり得ます。
取得者が複数人いる場合に本特例の適用を受けるためには取得者全員の同意が必要となり、それを証する書類(取得者全員の氏名が同意欄に記載された申告書の付表)を提出しなければなりませんが、それができなければ本特例の適用が受けられなくなってしまいます。したがって、遺産分割協議等にあたっては誰がどの特例対象宅地等について本特例の適用を受けるかについても話し合う必要があります。
最後に、遺産分割協議がまとまり誰がどの特例対象宅地等について本特例の適用を受けるかについても話がまとまっているが、申告に当たってうっかり本特例の適用を受けるのを忘れてしまった場合や、勘違いで本特例の適用が受けられないと思い込んでいて、申告書を提出した後に本特例の適用が受けられることに気づいた場合等についてです。
これらの場合は非常に厳しくて、原則として更正の請求(税金還付の手続き)によって本特例の適用を受けることはできません。先ほどご説明した更正の請求はあくまでも申告期限までに遺産分割協議がまとまらず3年間の猶予期間が与えられた場合の特例ですから、それ以外の場合は更正の請求はできないわけです。申告の前にうっかりや勘違いがないか十分に確認するようにしてください。
本特例の適用を受けるにあたって、相続税の申告上注意すべき点については以上です。これで10回に渡っての連載はすべて終了となります。本特例は相続税における最重要特例の一つです。節税額も大きいですし、適用関係も複雑でミスをすると税務上大きな損失を被るリスクがありますから、十分に注意が必要です。
なお、諸事情により年内のブログ更新はこれが最後になります。年明けの最初は12月中旬頃公表予定の平成31年度(2019年度)税制改正大綱について解説します。それでは今年1年大変お世話になり本当にどうもありがとうございました。また来年も引き続きよろしくお願いいたします。
それでは今年はこの辺で。
また来年お目にかかります