ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。
今回は久しぶりに将棋の話題からです。旧聞に属する話で恐縮ですが、先月の棋聖戦で豊島将之八段が5回目のタイトル挑戦で念願の初タイトル獲得となりました。本当におめでとうございます!豊島棋聖は強豪若手棋士の代表格ですが、タイトルにはあと一歩届かない状況がずっと続いており、無冠の帝王になりそうな感じもありましたので本当に良かったと思います。豊島棋聖は将棋が強いだけではなく、言動も品行方正で人間的にもとてもしっかりした方だとお見受けしており、私もずっと応援していましたのでファンの1人としてとても嬉しく思います。現在挑戦中の王位戦も含め、これからはどんどんタイトルを獲得してもらいたいと思っています。
それでは本題に入って参ります。今回も前回に引き続いて貸付事業用宅地等についてお話ししていきたいと思います。今回は相続財産の中に賃貸アパート・賃貸マンション・貸家・貸店舗・貸事務所・貸ビルなど(以下「アパート」等といいます。)の敷地等が含まれている場合について、具体的に見ていきましょう。
アパート等の敷地等は典型的な貸付事業用宅地等に該当します。要件は前回確認した通りですが、それでは被相続人がお亡くなりになった時(以下「相続開始日」といいます。)において、たまたま空室等があった場合はどのようになるのでしょうか。アパート等の賃貸経営ではアパート等が常に満室であるとは限りません。前の入居者が退去し、新しい入居者が決まる前に相続が開始することも十分にあり得ることです。
まずは一戸建ての貸家等から考えてみます。一戸建ての場合は相続開始日に空き家になっているということですが、この場合は残念ながら貸付事業用宅地等には該当しません。現実に借りている人がいない以上、貸付事業の用に供されているということにはならないからです。
それではアパート等の集合住宅の場合はどうでしょうか。例えば全10室のうち相続開始日において3室空室があったケースを考えてみます(全室間取りは同じものとします)。この場合は厳密に言うと、相続開始日において入居者がいる7室分に相当する敷地等は貸付事業の用に供されていますが、空室の3室分に相当する敷地等は貸付事業の用には供されていません。そうすると敷地等の面積の10分の7(70%)は貸付事業用宅地等に該当しますが、あとの10分の3(30%)は貸付事業用宅地等には該当しないことになります。
しかしこのように杓子定規に考えるのはアパート等の賃貸経営においては非現実的です。例えば学生さん向けのアパートで被相続人がたまたま3月にお亡くなりになった場合は、卒業生が退去して新入生が入居するまでは普段よりも空室が多くなっていると思われますが、このような場合にまで上記のような考え方を適用するのは酷なことですし、亡くなった時期等の運不運で相続税の多寡が決まるのはおかしなことです。
そこで国税庁では財産評価基本通達等において、相続開始日においてたまたま空室になっていたとしてもそれが一時的なものであり、空室になった直後から新規の入居者を募集しているなど、いつでも入居可能な状態に空室を管理していれば貸付事業の用に供されているものとしています。また、仮に申告期限において引き続き空室であったとしても、上記のように入居可能な状態が続いていれば事業継続要件を満たし、貸付事業用宅地等に該当するものとしています。したがって、アパート等の賃貸経営の流れの中で生じる一般的な空室については上記の例でも敷地等の全部(100%)が貸付事業用宅地等として認められることになります。
したがってアパート等の賃貸経営においては、経営的な視点からはもちろん、税務上も空室管理が非常に大切となります。「ズボラ」な対応をしていると、税務上も不利益を受けることになり兼ねませんので、十分に注意してください。
それでは今回はここまでといたします。次回も貸付事業用宅地等について引き続き解説していきます。次回は駐車場用地を予定していますので、またぜひご覧ください。
それでは今週はこの辺で。
また再来週お目にかかります
よいお盆をお過ごしください。