ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。
今回も前回に引き続いて、参院選の争点となっている減税のうち、消費税について取り上げます。前回までの記事も下記のリンクからぜひご覧ください。
【参院選直前短期集中連載①】減税と財源
【参院選直前短期集中連載②】ガソリン税の減税
なお、これまでの繰り返しになりますが、当ブログは特定の政党や政治家を支援するものでもなければ、批判するものでもありません。また、財務省や国税庁を支持したり批判するものでもありません。あくまでも税理士の視点から減税等の問題について、客観的に解説しています。その点どうかご承知おきください。
今回の参院選の最大の争点は、物価高対策としての消費税減税の是非だと言っても良いかと思います。まずは、日本の消費税率のこれまでの推移をおさらいしておきましょう。
期間 |
税区分 |
税率(国税) |
税率(地方税) |
税率合計 |
1989年4月~1997年3月 |
標準税率 |
3% |
|
3% |
1997年4月~2014年3月 |
標準税率 |
4% |
1% |
5% |
2014年4月~2019年9月 |
標準税率 |
6.3% |
1.7% |
8% |
2019年10月~2025年7月現在 |
標準税率 |
7.8% |
2.2% |
10% |
軽減税率(一定の飲食料品等) |
6.24% |
1.76% |
8% |
次に日本との比較のために、G7各国の消費税率を見ていきます。正式にはヨーロッパでは付加価値税、アメリカやカナダの州等では売上税などと言いますが、ややこしくなるのでここでは消費税で統一します。また、免税または非課税の場合は、0%と表記します。
税区分/国 |
イタリア |
フランス |
イギリス |
ドイツ |
アメリカ |
カナダ |
||
連邦 |
州等 |
連邦 |
州等 |
|||||
標準税率 |
22% |
20% |
20% |
19% |
なし |
0~13.5% |
5% |
0~10% |
軽減税率(一定の飲食料品等) |
4or5% |
5.5% |
0% |
7% |
なし |
0~5.25% |
0% |
0~10% |
上の表を見ておわかりのように、実はアメリカには連邦(国)レベルの消費税はありません。日本は消費税率が低いとよく言われますが、北米との比較では必ずしもそうとは言えませんし、軽減税率に至っては日本が最も高い部類に入ることがおわかり頂けるかと思います。
また、コロナ渦や最近の物価高では、連邦消費税がないアメリカ以外の5か国で消費税の時限的な減税を実施しています。日本では消費税減税は準備に時間がかかり、物価高対策等には馴染まないということがよく言われますが、日本と同じインボイス制度を実施しているこれらの国ではコロナ渦発生等から遅くとも数ヶ月以内に減税を実施しています。イギリスでは発表から1週間後、ドイツでは発表から4週間後に減税を実施しており、カナダでは発表から3週間後に法案が成立しその翌々日から減税を実施していますから、必ずしもその指摘は当てはまらないものと思われます。
物価高には、減税ではなく給付付き税額控除で対応するという考え方もあります。給付付き税額控除というのは、確定申告時に消費税額の一部を控除し、控除しきれない分を給付するというもので、軽減税率導入時に軽減税率反対派の方の一部にそのような主張が見られました。しかし、G7の国で消費税関連の給付付き税額控除を実施しているのはカナダだけで、そのカナダも軽減税率との併用になっています。
給付付き税額控除は買い物などで消費税を支払ってから控除や給付を受けるまで最長で1年超のタイムラグが発生しますので、緊急を要する物価高対策としては不適当です。また平常時にあっても、日本では現在年末調整等で確定申告不要の納税者が多数を占めており、その納税者の皆さんが確定申告をするということになれば、税務行政がパンクすることは必至です。確定申告期限を延ばしたり税務署等の人員を増やしたりしなければなりませんが、事務が煩雑になる上に税務行政のコストも高騰しますので、現状では非現実的だと思われます。
また、物価高対策としては給付金の支給も有力に主張されています。コロナ渦には給付金で対応しましたし、昨年から今年にかけて実施された所得税の定額減税も給付金との併用でしたから、比較的馴染みのある方法と言えます。
ただ、物価高は既に3年を超えて続いており終わりが見えない中で、一回限りの給付金にどれほどの経済効果があるかには疑問があります。物価高が落ち着くまで定期的に行わないと、その効果は一過性のものに留まってしまいますし、かと言って何度も行うのは、給付金事務を担う自治体にかかる負担が大きく、コストも増大してしまいます。また、一定程度預貯金に回ってしまい効果が減殺されてしまう点も以前から指摘されているところです。
一方、消費税減税には継続的な効果があり、また買い物等をするときにその効果が生じますから、預貯金に回って効果が減殺されるということもありません。給付付き税額控除や給付金のようにいったん集めたお金をまた配るよりもタイムリーで効率の良い方法だと思われます。
また、現在アメリカと関税交渉を行っていて交渉の難航が伝えられていますが、トランプ大統領は日本の消費税を非関税障壁と見て批判する発言をしています。上記のとおりアメリカには連邦消費税がありませんから、そのように見えるのだと思います。もちろん国家主権に関わる税金の問題を外国の圧力で決めることはできません。ただ、関税交渉が決裂したときに日本経済が受けるダメージを考えると、あくまでも日本の自主的判断として、消費税減税を交渉カードとして使う手はあると思われます。
消費税減税についてはその財源が問題となりますが、それについては前々回お話しした通り、現時点では特に大きな問題はないと考えられます。また、需要が過熱しますますインフレが加速するという意見もありますが、現在のインフレは需要超過が原因ではありません。スーパーなどでは売上金額は物価高を反映して伸びていますが、売上点数は減少しています。実質賃金が低下し続けているのですから、当然のことです。実質賃金の急上昇等でもない限り、消費税減税でインフレを加速するほど需要が過熱するとは考えられません。
以上のことから、物価高対策としての消費税減税というのは、諸外国の例を見ても、また日本の現状から見ても、一番合理的な方法だと考えられます。
少し長くなりましたので、今回はここまでにいたします。次回は消費税減税の方法論や実施期間等について取り上げます。参院選でも一律減税か、それとも飲食料品に絞っての減税か、物価高が落ち着くまでの期間限定か、それとも恒久的か、色々な主張が見受けられます。当ブログでも最善の方法を模索してみたいと思います。それでは次回もまたぜひご覧ください。