ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。
台風の影響で大雨による被害が大変なことになっていますね。自然の猛威の前には人間は無力であることを改めて痛感します。被災者の方々には心より御見舞申し上げます。これ以上被害が拡大しないことを心からお祈りしております。
それでは本題に入ってまいりましょう。今日は前回予告した通り、以前4回に渡って連載した「生前贈与は相続対策の王道です」の続編です。今日からは3回に分けて贈与税の非課税制度について書いていきたいと思います。
第1弾は平成25年4月から実施されている「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」(以下「教育資金の贈与税非課税制度」と略します。)です。
従来から教育費については、扶養義務者(配偶者・直系血族・兄弟姉妹など)から贈与を受けた場合は原則として贈与税は非課税として取り扱われていました。
ただしこれには条件があり、教育資金が必要な都度の贈与でなければならないという制約がありました。
したがって、これから必要な分をまとめて贈与を受けて預金した場合などは非課税の取扱いはなく、贈与税が課税されていました。
そこで、もっと使い勝手を良くするために生まれたのがこの教育資金の贈与税非課税制度です。
贈与税の非課税制度については住宅取得等資金がその先駆けでしたが、生前贈与をさらに促進するために教育資金の一括贈与にまで対象を拡大したのです。
この制度は相続税の増税を見据えた相続対策に加えて、可愛いお孫さんの教育費の面倒を見たいという祖父母の皆さんなどのニーズにタイムリーに応えたこともあって非常に好評でした。
そこで、当初は適用期間が平成27年12月31日までだったものを今年度の税制改正で平成31年3月31日まで延長されるとともに、教育資金の対象範囲を学費等だけでなく通学定期代や留学のための海外渡航費までに拡大されることとなりました。
この制度は当初の予想以上に利用が進んでおり、今年の7月末現在での利用額はなんと1兆円(!)を突破しています。そんな教育資金の贈与税非課税制度ですが、それではもう少し具体的にこの制度の内容についてご紹介してまいります。
まず贈与者(あげる側)は受贈者(もらう側)の直系尊属である必要があります。直系尊属とは具体的には父母・祖父母などのことを言います。
そして受贈者は30歳未満であることが条件です。したがって親子間の贈与よりは祖父母と孫の間の贈与の方が一般的ではないかと思いますので、ここからはおじいちゃんがお孫さんに贈与した場合を想定します。
次に贈与者であるおじいちゃんが教育資金口座を金融機関に開設します。金融機関は信託銀行が一般的ですが、普通の銀行や証券会社なども可能です。ここでは信託銀行を例にとって説明していきます。
おじいちゃんは信託銀行の教育資金口座に教育資金を預け入れ、信託銀行との間で受贈者であるお孫さんを信託の受益者とする信託契約を締結し、「教育資金非課税申告書」を信託銀行に提出します。
信託銀行はその「教育資金非課税申告書」を税務署に提出します。
こうすることによって、1,500万円(塾など学校等以外の教育費は500万円)までは贈与税を支払うことなく贈与することができます。
その後、お孫さんは必要に応じて教育費をその口座から引き出し、領収書等を信託銀行に提出します。
そしてお孫さんが30歳になった時点で信託契約は終了します。その際、預金残高があれば贈与税が課税されますので注意してください。
したがって、贈与段階で教育資金がどれくらい必要かを考えて贈与することが大事になります。使い切れないほど贈与しても結局は贈与税が課税されることになるからです。
なお、一度に贈与せずに何回かに分けて贈与することも可能ですので、状況を見ながら追加で贈与するというのも選択肢の一つです。この場合も合計で1,500万円に達するまでは贈与税は非課税になります。
教育資金の贈与税非課税制度の詳細についてはこちらのサイトも参考になさってください。
【国税庁ホームページ「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」などについて】
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku-zoyo/201304/01.htm
【文部科学省ホームページ「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」】
http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/zeisei/1332772.htm
教育資金の贈与税非課税制度については以上になります。
次回は結婚・子育て資金の贈与税非課税制度について書く予定です。次回もお楽しみに。
それでは今週はこの辺で。
また来週お目にかかります。