ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。
更新が遅れてしまい、大変申し訳ありません。
さて、今回は「103万円の壁」の最終回になります。前回は恒久措置について解説しましたが、今回は物価高対策に伴う今年と来年の2年間の限定措置について解説します。これまでの続きになりますので、まだお読みになっていない方は、下記のリンクからこれまでの記事を読んでいただいた後に、お読みください。
お時間のない方は、「103万円の壁」④(正式決定!)だけでもぜひお読みください。
「103万円の壁」について③(税理士の視点から)
「103万円の壁」について④(正式決定!)
これまでの繰り返しになりますが、当ブログ記事は特定の政党や政治家を支援するものでもなければ、批判するものでもありません。また、財務省や国税庁を支持したり批判するものでもありません。あくまでも税理士の視点から「103万の壁」の問題について、客観的に解説しています。その点どうかご承知おきください。
これまで「103万円の壁」には二つの意味があることをご説明してきました。
一つは、夫(親)が配偶者控除や扶養控除を受けて所得税を減額させるためには、妻(子)のパート(アルバイト)収入が103万円以下でなければならないというものです。
もう一つは、妻(子)自身が所得税を課税されないためには、自身のパート(アルバイト)収入が103万円以下でなければならないというものです。
一つ目の夫(親)が配偶者控除や扶養控除を受けて所得税を減額させるためには、妻(子)のパート(アルバイト)収入が103万円以下でなければならないという点については、前回解説しましたように恒久的な改正があり、一定程度改善されることになりました。
もう一つの、妻(子)自身が所得税を課税されないためには、自身のパート(アルバイト)収入が103万円以下でなければならないという点については、恒久的な改正について前回解説しました。
今回は物価高対策として今年と来年の2年間限定で措置された基礎控除額の上乗せについて解説します。パート(アルバイト)の方だけではなく、フルタイムで働くいわゆる中間層の方にも関係します。また、便宜上給与所得者を前提として解説していますが、恒久措置・期間限定措置ともに給与所得者だけではなく、事業所得者や年金受給者など全ての納税者に関係のある改正になります。
今年と来年の所得税の基礎控除額は以下のとおりです(給与収入のみの場合)。
給 与 収 入 金 額 |
基礎控除額 |
備 考 |
200万4千円未満 |
95万円 |
恒久措置 |
200万4千円以上475万2千円未満 |
88万円
|
2年間限定 |
475万2千円以上665万5,556円以下 |
68万円
|
2年間限定 |
665万5,557円以上850万円以下 |
63万円
|
2年間限定 |
850万円超2,545万円以下 |
58万円 |
恒久措置 |
2,545万円超2,595万円以下 |
48万円 |
改正なし |
2,595万円超2,645万円以下 |
32万円 |
改正なし |
2,645万円超2,695万円以下 |
16万円 |
改正なし |
2,695万円超 |
0円 |
改正なし |
上の表の下線部のとおり、給与収入金額200万4千円以上850万円以下の方が2年間限定で基礎控除額が上乗せされます。令和9年からは恒久措置の58万円に戻ります。
住民税(所得割)については、前回解説したとおり43万円(給与収入金額2,595万円以下の場合)で据え置きになります。
当初案では物価高対策は盛り込まれておらず、この30年間の物価上昇に見合った基礎控除額の上乗せだけでしたから、それに比べると改善された形で正式決定されたといえます。
とりあえず2年間の限定ですが、物価高が収まらないようであれば延長も視野に入れるべきですし、恒久措置として10万円増額された基礎控除額58万円も更なる上乗せを検討すべきだと思われます。
ただいくつか問題点もあります。
一つ目は、物価高対策に所得制限を設けたということです。給与収入金額850万円超(合計所得金額665万円超)の方に対する物価高対策は講じられませんでしたが、物価高の影響は全ての国民が受けているものですから、そこに差をつけるのは不合理です。高額所得者優遇というのであれば、分離課税の見直しなど、別の方法があるように思われます。
二つ目は、住民税(所得割)の基礎控除を見直さなかったことです。前回も少し解説しましたが、住民税は基礎控除などの各種控除額が所得税よりも少なくてわかりにくい上に重税感があるのですが、それが一層増したように思います。税の基本原則である「公平・中立・簡素」の観点からも、基礎控除などの各種控除額は所得税と住民税(所得割)で揃えるべきです。
その際は地方財政に対する配慮が必要となりますが、それは地方消費税の配分上乗せ(現在は国78に対して地方22の割合で配分)などで対応可能だと思われます。国と地方が対等であるとする地方分権一括法の観点から、少なくとも国50都道府県25市区町村25の割合で配分すべきであると考えます。
三つ目は、物価高対策を基礎控除額の上乗せで行ったことです。これは少し理念的な話になりますが、
基礎控除というのは憲法で全ての国民に等しく保障されている生存権を税制に反映させたものになります。したがって、本来はここに差をつけるべきではありません。
上記の表でおわかりのとおり、給与収入2,545万円超(所得金額2,350万円超)の方は基礎控除額が減額されており、給与収入2,695万円超(所得金額2,500万円超)の方に対しては基礎控除の適用がありません。令和2年度の税制改正時に本来差をつけるべきではない基礎控除額に差をつけるという悪しき前例がつくられてしまったため、期間限定とはいえ今回またそういう手法が取られることになってしまいました。
税制というのは、理念がとても大事です。かつては時の権力者の思うがままに課税がされていた時代もありましたが、「代表なくして課税なし」を大前提とする近代国家ではそれは許されません。日本国憲法でも「租税法律主義」という形でそれが定められています。したがって、主権者であり納税者でもある国民を納得させる理念が税制には必要とされます。期間限定の物価高対策を取るのであれば、所得制限なしで「物価高特別控除」のようなものを創設すべきであったと思われます。
5回に渡って連載してきました「103万円の壁」については以上となります。
来月は参議院選挙が控えていますが、長引く物価高を受けて消費税やガソリン税など「税」が大きな争点となりそうです。
当ブログでも次回からは消費税やガソリン税について解説していきたいと思います。最近ブログの更新頻度が低下していましたが、ここから頑張って更新していきますので、皆様またぜひご覧ください。