ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

いよいよ確定申告のシーズンとなりました。
具体的には消費税が1月4日(月)から、贈与税が2月1日(月)から、所得税が2月16日(火)からスタートし、申告期限は贈与税・所得税が3月15日(火)、消費税が3月31日(木)となります。

期限が過ぎてからの申告は期限後申告と言って無申告加算税(原則として本税の15%)及び延滞税(平成28年の場合、原則として申告期限から2か月までは年利率2.8%、2か月を過ぎた分は9.1%)が余分にかかります。

また青色申告の場合は、2年連続で期限後申告になってしまうと青色申告が取り消されてしまい、様々な不利益を受けることになります。

お忙しい中の確定申告は大変だと思いますが、自分の財産を守るためにも申告期限はきちんと守るようにしましょう。

そこで今日から当ブログでは確定申告特集と題しまして、資産家の皆さんが確定申告をするに当たって気をつけなければならないことなど、確定申告に必要なお役立ち情報を発信していきたいと思います。
第1回目の今日は確定申告書と併せて提出する国外財産調書と財産債務調書についてです。

どちらも耳慣れないという方も多いかと思いますが、国外財産調書は一昨年の確定申告から、そして財産債務調書は今年の確定申告から提出が義務づけられている非常に新しい制度です。ただし財産債務調書は以前は財産債務明細書と言っていたものが昨年(平成27年)の税制改正で見直しとなり、新たに衣替えして今年から改めてスタートする制度となります。

それではそれぞれの制度について具体的な内容を順番に見ていきたいと思います。
まずは国外財産調書からです。今年で3年目となりますがまだまだ浸透しているとは言い難く、提出義務があるにも関わらず提出していない人も多いようです。ただ提出を怠ると後で不利益を被る可能性もありますので、その辺りも含めて確認していきましょう。

まず提出義務者は非永住者を除く居住者(日本国内に住所または1年以上引き続いて居所を有する個人)で、今年の確定申告であれば平成27年12月31日現在で時価等合計5,000万円超の国外財産を有する方になります。なお、提出義務がない非永住者とは日本国籍がなく、かつ過去10年以内において日本国内に住所または居所を有していた期間が5年以下である方をいいます。

したがって日本に住んでいる日本人であれば、海外に不動産や預金等を保有している方については対象になる可能性があります。もちろん外国人でも日本での在住期間が長く非永住者に該当しない場合は対象者になり得ます。

また、国外財産ですので邦貨換算が必要になる場合もあるかと思いますが、その場合は平成27年12月31日現在の外国為替相場により換算します。
具体的には提出義務者の取引金融機関が公表する対顧客直物電信買相場(TTB)により換算します。ただ実際には12月31日は金融機関は通常休みになりますので、年内最終営業日(平成27年は通常12月30日)のTTBで換算することになろうかと思います。

なお、外貨預金口座をお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、たとえ外貨預金であっても日本国内に所在する金融機関(外国銀行の日本国内における支店等も含む)に開設している口座であればそもそも国外財産には該当しませんので、国外財産調書に記載する必要はありません。

同様に、外国株式等であっても日本国内に所在する証券会社等に開設している口座で管理されているものであれば国外財産には該当しませんし、逆に国内株式等であっても外国に所在する証券会社等(日本の証券会社の海外支店も含む)の口座で管理されているものであれば国外財産に該当します。

株式などの有価証券等については相続税の場合と内外判定が異なるので注意が必要です。相続税の場合は国内株式等であれば国内財産ですし、外国株式等であれば国外財産となります。

なぜ取扱いが異なるかといえば、国内の証券会社等で管理されているのであればたとえ外国株式等であっても国税庁でその存在を容易に把握できるので、国外財産調書でわざわざ申告させる必要もないということなんだろうと思います。

逆に国内株式等であっても外国の証券会社等で管理されているものは把握しづらいので、国外財産調書で申告させるというわけです。最近は税務当局間の国際的な情報交換が活発になっており、海外資産の捕捉も強化されていますが、それでも捕捉漏れが生じる可能性があるので自主的な申告によってその辺りを担保するということですね。

ちなみに証券会社等で管理してもらうのではなく個人的に保管している株式等、いわばタンス株式等であれば相続税と同様、国内株式等であれば国内財産ですし、外国株式等であれば国外財産となります。

また、国内の不動産業者の仲介で海外の不動産物件を購入する事例も増えているかと思いますが、不動産についてはあくまでもその所在地で内外判定をしますので、たとえ国内の仲介業者によるものであっても海外の不動産については国外財産として申告しなければなりません。

長くなりましたのでこの続きは次回といたします。来週は引き続き国外財産調書について更に詳細な事項を具体的に書いていく予定です。来週もぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また来週お目にかかります。