ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

土曜日は朝に東京で震度5弱の地震があり、夜は北海道で震度4の地震がありました。被害は殆どないようですが、同じ日にマグニチュード5クラスの地震が2回も起こるのは珍しいことではないかと思います。
地震はいつ来るかわからないので備えるのが非常に難しいのですが、非常食の準備や避難場所の確認など事前にできることはしておかなければならないと改めて認識した次第です。
最近は水害や噴火(桜島・阿蘇山)などの天災が続いていますが、皆さんも十分にお気をつけください。

それでは本題に入ってまいりましょう。
今日は予告通り「続・生前贈与は相続対策の王道です」の第2弾として、「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」(以下「結婚・子育て資金の贈与税非課税制度」と略します。)について書いていきたいと思います。

この制度は前回取り上げた教育資金の贈与税非課税制度がとても好評だったのを受けて、生前贈与をさらに促進するために結婚・子育て資金にまで贈与税の非課税措置を拡張した新しい制度です。
今年(平成27年)の4月から実施されており、教育資金と同様に平成31年3月31日までの贈与に適用されます。制度そのものも教育資金と非常に似通っていますが、相違点もありますのでその辺りにも注意しながら順番に見ていきたいと思います。

教育費と同様、結婚や子育てにかかる費用についても、扶養義務者(配偶者・直系血族・兄弟姉妹など)から必要に応じてその都度贈与を受けた場合は原則として贈与税は非課税として取り扱われていました。
ただし、これから必要な分をまとめて贈与を受けて預金した場合などは非課税の取扱いはなく、贈与税が課税されていました。そこで、もっと使い勝手を良くするために一括贈与についても非課税にしようというのがこの制度の趣旨です。

具体的に見ていきましょう。
まず贈与者(あげる側)は受贈者(もらう側)の直系尊属である必要があります。直系尊属とは父母や祖父母などのことを言います。
そして受贈者は20歳以上50歳未満であることが条件です。教育資金(30歳未満)よりは年齢が高いので、祖父母と孫の間の贈与だけでなく親子間の贈与も十分あり得ると思いますが、ここでは前回同様おじいちゃんがお孫さんに贈与した場合を想定します。

次に贈与者であるおじいちゃんが結婚・子育て資金口座を金融機関に開設します。金融機関は信託銀行が一般的ですが、普通の銀行や証券会社なども可能です。ここでは信託銀行を例にとって説明していきます。
おじいちゃんは信託銀行の結婚・子育て資金口座に結婚・子育て資金を預け入れ、信託銀行との間で受贈者であるお孫さんを信託の受益者とする信託契約を締結し、「結婚・子育て資金非課税申告書」を信託銀行に提出します。信託銀行はその「結婚・子育て資金非課税申告書」を税務署に提出します。

こうすることによって、1,000万円(結婚費用は300万円)までは贈与税を支払うことなく贈与することができます。その後、お孫さんは必要に応じて結婚・子育て費用をその口座から引き出し、領収書等を信託銀行に提出します。

そしてお孫さんが50歳になった時点で信託契約は終了します。その際、預金残高があれば贈与税が課税されます。したがって、贈与段階で結婚・子育て資金がどれくらい必要かを考えて贈与することが大事になります。使い切れないほど贈与しても結局は贈与税が課税されることになるからです。
なお、一度に贈与せずに何回かに分けて贈与することも可能ですので、状況を見ながら追加で贈与するというのも選択肢の一つです。この場合も合計で1,000万円に達するまでは贈与税は非課税になります。

いかがですか?前回ご紹介した教育資金とは非課税枠の金額が異なるだけでほとんど一緒ですよね。でもひとつ大きく違うところがあります。
それは受贈者が50歳(教育資金は30歳)になる前に贈与者が亡くなった場合です。

前回は紙面の都合で書けなかったのですが、教育資金の場合は受贈者が30歳になる前に贈与者が亡くなった場合でも相続税の課税はありません。
それに対して結婚・子育て資金の場合は、受贈者が50歳になる前に贈与者が亡くなってしまった場合には、その時点での預金残高に対して原則として相続税がかかってしまいます(ただし、孫の相続税2割加算はなし)。

したがって、受贈者が50歳になるか贈与者がお亡くなりになるかいずれか早いときまでに使い切らなければならないのです。贈与金額を設定するときはその辺も考慮に入れなければなりませんので、注意してください。なお、結婚・子育て資金の贈与税非課税制度の詳細については下記のサイトも参考になさってください。

【国税庁ホームページ「父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」などについて】
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku-zoyo/201504/01.htm

【内閣府ホームページ「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」】
http://www8.cao.go.jp/shoushi/budget/zouyozei.html

結婚・子育て資金の贈与税非課税制度については以上になります。
次回は贈与税の非課税制度についてはいったんお休みし、近日発表される予定の平成27年都道府県地価調査について書く予定です。次回もお楽しみに。

それでは今週はこの辺で。
また来週お目にかかります。