ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

業務輻輳のためしばらくブログを書く時間がなかったのですが、そうこうしているうちにあっという間に年末が近づいてきました。令和2年度の税制改正大綱も発表されましたが、詳しいことは来年また当ブログで解説したいと思います。その前に年内にどうしても皆さんにお知らせしておきたいテーマがあったので、最後にそれを書いて今年の締めにしたいと思います。タイトルにもありますように、住宅資金の贈与は今がチャンスです。ただし注意しなければならないこともあります。今回は住宅資金の贈与について詳しく書いていきたいと思います。

正式名称は「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」といいます。これは直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合において、一定の要件を満たすときは非課税限度額まで贈与税が非課税になるという制度です。この非課税限度額が令和2年3月31日までに住宅の取得等に係る契約を締結した場合で、その消費税率が10%のときは大幅に増額されています。具体的には省エネ等住宅の場合だと3,000万円、それ以外の住宅だと2,500万円になっています。令和2年4月1日以降令和3年3月31日までの契約だと非課税限度額はそれぞれ1,500万円、1,000万円ですから、期間限定で1,500万円も増額されているわけです。この制度を利用するには今が狙い目です。

ただこのような制度には必ず落とし穴がありますから、十分に注意しなければなりません。
この制度には色々な要件がありますので、利用する前に確認すべき点はたくさんあるのですが、特に以下の2つの点には注意してもらいたいと思います。

1.申告期限までに必ず贈与税の申告をすること
非課税限度額以内の贈与であれば贈与税を納付する必要がないことから、申告も必要がないと思い込んでいる方が時々おられます。この制度を利用する場合は、たとえ納税額がゼロでも贈与税の期限内申告は必須です。贈与税の申告期限は原則として贈与を受けた日の属する年の翌年3月15日です。令和元年中の贈与であれば令和2年3月16日(3月15日は日曜日のため。)になります。それを過ぎるとこの制度は使えませんので、まともに贈与税(暦年課税)がかかります。3,000万円の贈与であれば、贈与税額は1,085万円(!)にもなります。忘れていたとか知らなかったといっても許してはもらえません。後の祭りです。相続時精算課税も期限内申告が要件ですから、元々相続時精算課税の適用を受けていた場合以外は使えません。十分に注意していただければと思います。

2.他の推定相続人にも十分配慮すること(「争族」を未然に防ぐ)
例えば父親が子に住宅資金の贈与をするとして、他に子がおらず、配偶者(その子の母親)も承知しているのであれば、特に問題はありません。しかし、他に子がいる場合は要注意です。長男が贈与を受けて、次男は何ももらわなければ「兄さんばかりずるい。」という話になり、遺産分割で揉める原因となります。民法上は住宅資金の贈与は特別受益ということになり、計算上はその分を考慮して次男の相続分が多くなるような仕組みにはなっていますが、火種は消しておいた方が賢明です。このような場合には、次男にも生前贈与をしたり、遺言を作成して次男に遺産が多く渡るようにするなど、バランス良く手当てをしてあげる必要があります。住宅資金に限らず、相続対策を兼ねた生前贈与の場合は節税にばかり目が向きがちですが、「争族」を未然に防ぐことに目を向けるのも非常に大事です。

今年最後のブログの更新は以上になります。今年も御愛読ありがとうございました。また来年もよろしくお願いいたします。それではよいお年をお迎えください。